映画『DIGGER/ディガー』来日記者会見:トム・クルーズ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督
映画『DIGGER/ディガー』の公開を目前に来日記者会見が開催され、主演のトム・クルーズとアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が登壇しました。トムは会場の記者達に笑顔で手を振り、監督はスマホで会場の様子を撮影しながら登場しました。
トム・クルーズ:
私が心から尊敬しているアレハンドロ・イニャリトゥ監督と共に来日できたことを大変光栄に思います。26年前に彼の初監督作『アモーレス・ペロス』を観て以来、ずっと彼と仕事をしたいと願ってきました。彼はこの映画に9年間取り組んできました。私は2018年からこのプロジェクトに関わり、こうしてこの映画を世に贈り出せることを誇りに思っています。出演者やスタッフは、本当に最高の人達が揃っています。アレハンドロ監督が手掛けた作品は、私がこれまで観てきた中で最も独創的であり、そんな監督の作品に参加し、共に作り上げることができるなんて夢にも思いませんでした。ですから、とにかく感謝を伝えたいです。この映画を作り始めた当時、監督と共にこの場に立ち、皆さんと喜びを分かち合えることを夢見ていました。その夢が叶ったことに対し、心から感謝しています。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督:
皆さん、こんにちは。トムとここに一緒に登壇できて本当に光栄です。日本は、私にとって思い出深い場所です。来るたびに喜びと幸せを感じられるので、本当にいつも夢のように感じています。これまでの数々の挑戦の中で、東京国際映画祭で受賞(『アモーレス・ペロス』が東京グランプリと監督賞を受賞)できたことは、私にとって大変名誉なことです。当時、私はまだ駆け出しの映画監督でしたが、人生を変えるような賞を受賞することになりました。そして、ちょうど20年前に、私は日本で、菊地凛子さんや役所広司さんと共に『バベル』という映画の撮影をしました。当時私はこの街に5ヶ月近く滞在していましたが、それは映画監督としてのキャリアの中で最も美しい思い出の一つです。そして、2022年には、東京国際映画祭で黒澤明賞を受賞しました。本当に皆さんからたくさんの愛をいただき、私にとって心温まる思い出です。なので、こうして皆さんに新作を紹介できることに、心から感謝し、恵まれていると感じています。トムも言ったように、私は世界で最高の俳優やスタッフ達と仕事をすることができ、本当に幸運だと思います。この非常にリスクの高い映画に賭けてくれ、必要なことをすべてやってくれたスタジオにも感謝しています。

MC:
トムさんが演じたディガー・ロックウェルというキャラクターはとても独創的で、他に類を見ない役柄でした。そんなディガー・ロックウェルというキャラクターをどのように作り上げていったのでしょうか?
トム・クルーズ:
まず監督が脚本を持ってきてくれたのですが、本当に今まで見たことがないような内容でした。私は彼をじっと見つめながら「一体どうやってこんなアイデアを思いついたの?」と、聞きました(笑)。彼は間違いなく並外れた映画監督で、人間としてもアーティストとしても、私が心から尊敬している人物の一人です。そしてディガーというキャラクターについてですが、制作を進めるにつれて、自然と形になっていきました。私が作業に取り掛かる際に、監督のアイデアを細部まで聞き、そして、彼の夢や達成したいこともすべて聞きました。そして、自分が貢献できる場所を見つけたんです。
彼は映画監督として素晴らしい演出のセンスを持っています。この映画のあらゆる要素が、細部に至るまで非常に考え抜かれ、さまざまな側面が掘り下げられています。そして、映画を観るとディガーにどれほど多くの異なる側面があるのか、おわかりいただけると思います。だから、私に必要だったのは、この映画とどう向き合い、どう掘り下げていくのかということでした。撮影現場では、時々立ち止まって、皆で少し時間をとることもありました。映画作りの一瞬一瞬を心から楽しみたいと思ったからです。俳優達がセットを眺めるなど、監督が作り上げたものを心から味わえるようにしたかったからです。

MC:
では監督へお伺いします。最終的にこの物語へと至った長い道のりについてお伺いさせてください。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督:
この映画の元のタイトルは“Blah blah blah(日本語:何とかかんとか)”だったんです。要するに、僕達がただひたすら話し続けているという事実そのものが、言葉の持つ力によって、現実の認識を魔法のように変えてしまうということです。言語とは、私達にインスピレーションを与え、現実へと架け橋を築くものです。しかし同時に、現実の認識を破壊する武器でもあります。私達はこの前提に基づいて物語を作り始めました。実現までに9年を要したのは、テーマが複雑である上に、その物語に引き込んでくれる力強いキャラクターを構築する必要があったからです。
MC:
そして約9年が経って、この作品が完成したわけですね。
トム・クルーズ:
この映画を観ると、監督が時間と空間を巧みに操りながら物語を展開させている様子がわかります。このような構成は、私も今まで見たことがありません。それにこの映画は、細部へのこだわりや音楽のクオリティもすごいんです。特に冒頭部分の音楽は、職人技のすべてが際立っています。実はその冒頭に使われている音楽は、動物や鳥の鳴き声を録音して作られているんです。それを視覚的に表現するためにさらに時間を費やし、そして大画面で観ると、フレームの奥行きが際立ち、まるで3Dを観ているような感覚になります。監督は、このフォーマットが物語や登場人物の感情をどのように引き出せるかを理解しているんです。
私の作品は多岐にわたりますが、こうした映画を作ることができたこと、皆さんが私のキャリアを通じて制作したさまざまな作品を語り続けてくれていることを光栄に思っています。そして、私はとても恵まれていると感じています。私達が映画を作る理由は、数々の賞や興行収入といった素晴らしい成果を手に入れるためではありません。私は、観客のために映画を作っています。その作品が、時代を超えて受け継がれ、私達が作り出すあらゆる形の映画を通じて、その時代や人間性を映し出してくれることを願っています。そして、この作品は観れば観るほど、新たな深みが感じられる作品です。皆さんとそれを分かち合えるのは、とても素晴らしいことです。

MC:
では、お二人への質問です。本作で初タッグを組まれましたが、お互いの印象や撮影現場でのエピソードを聞かせてください。
トム・クルーズ:
私は、監督の映画をすべて観ています。中には何度も観た作品もあります。彼の映画を観ると、細部にまで映画作家としての魂が込められていると感じ取ることができます。私は彼を映画監督として、そして1人の人間として深く尊敬しています。一緒にお仕事をさせていただくなかでも、その気持ちを抱いていました。彼の芸術性や探究心がどれほど深みのあるものか。本当に毎日が美しい日々でした。
それに、ただ彼と一緒に過ごす時間を持ちたいからと、撮影をしていたわけではありません。私は本当に恵まれていて、これまで映画界で最高の映画監督達と一緒に仕事をしてきました。彼らを心から愛し、尊敬しています。そして、ただ現場に行くのではなく、彼らと協力してアイデアを練り、彼らの人生の一部となり、彼らが物語や芸術、そして人生そのものをどう捉えているかを知ることができるんです。だから、その時間のなかで彼らの文化や人生観をただひたすら吸収しているんです。
私とアレハンドロ監督には、本当にたくさんの共通点がありますが、彼に驚かされたことはたくさんあります。10分間のモノローグのシーンは、すべてワンテイクで撮られているんです。私はそれを4回やったのですが、監督がどうやってそれを構成したのか、本当に不思議です。彼は私にたくさんのアドバイスをしてくれ、私は「わかった、やってみるよ」といった感じでした。そうやって監督と一緒に過ごして仕事をし、彼が作り出すものを見られて、本当に光栄です。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督:
私達はすべてのセットを非常に慎重かつ綿密に作り上げるために撮影の数ヶ月前から何度もリハーサルを重ねました。私は、どのフレームも「実際にはそこには何もない」ということを物語っているようにしたかったんです。ちなみに、登場人物達を象徴する各部屋のフレームが意味しているのは、彼らが何者であり、なぜそこにいるのかを説明しています。ですから、ブロック(演技の配置)や照明もとても重要でした。私達は本当に真剣に取り組み、俳優全員が集まったリハーサルでは、作品のトーンを見極めようとしていました。というのも、この映画においてトーンこそが最も難しい要素だからです。風刺というのは恐ろしいもので、やりすぎるとシットコムのようなものになってしまいます。それは楽しいものですが、この映画の目指すところではありません。あるいは、自然体すぎるとちょっとおもしろみに欠けることになり、その境界線は非常に微妙で、私達は常にそのバランスを模索していました。
それから、トムはあの太った体を身に付け、特殊メイクの状態でリハーサルをしたいと言ったんです。トムがディガーの姿になるまでには5、6時間もかかるのですが、1日のうちリハーサルに割ける時間はごくわずかなので、私はとても悩みました。でも、例えば私もタキシードを着れば、普段着ている服の時とは違う気分になるんですよね。つまり、トムがディガーとしてリハーサルをすることで、彼の話し方や歩き方、気持ちをより理解できるんです。そうして、現場では俳優やスタッフも含め、あのぽっちゃりしたテキサス訛りのおもしろいおじさん姿のトムに慣れていました。だから、ある日トムが普段の格好で現場に入ってきたら、「え!セットにトム・クルーズがいるじゃないか!」となっていました(笑)。
トムが言っていたように、本当に驚くほどの正確さが求められるシーンもあったと思います。例えば、あの演説のシーンを観客に理解してもらい、明確に伝わるものにするために、本当に多くのものが必要でした。カメラとの連動や300人のエキストラを伴う身体的な動きなど、あらゆるメカニズムには精度とタイミングや感情面での切り替えが求められます。こうしたことは、トムが命がけで飛行機から飛び降りるのと同じくらい、本当に1秒を争う状況下だったので、それはトムだけが成し遂げられたことだと思います。

記者からのQ&Aタイム
記者A:
演説のシーンは、トム・クルーズさんのこれまでのキャリアの中でも1番の長台詞だったのではないでしょうか?あの長台詞はどのように覚えましたか?
トム・クルーズ:
台詞自体は暗記すればいいだけなので、決して難しいことではありません。私は現場で何度も繰り返しさまざまな確認をしています。最初の段階では、練習しながらリズムをいろいろ試してみます。だけど、私達がやっているのはそれだけではありません。大切なのはコミュニケーションです。何かを見つけ出し、探求していくこと。だから、監督は指揮者で、僕はジャズを演奏しているようなものなんです。
台詞について何か特別な技術とかはなくて、役を演じるにしても、ジェット機を操縦するにしても、バイクやレースカーを運転するにしても、私は何も考えません。一生懸命にやりすぎて、何も考えなくなってしまうんです。もちろん自分がどこにいなければならないか、カメラがどこにあるのかはわかっています。だけど、その瞬間をカメラと共に生きているんです。すべてを把握しつつも、その瞬間に没頭しています。だから台詞のことなんて全く考えていなくて、ただキャラクターそのものになっているんです。

記者B:
この映画の制作に9年かかったとおっしゃっていましたが、時代が変化するなかで、どのようにしてこの映画のメッセージやトーンを作っていったのでしょうか?
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督:
この映画の脚本を書き始めた当初、私達は実際に起きている出来事についてメモを取りました。当初から目指していた風刺作品を作るために、想像力を働かせて、それらの出来事をさらに過激なものにし、大惨事を引き起こすような展開に仕立て上げたのです。だけど、執筆を進めている最中、私達が想像したような出来事が本当に起こり始め、現実が私達を追いかけ、さらには追い越していくことになりました。そして、私達が想像していたフィクションのシナリオが、あっという間に現実のものとなり、本当に恐ろしいと感じました。そうなると風刺作品というよりもほとんどドキュメンタリーのようなものを作ることになってしまうと思いました。
そこで、私はそこから距離を置く方法を見つけなければなりませんでした。この映画において、時間と空間は不可欠です。そして、私は物語という手法を用いて現実から逃げているように見えないように、出来事から十分な空間と距離を置いて切り離すようにしました。今の世界の現実は、あまりにも不条理でありながら実にリアルです。そして、権力を持つ人々は、すべてがパフォーマンスのようで、そのせいでこの物語をどう語ればいいのか、正直なところわからなくなりました。だからこそ、私達が語り継ぐべき物語を理解していく過程を、皆さんと共有したいと思いました。私達はある意味皆道に迷っていると思うんです。その理由は、現実から距離を置く必要があるからです。それこそが、芸術の役割なのです。映画を通して現実から距離を置き、他者と自分自身を見つめ、そしてそれを笑い飛ばせるようになるためにも、絶対に必要なものなのです。
MC:
最後にこれから本作を観る日本の観客に向けてのメッセージをお願いします。
トム・クルーズ:
皆さんに観ていただけることをワクワクしています。きっと日本の皆さんはこの映画を愛し、この作品の職人技を高く評価してくれると思うので反応が楽しみです。事前にストーリーや展開を調べずに観たほうが、この映画はより楽しめると思います。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督:
この映画は、物語を語るということ、そして物語の中に織り込まれた物語について描いた作品です。そして、私達全員がこの旅路に参加していることに気づかされるんです。多くの人々がこの映画を観て、新たな発見をする機会を得られることを願っています。

トム・クルーズとアレハンドロ監督のトークは常に熱が込められていて、作品への意欲や自信が感じられました。この会見でも言及されていた演説のシーンはもちろん、いつものトム・クルーズとは見違えるほどの変貌を遂げたディガーのキャラクターにも注目してください。本作はぜひ大きなスクリーンで観て、世界観を堪能してください。
『DIGGER/ディガー』来日記者会見:
2026年10月5日取材 PHOTO&TEXT by Shamy

『DIGGER/ディガー』
2026年10月9日より全国公開
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:トム・クルーズ/リズ・アーメッド/ジョン・グッドマン/ザンドラ・ヒュラー/ジェシー・プレモンス/マイケル・スタールバーグ
配給:東和ピクチャーズ、東宝
公式サイト
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情報は2026年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。






























