映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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小栗康平監督作、オダギリジョーが日本人画家、フジタ(=藤田嗣治)を演じた日仏合作映画『FOUJITA』。今回は、本作のフランス人プロデューサー、クローディー・オサールさんにインタビューさせて頂きました。過去に『アメリ』『Pina/ピナ・バウシュ 踊りつづけるいのち』などの作品を手掛け、フランス映画界の第一線で活躍するクローディーさんに、作品選びのポイントや映画づくりをする上でのポリシーを伺いました!
ツイートシャミ:
今までに『アメリ』『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』などのアート系作品に多く携わっていますが、作品を選ぶときに一番重要視しているのはどんなポイントですか?
クローディー・オサールさん:
一番大切にしているのは、監督が誰かということです。私は今までに多くの監督達とたくさんお仕事をしてきましたが、何よりも重要視しているのは監督の持っている個性と人間性の部分です。よく映画で一番大切なのは脚本だと言われていますが、いかに良い脚本であっても監督が良くないと作品がダメになってしまうこともありますし、逆に監督が良ければその人らしい映像が出来上がると思っています。
シャミ:
では、今回ご一緒にお仕事された小栗監督にも、何か個性を感じられましたか?
クローディー・オサールさん:
そうですね。私は小栗監督の作品を絵画のように感じ、まさに芸術家だと思いました。映画づくりで一番重要なのは監督ですが、私も今回プロデューサーとして手助けした部分もあります。特に前半のフランスパートに関しては、監督と一緒に脚本を書いたり、ロケハンに行ったりしました。最初に監督とお話をしたときに、監督がイメージしているパリのビジョンは一般のフランス人とは違うものだと思い、いかにもパリという場所に連れていっても監督は興味がないだろうと思いました。監督が一番興味を持っているのは、一枚一枚の絵画のフレームの部分なんです。だからここに行けばこのシーンが撮れるという場所に行っても全く意味がないと思い、いつもとは違う探し方をしないといけないと感じました。
シャミ:
劇中でフジタが「画が人の心を動かすものだということを目の当たりにした」と話していましたが、映画も人の心を動かすものだと思います。クローディーさんご自身は、映画製作をする上で観客がどう受け止めるのかを気にしていますか?
クローディー・オサールさん:
本当におっしゃる通りで、私も映画は絵画と同じように人の心を動かせるものだと思っています。映画を作るときは、実は最初に観客のことを考えています。観客を感動させられる映画かどうかは一番大事にしていて、映画館を出た後に「この映画に何か感じた」というものがあって欲しいと思っています。そういう映画の方が良いですよね?
シャミ:
本当にそうですよね。観終わった後に余韻が残る映画っていつまでも心に残っています。ほかには映画製作をする上でどんなポリシーがありますか?
クローディー・オサールさん:
観客のことにも繋がりますが、何かの作品でプロデュースするか迷ったときには、自分を観客の立場に置き換えて、観たいかどうかを考えています。それで本当に観たいと思えた作品だけをやるようにしています。やはり映画は人に見せるものとして作るので、そういった観客の視点で考えることはとても大事なことだと思っています。私は役者のことが大好きなのですが、その理由は、観客を喜ばせるために彼らが演技をしているからなんです。そうやって人を喜ばせたいという気持ちで演技に臨んでくれる役者には敬意を払っています。
シャミ:
では最後にクローディーさんが本作で一番観て欲しい部分を教えてください。
クローディー・オサールさん:
この作品の一番おもしろいところは、フジタという人物が持つ多面性だと思います。フジタは、パリの明るい狂乱の時代と、日本の暗い戦争の時代を生きた謎めいた人物なんです。藤田嗣治の絵画を見てもそうですが、フランスにいたときと、日本にいたときとの違いがすごく現れているんです。それが映画でも表現されています。そしてそんなフジタの持つ多面性や秘めたものをオダギリさんは本当に見事に演じてくれました。オダギリさんの演技は、いかがでしたか?
シャミ:
本当に素晴らしかったですし、フランス語が流暢で驚きました!
クローディー・オサールさん:
オダギリさんは、役者としても人としても本当に素晴らしい方です。フランス語もすごく上手に話していましたよね。実はフランス語の指導は、私もしたんですよ(笑)。もちろんほかにコーチの方がいましたが、撮影中のフランス語シーンに関するOK出しは私がやっていたんです。周りからあまりにもOKが多いと言われたのですが(笑)、本当にオダギリさんが上手だったのでOKしていただけなんです。
2015年10月22日取材&TEXT by Shamy
クローディーさんは、女性としてもとても素敵な方で「何事も準備をすることよりも、チャンスが来たときにしっかり掴むことが大切」「女性らしさを大切にすることは大きな強みになるので、容姿にはすごく気を遣っています」など、ご自身の仕事に対する考えやライフスタイルについてもお話されていました。そういったクローディーさんの大切にしている感性が作品にも通じているのかも知れませんね。『FOUJITA』の独特の世界も、細かいところまでぜひご堪能ください!
2015年11月14日より全国公開
監督・脚本:小栗康平
製作:井上和子/小栗康平/クローディー・オサール
出演:オダギリジョー/中谷美紀/アナ・ジラルド/アンジェル・ユモー/マリー・クレメール/加瀬亮/りりィ/岸部一徳/青木崇高/福士誠治/井川比佐志/風間杜夫
配給:KADOKAWA
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
1920年代パリ、フジタは「乳白色の肌」で裸婦を描き、エコール・ド・パリの寵児となった。美しいパリジェンヌたちとの出会い、別れ、フジタは狂乱のパリを生きた。時が経ち1940年代、フジタは戦時中の日本にいた。「アッツ島玉砕」ほか、数多くの“戦争協力画”を描き、日本美術界の重鎮に昇りつめていき…。
© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション