観ている最中は終始自分の心のダークな部分を突かれているような感覚でしたが、観終わると「すごい映画を観た!」という充足感のある作品でした。本作は、三浦しをんの同名原作を大森立嗣監督が映画化した作品で、この2人といえば過去に“まほろ駅前”シリーズでも組んでいますが、今回は“まほろ駅前”シリーズとはガラリと雰囲気が変わり、もっと人間の深い本質を描いた作品となっています。資料内の原作者の言葉に「私は日常のなかに潜む暴力性と、それを見て見ぬふりして日常を続けていこうとする欺瞞(ぎまん)を書きたいと思った」とあったのですが、まさにそれが映像として上手く表現されていて、観終わった後の何とも言えないやるせなさはここから来ていたのかと思いました。
そんな難しい作品に挑戦したのが、井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミといった豪華キャスト。濡れ場も多く、常に悲壮感の漂うキャラクターばかりですが、それぞれが渾身の演技を披露しています。“国民の愛人”と言われる橋本マナミのちょうど良い肉付きの生々しい体は、同性としてあっぱれでした(笑)。彼女は今後も女優としてさらに活躍しそうな気がします。
137分という長めの作品で、正直もう少し短くできたのではないかと思いますが、音楽(ジェフ・ミルズが担当)を効果的に使用したり、島の大自然の映像が映ったりと、作品づくりへのこだわりに余念のなさを感じます。ぜひ皆さんも本作の世界観を体感ください。
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不倫やベッドシーンも多いので(そこがメインの物語ではありませんが)、カップル、夫婦で観るのはあまりオススメしません。できれば1人か、同性同士で観た方がじっくり観られると思います。どのキャラクターの視点で観るかによって、本作の感想も変わりそうなので、誰かと観た場合はぜひ鑑賞後に意見交換してみてください。本作を機に夫や彼の知られざる過去をちょっと探ってみたり、浮気防止策を考えるのも良いかも知れません(笑)。 |
R-15+となっていますが、できれば18歳くらいになってからのほうがピンと来るのではないでしょうか。「大人の世界って怖いな」と思うかも知れませんが、本作のキャラクターはある意味、皆子ども時代の感情で止まってしまっているように思います。彼らほどの子ども時代を経験する人はそういないと思いますが、子ども時代の経験の積み重ねがあってこそ大人になるということをぜひ覚えておいてください。皆さんがどんな大人になるのかは、“今”の過ごし方にかかっていますよ。 |