ベストセラーが生まれたとき、もてはやされるのは小説家だけというイメージがありますが、優秀な編集者が影で支えていることを忘れてはいけませんね。物語を生み出すのは作家ですが、それを世の中のより多くの人に届けるには、第三者の目も大切。これは小説に限らず、音楽などすべての芸術作品、もっと言えばどんな仕事にも通じることだと思いますが、自分だけでなく、まずたった一人でも別の誰かに認められることがいかに重要か、改めて実感しました。
本作は、F・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」や、アーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」など多くの有名作家の作品を手掛けてきたマックス・パーキンズについて書かれた、ピューリッツァー賞作家A・スコット・バーグの原作をもとに、作家トマス・ウルフとの逸話にフォーカスしています。パーキンズとトマス・ウルフの2人の化学反応があったからこそ、名作は生まれたというストーリーが前半、後半は成功の後に繰り広げられる生々しい現実が描かれていて、人間の心理を浮き彫りにする2人のやりとりがいくつも印象に残りました。成功は自分の力なのか、誰かのおかげなのか…。冷静であるときは両方があってこそだと思っていても、不安にかられると歪んだ気持ちが生まれてきます。本作は、マックス・パーキンズのただの伝記で終わらず、作家と、縁の下の力持ちの編集者の立場を描くことで、成功の後に人間が陥る心理を見事に描いていると思います。
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小説が好きなカップルは、とても興味深く観られるテーマなのでデートで観るのもオーケーだと思いますが、淡々と描かれていて、見た目に派手な起伏はないため、映画を観慣れていないカップルには不向きだと思います。トマス・ウルフと恋人との関係は、夢を追う人とそれを支える人という立場のカップルにとっても、興味が持てるはず。ニコール・キッドマンが演じるトマス・ウルフの恋人アリーンの心理は、健全とは言えませんが、才能がある人と付き合うとこういう事にもなるのかなと思える部分があり、そういう点にも注目してもらえば、自分達の恋愛を客観視できるのではないでしょうか。 |
キッズにはまだ難しい内容だと思いますが、ティーンは小説が好きな人や、将来作家や芸術家になりたいと思っている人は、観てみるのもアリだと思います。本作はベストセラーを生んだ作家と、それを影で支えた編集者のお話ですが、これは皆さんの日常にも通じる部分があります。もし、皆さんが自分1人で考えた作品をコンクールなどに出したとしましょう。コンクールに出られたのは自分の実力のおかげなのはもちろんですが、作品の良さを認めてくれる第三者がいて始めて実現することです。何事も自分一人でなく、大なり小なり誰かの支えがあることを、本作で感じられると思います。 |