ヒトラー暗殺事件は何度も起きており、あらゆる事件を映画化した作品は他にもありますが、本作は暗殺事件そのものよりも、暗殺を目論んだ男の人物像に焦点を当てたドラマになっています。本作は実話の映画化なのですが、主人公はただの家具職人で、革命家のごとく思想を語るわけでもなく、1人で行動を起こしたという点に驚きます。まず主人公に、自分の身を危険にさらしてまで暗殺をするほどの動機が見えない点が最初に興味をそそるのですが、物語が展開されるにつれて、彼の背景が見えてきます。そして、彼が最終的にどういった影響をもたらしたのかを描いている点がとてもおもしろかったのですが、暗殺には失敗しても、彼の行動は多くのことを物語り、立場を問わず周囲に影響を与えたということに意味があったのではないかと思いました。また、彼のキャラクターそのものもごく普通の青年として描かれていて、だからこそ「多くの国民のなかの1人」という位置づけが明確になっています。
日本でも今いろいろな議論が持ち上がっているなか、「どうせ私1人が意見を持ったところで…」と思う人の方が多いかも知れませんが、本作を観ると確固たる理由と意志を持った人物はたとえ1人でも強い力を持つのだと感じました。あくまでこれは私個人の解釈で、作り手の意図はわかりませんが、ぜひ本作を観た方同士でいろいろと語ってください。
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ロマンチックなシーンもありますが、拷問シーンも結構あり、デートにオススメとは言えません。物語そのものはあまり歴史を知らなくても理解できるかも知れませんが、どうせ一緒に観るなら歴史をわかっている人か、ヒトラーにまつわる映画を観ている人を誘うほうが、観終わったあとにいろいろ語れておもしろいと思います。 |
キッズが観るには辛いシーンがあります。歴史的知識のレベルで考えても、中学生くらいになってから観ると良いと思います。ティーンの皆さんは、ぜひこの作品を観る前か観た後に、同じオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の『ヒトラー 〜最期の12日間〜』も観てみてください。歴史上の人物やできごとをあらゆる角度で観てみると、違う視点も生まれてくるという感覚を味わって欲しいと思います。 |