まさに“誰のせいでもない”と思えるストーリーですが、原題は“EVERY THING WILL BE FINE”ということで、イメージがだいぶ変わりますね。個人的には結末まで観た印象でいうと、原題のほうがテーマに忠実なイメージに思えますが(原題なので当然ですが)、邦題も裏を返した解釈としては的を射ていると思います。
それはさておき、本作は一つの事件によって人生の歯車が狂ってしまった男トマスとその周囲の人達の群像劇。ストーリーは一見残酷に思えますが、温かいもの、希望も根底に流れている点で共感できました。心の痛みをどうやって乗り越えていくのか、それぞれのキャラクター達の様子を観察して、自分ならどうするだろうと想像しましたが、事件以来、ある意味自己防衛的に感情を封印して、どこか無意識に穏やかにやり過ごそうとするトマス(ジェームズ・フランコ)の心情はとても生々しく、人間らしくて共感を覚えました。悪意のない不幸な出来事は誰も責めることはできませんが、どこか許しを請いたい部分もあって、関わる人々がお互いに許し合うような感覚になって始めて前に進めるのかもと、本作を観て思いました。ヴィム・ヴェンダース監督の鋭く繊細な人間描写と、ジェームズ・フランコ、シャルロット・ゲンズブール、レイチェル・マクアダムス、マリ=ジョゼ・クローズの名演による秀作、ぜひご覧ください。
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映画を一緒に観慣れているカップルを除いて、重い空気が漂うストーリーなので、デート向きとは言えません。主人公カップルにまつわる展開もとても生々しく、自分達に置きかえて妙にリアルに想像し、複雑な心境にさせられる可能性もあります。なのでデートで観るよりは、1人でじっくり観るか、友達と観るのが良いと思います。 |
キッズにはまだ難しい内容です。中学生くらいになれば、少し理解できる部分もあるかも知れませんが、派手な展開やわかりやすいメッセージ表現がされているタイプの作品ではないので、大人になってから観たほうがより感情移入できると思います。でも、誰を責めることもできないけれど罪の意識に縛られるような体験をしたことがある人は、年齢を問わず共感できる部分が多々あるので、観てみても良いと思います。 |