いろいろなことを教えてくれて、初心を思い出させてくれる、本当にステキな作品で、すごく心に刺さりました。ロバート・デ・ニーロが演じるベンは70歳という人生の大ベテラン。彼は退職してからというもの穏やかではあるけれど、妻も亡くし退屈な生活を送っていて、やりがいのあることがしたくてたまらないという設定です。そんな彼が若い女性社長が立ち上げた今どきの会社に“シニア”インターンとして採用され、右も左もわからないまま自分ができる精一杯のことをしようとする姿に、早くも物語の最初の段階でウルッときてしまいました。今いろいろな仕事ができる自分が置かれている立場がいかに有り難いことなのか、つくづく感じさせられたわけですが、その他にもベンの謙虚さがとても印象に残りました。かつては重職に就きバリバリ働いていた男性と言えば、プライドの塊のような人間を想像しますが、彼は誰に対しても誠実に接し、相手を立て、寛大に柔軟に懐深く接します。それは昔気質と言って一括りにするにはもったいないジェントルマンの資質で、こういう点は時代や性別を問わず、若い人間が見習い、受け継がなくてはいけないところだなと、しみじみと感じました。今は若い世代がバリバリ出世したり、成功できる世の中ですが、やっぱり上の年代から学ぶべきことは本当にたくさんあって、それを若いうちに耳を傾けるか否かで、その後の人生も大きく変わるんだろうなと本作を観て思いました。その年齢になってみないとわからないことはもちろんありますが、教えてもらえることは教えてもらうべきですね。
一方、アン・ハサウェイが演じる若手女社長ジュールズの奮闘を観ていてもいろいろ込み上げてくるものがありました。自分が0から始めたものが成長して、いろいろな人の手が絡んでくる…。それは成功した証とも言えますが、自分の思いとは裏腹にビジネス的な事情だけで一人歩きしていくのではないかという不安に駆られるのは当然のことだと思います。でも、従業員も増えてもう自分だけの問題では無い以上、判断が難しくなるのも当然で、そういう歯がゆさが痛いほど伝わってきました。さらに家庭との両立問題も描かれていて、社長という立場でなくても、働く女性には共通の悩みが本作には詰まっています。がむしゃらに働くことだけが美学というわけでもなく、働く女性に対して仕事か家庭かという残酷な選択を突きつけるわけでもない、適度なバランスと心の余裕を持たせてくれるメッセージが詰まった本作は、きっと多くの女性達に元気を与えてくれると思います。
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エッチなシーンはないので、そういう意味での気まずさはありません。共働き夫婦が多い時代なので、日本人夫婦にとってもリアルに感じるストーリーで、まさに主人公のジュールズが抱える問題は自分たちのことのように感じて、人によっては楽しい気分で観られないシーンもあるかも知れません。でもこういう問題は夫婦になれば必ず考えなければいけないことで、夫婦はもちろんこれから結婚するカップルにはぜひ観て欲しいと思います。観終わったあとはとても清々しい気持ちになるので、その辺は安心して観てください。 |
まだ働いたことがないキッズは大人が観るような感覚では楽しめないかも知れませんが、高学年以上なら、会社ってどんなところなんだろうという興味で観てみると楽しめるのではないでしょうか。今では稀に中学生でも起業する人がいる時代ですから、ビジネスに興味があるティーンの皆さんは観てみると良いですよ。CEOって何だろうとか、経営を任せる人を雇うってどういうことなのかなど、会社の構造について興味が湧いたら、将来経営者の素質があるかも知れません(笑)。 |