映画業界人インタビューVol.6 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン株式会社 マーケティング本部 山本一成さん【後編】
Category : 映画業界人インタビュー , ブルーレイ/DVD , テレビドラマ , 大学生・専門学校生
名だたる監督とすごく近い距離で仕事をしているという実感も
おこめとパン:今までのお仕事で一番楽しかった事は何ですか?
山本さん:自分が担当したものでいうと『glee/グリー』かな。
一同:お〜〜!
山本さん:映画じゃなくてごめんなさい(笑)。以前は劇場公開後の新作も担当してたんですけど、海外ドラマ担当に変わった時、初めてに近い担当作品が『glee/グリー』だったんです。知識も経験もほとんど無いから、自分がどこまでチャレンジできるか、ずっと突き詰めながら取り組みました。当然、周囲の協力があったからこそ結果が残せたのだと思うんですけど、やっぱり思い出深い作品です。担当していて楽しかったし、今でも好きな海外ドラマに『glee/グリー』を挙げてくださる方も多いですし。
一同:確かに。
おこめとパン:では、今やっていらっしゃるお仕事全般的にいうと、どんなところにやりがいを感じますか?
山本さん:自分が携わったものが世の中にあって、それに対して良くも悪くも反応を見られることかな(笑)。そういう反応を少しでも良くしようと志して取り組むので、すごく良い反応があると、やって良かったって思います。
おこめとパン:反応を見るのって、ちょっと怖いと思う時もありませんか(笑)?
山本さん:アハハハ(笑)。ありますけど、だからこそ毎回自分の経験を思い出して、ちゃんとベストの環境を作ろうと考えられるんじゃないかなって思います。どんどん作品がリリースされるので、経験が積めるんですよ。ここは映画配給の方達と違うところだと思いますが、映画のDVDだと、毎月3作品というペースで同時進行していたり、海外ドラマでも、ちょっとタイトルを絞っても、1人で月2本を担当する状況もあります。
一同:大変そう。
山本さん:あとは、ホームエンターテイメントのおもしろさみたいなものはあります。特に外資系だと、世界各国の中で自分達のレベルをすごく意識できるんです。他の国の成績をシェアされるので、改めて日本ってすごいって思います。他国はほとんどDVDレンタルがなくなっていますが、日本にはまだあって、だからこそすごくおもしろい。あとは、企画を立てて、説明して、承認をもらってっていう、本国(アメリカ)の人達とのやりとりもすごくおもしろいです。それに海外ドラマって、本国のもとのビジュアルから、日本用のビジュアルに変えることが多いんですが、大物監督の作品は、承認をもらうために本人まで話が行くこともあるんです。自分で直接プレゼンをするわけではないですけど、直接やりとりをしているんだって感覚があります。最近だと、新しい“X-MEN”のテレビシリーズで『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』という作品があるんですが、僕等がアメリカの本社に提出して、本社の人達がマーベル(“X-MEN”の著作元)にプレゼンして、承認をもらってくるんです。
一同:スゴい!!
山本さん:それって、嬉しくないですか!スピルバーグが携わる作品なら、彼まで話が届くんです。“X-ファイル”だって、クリス・カーターまで話が行ったりね。そう思うと、なんだかすごく距離が近く感じるし、自分の存在がグローバルに感じますよね(笑)。
おこめとパン:次に皆さんにお聞きしているのですが、それほど好きではない作品を担当される場合、どういう風にモチベーションを持っていきますか?
山本さん:難しいですよね。でも、好きになる努力はします。でも、一旦自分の中で好きじゃないと認めます。やっぱり、コンテンツホルダーにいて、作品に携わる立場としては、そこって必ずつきまとうところなんです。でも、何か好きになるポイントを1つだけでも見つけて、まずそれをもう1から100くらいの好きに変えていく。それは職種柄ではあるんですけど、いろんな違う要素を足して、なるべく自分も含め何万人という方が好きになるように仕上げるという感じですかね。あと、基本的に嫌いって言わないです(笑)。
局長:ですよね(笑)。
山本さん:だから、いろいろな方と話すと、「毎回良いって言ってるよね」って言われますけどね(笑)。でも、その時に、推しのポイントを明確にしておくと「ここがやばいんです」って言えますから。
TAKE:逆に、「なぜ自分は好きじゃないんだろう?」を突き詰めていくのもアリですよね?
山本さん:アリだと思います。ただ、そういう場合も必ず客観的になるように注意しています。主観で、強く周りを動かせる方ももちろんいますが、僕はそういう能力は長けていないと思うので(笑)。
一同:いやいや(笑)。
山本さん:毎回自分の頭の中でいろいろな方の考え方を想像するし、その作品を自分が気に入った時も同じです。「すごく好き!」って愛情が溢れすぎちゃうと、絶対空回りするんです。好きだからこそ見えない部分もできちゃうのが一番ダメなので、何度もいろいろやってきた経験上、俯瞰して見たほうが良いなって思ってやっています。
一同:なるほど。
TAKE:それでは、最後にずっと好きな映画ナンバーワンは何ですか?
山本さん:ナンバーワンは、『ノッキング・オン・ヘブンズ・ドア』です。男同士のロードムービーで、ドイツの映画なので文化の違いはありますが、自分としてはすごく感じることがありました。もっとわかりやすい作品でいえば、『君の名は。』にハマって、3回も観ちゃいました(笑)。スクリプトがしっかりしていて、自分が持ってないものに憧れるという感じで、音楽も良かったですしね。
一同:ありがとうございました!
今回の記事担当:おこめとパン
■取材しての感想
『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』の企画でお世話になった山本さんにインタビューさせて頂けたことが、すごく嬉しいです!企画中、迷っている私達にくださったご助言は、「こういう経験があったからなのか!」と感銘を受けるばかりでした。情熱を支える冷静さと、客観的に視点を変えることのできる姿勢はまさにプロフェッショナルです。何より、お仕事に対する自信がひしひしと伝わりました。単に「できる!」と思うのではなく、積み重ねてきた過程があってこそ自分を信じられる。それがすごく心強い存在になるんだと思いました。
取材日:2018年5月16日
★20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 海外ドラマ最新作
『X-ファイル 2018』
2018年7月18日よりDVD発売&レンタル中
公式サイト
製作総指揮:クリス・カーター
出演:デイビッド・ドゥカブニー/ジリアン・アンダーソン/ミッチ・ピレッジ
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
完全復活から2年。前作で世界記録を樹立した”X-ファイル”新シーズンが日本初上陸!FBI捜査官モルダーとスカリーが真実を求めて再び未解決事件に挑む、世界的メガヒット超常現象サスペンスの続編。
©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
関連記事:
★インタビュー一覧
★『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』がきっかけでできたご縁に感謝