妻への家路

どうしようもないとはこういうことを言うのだなと、本当に切ない物語です。主人公は、文化大革命によって引き裂かれた夫婦。夫は脱獄し妻に会いにくるも再び捉えられ、20年の時が経ち、解放され帰宅しますが、妻は精神的な苦悩から夫の記憶だけを無くしてしまっています。そんな妻を前に、現実を受け止め、夫は必死で記憶を取り戻そうするのですが、夫を深く愛している妻は、その夫が目の前にいるのに他人だと思い込み、まだ夫の帰りを待ち続けています。この物語、どうやって終わるのかと思っていましたが、ある意味衝撃のラストでした。本当の愛とはこうだということなのでしょうか。きっと、そうなんだと思わざるを得ないラストです。自分がもしこんな状態になったら、マネできるかなと考えさせられました。
また、本作には中国が抱えてきた問題を浮き彫りにしているシーンもあり、よくぞ映画にしたなと思えます。とはいえまだデリケートな話題もあるので、原作のなかには実際にはまだ映画にできない内容があったようですが、とにかくチャン・イーモウ監督の特別な思いも込められている本作は、視点によっていろいろな側面を持っています。中国のストーリーではありますが、本作を通して、苦境のなかでも何が一番の幸せで、全て奪われてしまうとしたらそのなかでも何を残すべきなのかを選ばざるを得ない状況を疑似体験すると、自ずと自分の価値観が見えてくると思います。