映画業界人インタビューVol.7 ぴあフィルムフェスティバル(PFF) ディレクター 荒木啓子さん【後編】

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映画業界人インタビューVol.7 ぴあフィルムフェスティバル(PFF) ディレクター 荒木啓子さん【後編】

皆と同じことをやってたら絶対ダメ

局長:今年の作品にトレンドを感じる部分はありましたか?

荒木さん:応募作品を拝見する過程で、今年はこういう題材が多いねっていうのはありますけど、トレンドになるほど力のある映画はなかなかありません。ヒットするものって一つ突出してるんですよ。極端に言えば、人と違うことをやらない限り、良いものは生まれません。皆と同じことをやってたら絶対ダメ。どんな世界でもダメ。あ、それは過去の名作の名シーンをコピーしちゃダメとかのレベルの話ではないですよ。コピーは創作の基本ですからね。自分にしかできないことをやる、ってことです。そのことを、どうしてちゃんと皆はっきり認識してないのかなって思います。誰もが褒めるものは、創作においては、誰もがどうでもいいと思っているのと同義語なんですよ。それは本当に確かなことなので、皆さんも誰もが良いってものは、意識的に避けたほうが良いですよ。人生の毒になります(笑)。

局長:深い。

らいらい:では学生の頃にやっていて、今仕事に役立っている経験はありますか?

荒木さん:何もないですね。というのも、基本的に0から何かを作らなきゃいけない仕事なので、毎日毎日考えなきゃいけいないことがあって、過去のことで役に立つことはなくなっていくんですよ。常に何かを作るというのはそういうことで、映画監督も同じだと思います。毎日料理を作っていたら段取りがうまくなるとか、カンが育つとか、そういう慣れはあると思いますが、構築するってことに関しては、学生時代にこれをやっとけばということはないですね。ただ、今の学生ってがんじがらめじゃないですか。出欠や課題やカリキュラムや、息つく間がない。ただ学割があるとか、友達が見つけやすいとかそのくらいじゃないですか、学生の利点。本当に気の毒だと思います。例えば、入選した大学生からの「講義を抜けられないから出れません」とかの言葉に触れると、今の学生は全然自由じゃないと思うし、学生を自由にさせない空気がありますよね。

ミミミ:その言葉に救われます(笑)。

映画業界の方にインタビュー:ぴあフィルムフェスティバル(PFF) ディレクター 荒木啓子さん荒木さん:学生だからこそできることって言っても、現実的に日本ではレンジが狭いから、世界との競争力がない。あまりにも常識が違うから、世界に出た時に勝負ができない。そこの危機感を持ったほうが良いと思います。一体自分はどこの分野でどんな生活がしたいのかっていうイメージを独自に描いていくためにも、映画はたくさん観たほうが良いです。映画って、世界の状況がかなりダイレクトに伝わるから、将来官僚になるような学生は年間100本映画を観なくちゃいけないってなればいいと思ってます(笑)。想像力がない人はせめて映画を観ないとって。

らいらい:このお仕事は続けたいと思いますか?

荒木さん:続けたいっていうのはないですね。でも、「今回これがやれなかったから、次これをやらなくちゃ」って思っているあいだは続けていると思います。PFFという映画祭は「続ける」ってことが使命ですが、PFFディレクターという仕事は、続けることが目的じゃない。やりたいこととか、アイデアがないのに、このポジションにいたらすごく迷惑じゃないですか。あ、話変わりますが、そういう状況でも続ける上司のために、会社の人間関係で悩んでるとか、学校の人間関係で悩んでるとか、そんな悩みはすぐ捨てたほうが良いです。逃げればいいんだから。

らいらい:やりたいことをやるべき?

第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)最終審査員:佐藤公美/大九明子/佐藤信介/冨永昌敬/生田斗真

荒木さん:そう。絶対理解者がいるから。あらゆる人が“嫌なことを我慢しない”って決めた時に、そこにちゃんと自分の理想があれば、世の中はダメにならないと思ってます。理想がないから、こうなってる。

ミミミ:今まで出会った方で印象に残っている方はいますか?ずっとその方の言葉が残っているとか、ふとした時に言葉を思い出すとか?

荒木さん:ホウ・シャオシェンっていう台湾の巨匠がいて、『悲情城市』という映画があるんです。ぴあも制作に一部関わっている作品です。その作品のアフタートークでのホウ・シャオシェンの話がすごく素晴らしくて。そこに一つの物語ができあがっているというか、それを聞いた時に映画監督ってすごいなと思いました。監督は映画を作るだけで充分。さらに話さなくてもいいじゃないか、という方もおられますが、さらに話せるとどんなに素晴らしいかって言い続けてます。映画監督って素晴らしい人間で、並外れてるっていうことを、全身で表現する人であって欲しい。ホウ・シャオシェンはそれをすごく具体的に見せてくれたかなと思います。

 

今回の記事担当:らいらい
■取材しての感想
とてもカッコ良い女性で、お話していても興味深いお話ばかりでした。ぴあフィルムフェスティバル(PFF)もさまざまな視点で楽しめそうです。自分の将来についても考えさせられました。荒木さんのようにバリバリ仕事がこなせるような女性になりたいです!!貴重なお時間をありがとうございました!

取材日:2018年7月18日

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第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)

★ 第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)

会期:2018年9月8日(土)~22日(土)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ→こちら
公式サイト 
学生当日券は500円!

■今までの主なPFFアワード入選監督
黒沢清、園子温、成島出、塚本晋也、橋口亮輔、中村義洋、佐藤信介、熊切和嘉、李相日、石井裕也など

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About Author

局長

私も学生の頃に、こんな企画があったらやってみたかったな〜という思いも込めて立ち上げました。学生の間にしかできない体験をしてもらい、その体験を通して発せられる情報が、映画ファンの拡大に繋がればステキだなと思います。学生の皆さんだからこそ出てくるアイデアやエネルギーに触れて、私達スタッフも一緒に宣伝を楽しみたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします! 私は物心がついた頃から映画が大好きで、大学を卒業すると同時に大阪から上京し、ただ映画が好きという気持ちだけで突っ走ってきました。これまで出会った多くの方のおかげで、今は大好きな映画のお仕事をさせて頂いています。地方の学生の皆さんもぜひ参加してください。課題以外でも、皆さんと集まってお話ができる機会も作りたいと思いますし、少しでも皆さんの将来のお役に立てれば嬉しいです。