REVIEW

あなたと過ごした日に【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『あなたと過ごした日に』ニコラス・レジェス・カノ

公衆衛生を専門とし、水質汚染や感染症などの問題に取り組んだ医師、エクトル・アバド・ゴメス博士の実話を、実の息子エクトル・アバド・ファシオリンセが綴ったベストセラー小説『El olvido que seremos(原題)』(2005)。その小説を映画化したのが本作です。5人の姉妹を持つエクトル・アバド・ファシオリンセは、6人きょうだいの中で唯一の男の子で、父(ハビエル・カマラ)と息子だけの特別な思い出が語られています。
まず、大所帯の生活はとても賑やかで、家族のお互いへの愛情が溢れている様子が伝わってきます。また、4人の姉と1人の妹に挟まれながらも、やんちゃでマイペースなエクトル少年の姿を観ていると、ほのぼのとした気持ちになります。前半は全体的に温かいムードに包まれ、観ていてとても和みます。ただ1970年代〜80年代当時、父エクトルの言動は、政治的、宗教的に異端視されていたため、一家は苦難も味わっています。そんな状況で息子エクトルが成長していくにつれ、父を見る目が変化していく様子もとてもリアルに描かれています。
自分の信念を曲げずに生きた父エクトルを息子エクトルの視点で語る本作には、とても優しいお父さんの姿と、近寄りがたい雰囲気をもった医者、学者の姿が描かれています。そして、父エクトルが、愛する息子の将来を思って、時には優しく時には厳しく接する姿も印象的です。この光景は、ストーリーは全く異なりますが、『ニュー・シネマ・パラダイス』を彷彿とさせるものがあります。なので不思議と懐かしさと親近感が湧いてくると思います。
また、『トーク・トゥ・ハー』や『バッド・エデュケーション』などペドロ・アルモドバル監督作でお馴染みのスペイン人俳優ハビエル・カマラがコロンビア映画に挑戦しています。父と息子の物語、家族の物語、人々のために生きた人物の物語…というように、さまざまな切り口でご堪能ください。

デート向き映画判定
映画『あなたと過ごした日に』ハビエル・カマラ/ニコラス・レジェス・カノ

家族の物語が中心なので、ロマンチックなムードになるシーンはあまりありませんが、愛情に溢れた物語なので、デートで観ると和めると思います。ただ、切ない展開もあるので、ウキウキ過ごしたい日に観るよりは、2人ともじっくり映画を味わいたい日に観ることをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『あなたと過ごした日に』ハビエル・カマラ/ニコラス・レジェス・カノ/パトリシア・タマヨ

子ども目線で観た親の姿を描いているので、皆さんが観ても共感できると思います。ただ、上映時間が136分と長尺なので、中学生くらいになってから観るほうが集中力を保って観られるのではないでしょうか。子どもの頃に親から教えられるいろいろなことにどんな意味があるのか、客観視できる部分もあります。思春期の皆さんは1人でじっくり観て、親子関係について考えるきっかけにするのも良さそうです。

映画『あなたと過ごした日に』ハビエル・カマラ/ニコラス・レジェス・カノ

『あなたと過ごした日に』
2022年7月20日より全国順次公開
2ミーターテインメント(2MT)
公式サイト

© Dago García Producciones S.A.S. 2020

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ 心理学から観る映画56:映画鑑賞におけるソマティック・マーカー(身体反応)の影響

今回は、トーキョー女子映画部正式部員の方からいただいたお悩み相談に関する話題を提供します。

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』早瀬憩 早瀬憩【ギャラリー/出演作一覧】

2007年6月6日生まれ。千葉県出身。

映画『木の上の軍隊』堤真一/山田裕貴 木の上の軍隊【レビュー】

原作はこまつ座で上演された同名の戯曲で、井上ひさしが遺した原案を基に、井上の娘でこまつ座社長の井上麻矢が遺志を継ぎ…

海外ドラマ『9-1-1 LA救命最前線 シーズン8』ピーター・クラウス ピーター・クラウス【ギャラリー/出演作一覧】

1965年8月12日生まれ。アメリカ出身。

映画『星つなぎのエリオ』 星つなぎのエリオ【レビュー】

主人公は、幼くして両親を失い、叔母のオルガのもとで暮らすことになった少年エリオ…

映画『タンゴの後で』アナマリア・ヴァルトロメイ/マット・ディロン 『タンゴの後で』トークイベント付試写会 15組30名様ご招待

映画『タンゴの後で』トークイベント付試写会 15組30名様ご招待

映画『MELT メルト』ローザ・マーチャント MELT メルト【レビュー】

いろいろな意味で残酷。絶対起きてはならない出来事…

映画『怪物』黒川想矢 黒川想矢【ギャラリー/出演作一覧】

2009年12月5日生まれ。埼玉県生まれ。

映画『スタントマン 武替道』トン・ワイ/テレンス・ラウ/フィリップ・ン スタントマン 武替道【レビュー】

香港映画に対する誇りと、香港映画や映画作りに関わる人達を守りたい気持ちが交錯する…

映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 2名様プレゼント

映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 2名様プレゼント

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ
  2. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド
  3. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也

REVIEW

  1. 映画『木の上の軍隊』堤真一/山田裕貴
  2. 映画『星つなぎのエリオ』
  3. 映画『MELT メルト』ローザ・マーチャント
  4. 映画『スタントマン 武替道』トン・ワイ/テレンス・ラウ/フィリップ・ン
  5. 映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー

PRESENT

  1. 映画『タンゴの後で』アナマリア・ヴァルトロメイ/マット・ディロン
  2. 映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ
  3. 映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊
PAGE TOP