ライ麦畑で出会ったら

本作は、J.D.サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」に感銘を受けた主人公が、演劇として上演したいと思いつき、原作者のサリンジャーに許可を得にいこうとする物語です。学校では肩身の狭い思いをしている主人公が、「ライ麦畑でつかまえて」の上演に夢を託して、自分の境遇に負けじと奮闘する姿や、居所すらわからないサリンジャーを必死に探す姿は、観ているだけで勇気をもらえます。そして、主人公と彼を支える女子の若さゆえのやりとりもとてもリアルで、ピュアだからこその不器用さに共感を覚えます。主人公は高校生ですが、夢と現実の狭間で葛藤することは、大人になってもあります。そんな状況のなかでどう折り合いをつけるのか、うまくいかない時こそどう受け止めて前に進むのか、主人公の姿を通して、自分自身を振り返るきっかけにもなります。また、自分の居場所が見つからない状況や、本当は居場所があるのにまだ気付いていない状況なども客観視させてくれるストーリーです。J.D.サリンジャーが頑なに脚本化を拒む理由についての考察も、なるほどと思えて、サリンジャーが書いた小説「ライ麦畑でつかまえて」もまた読んでみたくなります。
主演のアレックス・ウルフの演技も見事。彼自身、若くして（2018年現在、21歳）映画監督デビューをしていることを考えると、主人公に通じる部分が多かったのかなとも想像できます。老若男女にオススメの1作です。