特集

映画と人の研究1:映画ジャンルの近似性

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『バーバリアン』ジャスティン・ロング

トーキョー女子映画部には、映画が好きな女性達が集まっています。
そもそも、なぜ皆さんは映画が好きなんでしょう?どういうところが好きなんでしょう?観る映画、観ない映画の背景に何があるのでしょう…、疑問はどんどん湧いてきます。このコーナーでは、マイソンがそんな謎を解き明かすべく、いろいろな研究をし、その分析結果や考察を述べていきます。

第1回は、トーキョー女子映画部正式部員の皆さんに回答いただいたアンケートを基に、映画ジャンルの近似性を調べてみました。

データ:映画研究1アンケート
回答期間:2022/5/26 18:00〜2022/6/26 23:59
回答数:10代を含む195名の女性
<手順>
アンケートの中で、「Q:普段あなたが好んでよく観るジャンルはどれですか? ※複数選択可」をもとに、ジャンルの近似性を調べてみました。選択肢として挙げたジャンルは以下の7つです。
・人間ドラマ
・サスペンス、ミステリー
・スリラー、ホラー
・ラブストーリー
・コメディ
・アクション
・ドキュメンタリー
上記を選んでいる場合は「1」、選んでいない場合は「2」としてデータを整理した上で主成分分析(元々主成分分析用にとったデータではないのでやや強引に使用しています)を行いました。回答者がそれぞれに好んで観るジャンルの傾向によって、ジャンルの近似性がわかると仮定して分析した結果、このようなグラフができました。

映画と人の研究1:映画ジャンルの近似性:主成分分析グラフ

上記のグラフから下記のように解釈しました。

第1主成分(横軸):非現実性・現実性=右(プラス)にいくほど、非現実性が強く、左(マイナス)に行くほど現実性が強い
第2主成分(縦軸):内容の明るさ・暗さ=上(プラス)にいくほど明るく、下(マイナス)に行くほど暗い

“サスペンス、ミステリー”と“スリラー、ホラー”が縦横共に近い位置にあります。まず第2主成分(縦軸)は、両ジャンルとも暗い作品が多く、“スリラー、ホラー”が最も下にあるので軸を下にいくほど暗いということを示唆しています。次に第1主成分(横軸)を「非現実性・現実性」とすると、“サスペンス、ミステリー”のほうが“スリラー、ホラー”よりもやや右にあります。“スリラー、ホラー”はストーリーや演出が怖くても、登場するキャラクターが身近にいそうな人物だったり、身近な出来事、事件が題材となっている場合も少なくありません。一方、“サスペンス、ミステリー”は不可解な出来事、難解な事件を取り上げたストーリーであることを考えると、“サスペンス、ミステリー”のほうが縁遠い内容、つまり非現実性が高いジャンルといえます。

映画『バーバリアン』ビル・スカルスガルド
『バーバリアン』

一方、“ラブストーリー”と“コメディ”も近い位置にあります。第2主成分(縦軸)ではコメディのほうが上にあり、縦軸を明るさだと解釈すると一番上にあるという結果はしっくりきます。第1主成分(横軸)で“ラブストーリー”はマイナス側にありますが、恋愛というテーマが身近な分、他のジャンルよりも一層現実味を感じながら観る方が多い可能性がうかがえます。

では、真ん中にある“人間ドラマ”はどういう解釈ができるでしょうか。“人間ドラマ”はあらゆる作品に共通に含まれる要素です。名も無き人々のストーリーに限らず、歴史上の偉人のストーリーでも、ファンタジーでも、その中で描かれる人間ドラマは普遍的なテーマが掲げられていて、そういう意味では現実味を持っているといえます。だから、第1主成分(横軸)の非現実性では0に近い位置にあると解釈できます。
また、作品の明るさに関しても、人間ドラマには幸福感漂う明るいストーリーもあれば、辛くて悲しい暗いストーリーもあります。だから、縦軸でも0に近い位置にあるのはうなずけます。

映画『嘘八百 なにわ夢の陣』中井貴一/佐々木蔵之介
『嘘八百 なにわ夢の陣』

“ドキュメンタリー”は現実を映したものである点で、もっと0に近いかマイナスでも良さそうですが、逆にドキュメンタリーになるほどの題材としては突出した人物や出来事が扱われることを踏まえると、観る側の現実とは少し距離があるともいえます。

また、“アクション”は主人公が普通の人からヒーロー、超人まで幅が広く、非現実的なものもあれば現実的なものもあるという点で、横軸で一番左の“ラブストーリー”と、一番右の“サスペンス、ミステリー”の中間くらいにあると捉えることができます。縦軸に関しては、アクションは派手な演出が魅力なジャンルということが、上のほう(=明るいほう)に位置している要因となっているのではないでしょうか。

今回出た結果は、世間一般に捉えられているジャンル同士の近似性に合っているといえそうです。ただ正直なところ、一つの作品に複数のジャンルが含まれることが多いので、作品をジャンルで明確に分けるのには無理があります。それをいったら、この分析に何の意味があるのかといわれそうですが(苦笑)、どのジャンルが前に打ち出されているかによって、映画と人との出会いに影響があるといえます。

映画『奈落のマイホーム』チャ・スンウォン/キム・ソンギュン/イ・グァンス/キム・ヘジュン
『奈落のマイホーム』

例えば、『奈落のマイホーム』はディザスターパニックムービーなので「怖い」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。でも、実はコメディ要素も豊富で観てみると全然印象が変わります。皆さん好きなジャンルはあると思いますが、普段あまり手を伸ばさないジャンルも観てみると、良い映画との出会いが増えると思います。ぜひお試しあれ〜。


映画『嘘八百 なにわ夢の陣』中井貴一/佐々木蔵之介/塚地武雅

『嘘八百 なにわ夢の陣』
2023年1月6日より全国公開
公式サイト
人気コメディ第3弾。続編だと前作でジャンルが読めるので選びやすいですね。

映画『バーバリアン』ジョージナ・キャンベル

『バーバリアン』
2022年11月9日よりデジタル配信(セル&レンタル)開始
公式サイト
R-15相当
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のスタッフが手掛ける作品といえば、ジャンルがすぐわかります。

映画『奈落のマイホーム』チャ・スンウォン/キム・ソンギュン/イ・グァンス/キム・ヘジュン

『奈落のマイホーム』
2022年11月11日より全国公開
公式サイト REVIEW/デート向き映画判定キッズ&ティーン向き映画判定
この作品のように観てみないとどのジャンルに入るかわからない作品も多々ありますね。

TEXT & ANALYSIS by Myson(武内三穂)

© 2022 20th Century Studios.
©2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会
© 2021 SHOWBOX AND THE TOWER PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』三浦翔平さんインタビュー 『親のお金は誰のもの 法定相続人』三浦翔平さんインタビュー

時価6億円の伝説の真珠を巡る家族の大騒動と相続問題について描いた映画『親のお金は誰のもの 法定相続…

映画『あの花が咲く丘で、 君とまた出会えたら。』福原遥/水上恒司 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』最速試写会 5組10名様ご招待

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』最速試写会 5組10名様ご招待

映画『イコライザー THE FINAL』デンゼル・ワシントン イコライザー THE FINAL

シリーズ最終章となる本作は、シリーズで初めてR-15とされただけあって…

映画『春に散る』山口智子 山口智子(やまぐち ともこ)

1964年10月20日生まれ。夫は俳優の唐沢寿明。1988年、NHK連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』で主演デビュー。その後…

映画『BAD LANDS バッド・ランズ』安藤サクラ/山田涼介 映画と人の研究11:洋画選択時・邦画選択時の「好きな俳優出演作か」参考度の比較

今回は、洋画選択時・邦画選択時の「好きな俳優出演作か」参考度を比較しました。

映画『アナログ』二宮和也/波瑠 アナログ

ビートたけしによる原作を、二宮和也と波瑠の共演で映画化した本作では…

Netflix映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』新木優子 新木優子(あらき ゆうこ)

1993年12月15日東京都生まれ。スカウトをきっかけに2008年にデビュー。2015年、ゼクシィの8代目CMガールとして…

映画『オペレーション・フォーチュン』ジェイソン・ステイサム/オーブリー・プラザ/バグジー・マローン オペレーション・フォーチュン

ジェイソン・ステイサムが型破りな敏腕諜報員役を演じるスパイ・アクション大作です。監督はガイ・リッチーが務め…

映画『コカイン・ベア』 コカイン・ベア

タイトルからおわかりの通り、本作はコカインと熊のお話…

Netflix映画『ちひろさん』有村架純 ちひろさん

物語が進むほど、人間の深いところに潜っていけるストーリーです。元風俗嬢の“ちひろさん…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

おすすめ記事

映画『ヒッチコックの映画術』アルフレッド・ヒッチコック 映画好きが選んだアルフレッド・ヒッチコック監督人気作品ランキング

アルフレッド・ヒッチコックが監督をした作品(1950年以降に制作された作品)について正式部員の皆さんに投票いただきランキングを作成しました。名作揃いのなか、どの作品が1位となったのでしょうか?

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』来日記者会見:クエンティン・タランティーノ 映画好きが選んだクエンティン・タランティーノ監督人気作品ランキング

今回は、これまでクエンティン・タランティーノが監督をした作品(脚本担当作は除く)について正式部員の皆さんに投票いただきランキングを作成しました。

映画『アイスクリームフィーバー』吉岡里帆/詩羽(水曜日のカンパネラ) 映画好き女子が選んだ【ガールズムービー邦画ランキング】

今回は邦画のガールズムービー(女性同士の友情や交流などを描いた作品)を集めました。候補作品は編集部が独断で選抜し、正式部員の皆さんの投票によるランキングを作成しました 。部員の皆さんによる熱いコメントも参考に、お気に入りのガールズムービーを探してみてください!

TSUTAYA TV

REVIEW

  1. 映画『イコライザー THE FINAL』デンゼル・ワシントン
  2. 映画『アナログ』二宮和也/波瑠
    アナログ

  3. 映画『オペレーション・フォーチュン』ジェイソン・ステイサム/オーブリー・プラザ/バグジー・マローン
  4. 映画『コカイン・ベア』
  5. Netflix映画『ちひろさん』有村架純
    ちひろさん

PRESENT

  1. 映画『あの花が咲く丘で、 君とまた出会えたら。』福原遥/水上恒司
  2. 映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』
  3. 中国ドラマ『千紫万華(せんしばんか)〜重紫(ちょうし)に捧ぐ不滅の愛〜』QUOカード、ヤン・チャオユエ/シュー・ジェンシー
PAGE TOP