博士と彼女のセオリー

信じられないようなストーリーですが、これって実話なんですよね。でも一方で、予想外のすごく生々しい展開はやっぱり実話だなと実感させられる部分があります。本作では世間では受け入れられないような異質なシチュエーションも描かれていますが、それだけ彼らが苦しい状況だったというのを裏付けており、これは闘病生活を経験した方でないとわからない領域でもあるのでしょう。そういう面でもすごくリアリティに富んでいました。どういう展開になるかはネタバレになるのでここでは語りませんが、本作に描かれる大きなテーマは、愛の定義。それは人生の節目、節目で何度も問われることになるのですが、そのときどういう決断をするのが本当の愛だと感じるかは、カップルそれぞれの価値観であり、2人が何を経験してきたか次第なんだろうと思います。だから本作を観て、彼らのラブストーリーに共感する人もいれば、自分が体験するなら別のラブストーリーが良いと思う人、どちらも出てくると思います。2人の人間が共に時間を過ごすというのは並大抵のことではなく、時間はただ流れているのではないという、時間の影響力も痛感します。まさに本作の主人公スティーヴン・ホーキングが研究しているのも時間なんですけどね。そんな彼が劇中で語るセオリーは、ラブストーリーとしてだけでなく、人間に大きな勇気と希望を与えてくれます。
そして、エディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズが、第87回アカデミー賞主演男優賞、主演女優賞ににノミネートされたのも納得。愛と苦悩に満ちた人生を辿る深いキャラクターを見事に演じています。