若き天才監督グザヴィエ・ドラン(2015年4月現在、26歳)は、本作では画面の比率が1対1という新しい手法で映画を作りました。グザヴィエ・ドラン曰く(映画資料より一部抜粋)「この比率から一種独特なエモーションが生まれる。空間が限られているから余計なものは付け足せない。ごまかしが利かないんだ。キャラクターが主役になり、観客の視線は否応なしにそこに集まる」とのこと。たしかに周囲に余計なものが見えないので、キャラクターたちの表情により集中して観ざるを得ない状況で、だからこそ彼らの心情の細部、変化に対して、より敏感になれたような気がします。観慣れない画角なので最初は違和感がありましたが、逆に見えない部分については想像力が働いたり、不思議な効果があるように感じました。まあ「言われてみれば」という部分も多少あるかも知れませんが(汗)。
とにもかくにも、画面の比率の効果だけではなく、やはりグザヴィエ・ドランが描く物語のキャラクターにはとても深みがあり、本作でもその点を実感しました。息子、母、そして近所の女性、この3人がストーリーを動かしていくのですが、一人一人のキャラクターが持つドラマはもちろん、相互作用のさせ方が実に見事です。母をテーマに描く映画はどこか理想が入っていて綺麗なものが多いですが、本作は美化しない母親像を描き、母親のとてもリアルな心情を描いている点で共感できました。きっと観る人の視点でいろいろと印象が変わると思いますが、芸術的にも、テーマ的にも、ぜひ多くの方に観て欲しい映画です。
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デートで観ても問題はないと思いますが、ロマンチックなムードになりたい場合は不向きです。特にそういうムードは必要ないなら、一緒に観てそれぞれの母親について語るきっかけにすると良いでしょう。結婚を意識して交際している方は彼のお母さんについても気になると思いますが、ストレートには話題を出しづらくても、本作のシーンなどを例に感想を聞くふりをして、彼のコメントからお母さんとの関係を分析してみてください。 |
キッズにはまだ難しい内容だと思いますが、ティーンの皆さんは主人公の少年と同じくらいの年齢なので、等身大の気持ちで観てみてください。同時に母親の心情も客観視できるので、普段気付かない母心も知ることができるでしょう。友達同士で観るのも良いですが、思春期はだんだん親との会話も減ってくる時期だと思うので、敢えて親子で観に行って、お互いの感想を述べ合って、コミュニケーションを深めるきっかけにしてはどうでしょうか。
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