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落下音【レビュー】

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映画『落下音』ハンナ・ヘクト

REVIEW

すごく噛み応えのある作品です。タイトルについている“落下音”がメタファーであることは予想して観て、最後に答えにたどり着いた感覚はあるものの、一度では咀嚼しきれない部分が残ります。だから、繰り返し観れば観るほど味わいが増してくるでしょう。
物語の舞台は、北ドイツの農場です。ストーリーが進行していくと、同じ場所の、異なる時代をそれぞれ映し出していることがわかります。そして、各時代のキャラクター達の繋がりも徐々に見えてきます。その繋がりとは、実態としての繋がりと、もう一つは異なる時代を生きる何名かのキャラクターが抱える心理状態です。

映画『落下音』

ある家族の日常が淡々と描かれているなかには、いくつか不可解なシーンが出てきます。観てすぐには何が起こっているのかがわからず、後に背景が見えてくると意味を理解できるという具合です。その背景には、ドイツの暗い時代が影響している場合もあれば、キャラクター一人ひとりの年頃などが関係していると考えられます。そうした不可解なシーンの意味を紐解いていくおもしろさが本作にはあります。

以下はあくまで私の解釈です。読む方によってはネタバレと感じる内容が含まれるため、観終わってからお読みいただくことを推奨します。

映画『落下音』

本作で複雑な心情を抱えているキャラクターは、子どもか若者です。本来なら生きるエネルギーに満ちていそうな年頃にもかかわらず、彼等の生気は不安定です。状況はそれぞれ異なるものの、ある者は生きるため、あるいは生かされるために何かを奪われると同時に、生気まで一緒に奪われてしまったようにみえます。つまり、矛盾が起こっているわけです。また、とある環境では妊娠ができない女性のほうが都合が良いという話題も、ある意味“生”のために“生”を手放すというメタファーに思えます。

映画『落下音』

どうしたら「生きることをやめられるのか」を考え、その難しさを吐露するキャラクターもいます。死にたいのかどうかまで明確な意志がないとしても、生きることから“下りたい”、今いるところから“下りれば”どうなるのかを考えてしまう、そんな心情を、本作では“落下音”として表現しているように感じます。そうした心情に至る理由が想像できるキャラクターもいれば、掴めないキャラクターもいます。でも、“掴めない”からこそ苦しいともいえそうです。その辺りは一度観ただけでは消化不良なので、何度か観返すと解釈が深まるかもしれません。
私は毎度前情報を極力入れずに観るので、一旦上記の解釈に至りましたが、映画公式資料をみると、「本作の中心的テーマの一つは、女性に向けられる心理的・身体的暴力です」と書かれています。このテーマを念頭に入れて観てみるのもアリでしょう。皆さんもぜひ考察を楽しんでください。

デート向き映画判定

映画『落下音』レア・ドリンダ

観る側の解釈に委ねる内容なので、映画を観慣れているかどうかや、そもそもの映画の好みによって、好き嫌いが分かれそうです。なので、初デートや、映画を観慣れていない方を誘うのには不向きでしょう。一方で、観終わった後に誰かと解釈を話したくなるので、普段からいろいろなタイプの作品を一緒に観て議論をするのが好きなカップルにはオススメです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『落下音』ハンナ・ヘクト

155分の上映時間に耐える集中力に加えて、一見淡々とした描写が何を意味するのかを考え続ける忍耐力も必要な作品です。なので、映画にハマり出して、観るジャンルを意欲的に広げていこうとしているティーンの皆さんならチャレンジしてみると良いのではないでしょうか。また、皆さんと同じ年頃のキャラクターが胸に秘めるリアルな心情が丁寧に描かれているので、頭で考えるよりも感覚的に観てビビッとくる方もいるかもしれません。

映画『落下音』ハンナ・ヘクト

『落下音』
2026年4月3日より全国公開
PG-12
NOROSHI、ギャガ
公式サイト

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© Fabian Gamper – Studio Zentral

TEXT by Myson

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