巨匠ペドロ・アルモドバルのブラック・コメディが上陸!一癖も二癖もあるアルモドバル監督の『トーク・トゥ・ハー』『バッド・エデュケーション』に出演し、『アイム・ソー・エキサイテッド』ではオネエのキャビン・アテンダントを演じているハビエル・カマラさんにインタビューしました。
1967年、スペインのラ・リオハ地方出身。1990年代から舞台に出演、ほかテレビ映画でも活躍。映画出演作は『トーク・トゥ・ハー』『あなたになら言える秘密のこと』『バッド・エデュケーション』『アイム・ソー・エキサイテッド!』など。
2014年1月25日(土)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開
配給:ショーゲート 協力:松竹
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:カルロス・アレセス/ハビエル・カマラ/ラウル・アレバロ/ロラ・ドゥエニャス/セシリア・ロス/ブランカ・スアレス
マドリッドからメキシコ・シティへ向かう飛行機が目的地に向かわずに上空をぐるぐると旋回し続けていた。様子がおかしいと察知した乗客たちがざわつき始めるなか、ビジネスクラスを担当する3人のオネエ客室乗務員たちは歌や踊り、怪しいオリジナルカクテルで客たちを振る舞う。そして、飛行機のなかは狂喜乱舞の事態に…。
公式サイト 予告編 映画批評 イイ男セレクション
女子目線で取材(ラテンビート映画祭2013)
© EL DESEO D.A.S.L.U
マイソン:
俳優になりたいと思ったきっかけは何ですか?またそのきっかけとなった映画や演劇、俳優さんなどはいらっしゃいますか?
ハビエル・カマラ:
実は映画俳優になろうと思ってはいなくて、舞台俳優になろうと思っていました。テレビも映画も最初は正直あまり考えていませんでした。劇団に入ってスペインやフランスの古典、シェイクスピアなどをやろうと思っていましたが映画やテレビに出られるとは思っていませんでした。今こうやって映画やテレビにも出られることが贈り物のように感じます。
マイソン:
演劇、映画、テレビに出てみてどれが一番好きですか?
ハビエル・カマラ:
今は映画が一番良いです。映画界で有名な監督、素晴らしい俳優の方々と仕事ができているのでこれ以上望むことはできません。
マイソン:
私は『トーク・トゥー・ハー』のベニグノ役が忘れられなくて、ハビエル・カマラさんのファンになりました。あのときはシリアスな役で今回はすごくコミカルな役ですが、シリアスなものをやるのとコメディをやるのとで苦労する点、楽しい点はどこですか?
ハビエル・カマラ:
役者としてとにかくどんな役でもできるならやってみたい。ベニグノやホセラという役を両方やることができて、しかも両方とも天才ペドロ・アルモドバル監督の指揮のもとでやることができたのは大変幸運なことです。私は30作以上の映画やテレビに出ましたが、自分の人生を振り返ってみるとニヤニヤしてしまって「今まで良い人生を送ってきたな。俺は幸せだ」と言うことしかできません。シリアスな役とコミカルな役でどちらが難しいかというと、全部が難しいとも言えるし、全部が簡単だとも言えます。でも簡単だろうと考えていると難しくなります。
マイソン:
なるほど〜。
ハビエル・カマラ:
「やり方はもうわかっているんだ」と思うと大体間違っていますね。なので役者として生きていく上で経験というものは、あまり役に立たないと思っています。毎回作品ごとにゼロからの出直しという感じでやっています。
マイソン:
ペドロ・アルモドバル監督のいろいろな作品に出演されていますが、共通してご自分が監督に求められているなと思う要素は何ですか?
ハビエル・カマラ:
彼は本当に細かいところにこだわる方なので、役者が理解していないと思ったら100回でも説明してやり直します。監督にはどうやって欲しいのかという明確なアイデアがあるので、役者にも完璧を求めてきますし、映画の一つ一つのディテールについても監督が監修をして完璧を求めてきます。本当に完璧主義者なんです。
マイソン:
もうお手上げだと思ったことはないですか(笑)?
ハビエル・カマラ:
「彼とは無理」と思ったというより、彼が求めることを自分にはできないんじゃないかと思ったことはあります。役者というのは大体そういう風に考えてしまうものだと思いますが、監督が求めていることを自分はできたのだろうかと常に考えますね。
マイソン:
監督は細かいところにこだわるということだったのですが、現場の雰囲気は今回のコメディのときとシリアスな映画のときとで違うのでしょうか?
ハビエル・カマラ:
撮影技術は共通していますが、ちょっと違うところもあります。そこに注ぎこまれるエネルギーというものがやはり違う種類のものですね。コメディはリズムが大事なので、そういうリズムを作るためにちょっと違うタイプの力の入れ方をしなければいけません。数学的に考えて全てのことを計算してやらなくてはいけないという感じです。そのリズムを外すとおもしろくなくなってしまうので、リズムを保つように役作りをしています。コメディには底から湧きあがるようなエネルギーというものがどうしても必要です。
マイソン:
私は勝手に、監督がすごく気難しい方だというイメージを持っているのですが、すごくおもしろいシーンのときはちゃんと笑って反応してくれるのでしょうか?
ハビエル・カマラ:
撮影中、監督はよく笑います。実際に撮影中、監督は子どもみたいになっていることが多いです。撮影自体をすごく楽しんでますよ。特にこの映画では若い世代の俳優たちが多く、監督がまだ一緒に仕事をしたことがない方も多かったので、監督にとってもこの作品はすごく楽しいものだったようです。
マイソン:
この作品はやはりお国柄の違いを感じるところが多くて、日本人にはちょっと刺激が強いシーンもありました。スペインではアルモドバル監督の作品はどういう反応なのでしょうか?
ハビエル・カマラ:
世界中で観客というのは違うものですから。ただスペインのなかでは地域ごとの違いというのがかなり強く、北と南とではほとんど違う国のようになっています。北と南の観客は映画を観て全然違う反応をするという感じですね。日本ではどういった反応が出るのか楽しみです。
マイソン:
では一番気に入っているシーンはどこですか?
ハビエル・カマラ:
バレンシアカクテルを準備しているシーンで、尻に麻薬を仕込んできたと言っているところが一番気に入っています(笑)。
マイソン:
ハハハハ(笑)。
ハビエル・カマラ:
あのシーンには実はいくつかの案があったのですが、最終的にあのシーンになりました。1日中あのシーンを撮る予定だったのですが、3時間で終わりました。
マイソン:
では女性にこの作品の見どころを伝えるとしたらどういうところですか?
ハビエル・カマラ:
性的自由とか性の解放じゃないでしょうか。どちらかというと女性にとって抑圧的な文化が存在するので、こういった映画を観て自由な気分に浸って頂ければと思います。
マイソン:
ありがとうございました!
ハビエル・カマラ:
アリガトウ!
インタビューの冒頭で「トーキョー女子映画部です」と自己紹介すると、スペインでも映画を観るのは女性が多く、制作者にも女性が多いそうで「女性は重要です」とヨイショしてくれました(笑)。『トーク・トゥ・ハー』の主役ベニグノを観たときからのファンだったので、ウキウキで取材させて頂きましたが、とても気さくで気配りもして下さる優しい方でさらにファンになりました。本作でもお得意のオネエ・キャラ炸裂ですので、彼の魅力を存分に味わってください!
2013.10.10 取材&TEXT by Myson