本作は、山田洋次監督が戦争をテーマに描いた作品で、ファンタジー要素も加わった不思議な物語でした。今年は戦後70周年ということで、多くの戦争映画が公開されましたが、そのどれとも違う母と息子の物語を中心とした人間ドラマが描かれた温かいお話となっていました。物語は長崎県を舞台に、原爆を落とされた1945年8月9日からスタートします。その原爆により主人公の浩二は、一瞬にして命を落としてしまうのですが、3年経ったある日、母親の前に突然亡霊として姿を現します。タイトルからなんとなく親子の物語かなと思っていましたが、意外と恋愛要素も強く、浩二と生前の恋人との関係性には特に注目しながら観ました。普通は自分が亡くなったら、遺してきた恋人が新しい相手を見つけ、幸せになることを願うのがお決まりですが、浩二の場合は「僕こそが彼女の運命の相手なんだ」と言っていたのがおもしろいなと思いました。
物語のほとんどが息子と母親の会話を中心に進むのですが、そんな二人を演じた二宮和也と吉永小百合の掛け合いは聞いていてすごく心地良かったです。特に二宮和也が演じた浩二はおしゃべりという設定で、二宮和也自身も普段テレビなどで観ていて流暢に話すイメージだったので、この役がぴったりハマっていました。それから何と言ってもベテラン女優、吉永小百合(現在70歳)の美しさが際立っています。アップで映ってもお肌が綺麗でつい見とれてしまい(笑)、所作や佇まいも美しかったです。
戦争映画とはいえ、親子の物語を中心に描いていることから、目を伏せたくなるようなシーンもありませんし、誰でも観やすい作品だと思います。息子が亡霊としてなぜ母親の前に現れたのか、その結末にも注目です。ぜひご覧ください。
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戦争をテーマにしていますが、重い内容が描かれているわけではないので、デートでも観やすいと思います。また、浩二とその生前の恋人との恋愛関係も描かれていて、相手の幸せとは何なのかを考えさせられます。原爆により一瞬にして亡くなった浩二は、遺してきた彼女の幸せをすぐには願えません。そんな彼と遺された彼女の愛の強さや、心境の変化にも注目して観ましょう。きっと相手を想い合う気持ちの大切さを感じ、お互いの絆の深さを再確認できると思います。 |
母と息子の会話で物語のほとんどが進み、意外と集中力が必要なので、キッズは大人と一緒に観て、わからなかったシーンは観終わってから説明してもらいましょう。浩二はいつも「母さん、母さん」と、何かと母親を呼びます(笑)。本作ではそれだけ母と息子の仲が良いことの象徴として描かれていて、お母さん自身とても嬉しそうにしています。親孝行という意味では、母親を必要とし喜ばせる息子は本当に素敵だと思いますが、現代人である皆さんが、大人になってから人前で「母さん、母さん」と、お母さんばかり構うと、マザコンだと思われてしまうので気を付けてくださいね(笑)。とはいえ、親孝行は大切なことなので、ほかの方法を考えて喜ばせてあげましょう。 |