ティム・バートン監督が実話を映画化するのは『エド・ウッド』以来20年ぶり。でもやっぱりティム・バートンといえば、ファンタジー映画のイメージが強いですが、この主人公キーン夫妻のお話が嘘のような本当の話な上に、この作品に出てくる“ビッグ・アイズ”と称された絵画そのものが、ティム・バートンが描く世界観とマッチしていて、伝記的な映画というより、ちょっとビターなある種のファンタジーとして楽しめます。
本作は1960年代にアメリカで一大ブームを巻き起こした絵画“ビッグ・アイズ”シリーズの生みの親であるマーガレット・キーンと夫のウォルターの物語。離婚し娘を連れて家を出たマーガレットは、画家としてまだ無名で絵を描いて生計を立てるような状況ではありませんでした。でもある日、ウォルター・キーンと出会ったことで、一見、彼女の人生は好転します。ウォルターはマーガレットの個性的な絵を宣伝することに長けていて、どんどん彼女の絵は人気を得ていきますが、彼は彼女の手柄を自分のものにしてしまい、いつの間にかマーガレットはウォルターのゴースト・ペインターとなってしまいます。なぜ彼女は権利を主張し、彼に反撃しないのかと、観ていてやるせない気持ちでいっぱいになりますが、クリストフ・ヴァルツの演技が本当に上手で、彼が演じるウォルターのインチキぶりがリアル過ぎて良い意味でイライラしっぱなし。同時にウォルターのインチキな行い全てがまるで喜劇なので笑えてきます。一方でエイミー・アダムスが演じるマーガレットが主張する自分の作品との絆や、絵を描くことはお金のためだけではないという思いにとても共感できます。今でこそアーティストが芸術性と商業性を切り分けて仕事をするのは難しいと思いますが、当時は女性であるだけでアーティストとして生きづらい状況であることも描かれていて、この時代だったからこそ、皮肉にもウォルターとの出会いが成功の要因の一つであることは否めません。まさにこれが運命のいたずらというべきか、人生のしょっぱさがたっぷり詰まった本作。女性にはリアルに感情移入できる内容ですが、おとぎ話として気楽に観るのもアリですよ。
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アートにまつわる映画なので、一見オシャレでデート向きかと思いきや、ガッツリ夫婦の物語なので、一緒に観る相手との関係性によっては心穏やかに観られない可能性があります。いつも彼氏や旦那の言いなりになってしまうという女子の皆さんは1人か女友達と一緒に観に行き、自分の状況を客観視すると良いでしょう。逆にちょっとした反撃を考えている女子の皆さんは、敢えて一緒に観て、彼自身を客観視してもらうきっかけにするのも良いかも知れません。 |
夫婦関係の複雑さや、大人のしょっぱい苦労話としては、キッズやティーンにはまだピンとこないかも知れませんが、内容は難しくないので、主人公マーガレットの娘の視点で観ると、すんなり物語に入っていけると思います。大人になると、もともとはシンプルなことまで複雑になってしまう。子どもからすると「どうして?」と思うことが日常でもあると思いますが、本作で大人の事情を観察してみてください。 |
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