REVIEW
「裸のランチ」の著者としても知られるウィリアム・シュワード・バロウズの同名小説を映画化した本作では、『君の名前で僕を呼んで』を手掛けたルカ・グァダニーノが監督を務めています。原作はバロウズの自伝的小説といわれています。まず始めに、用語の定義を知っておきましょう。
クィア (Queer) とは
元々は「奇妙な」といった意味の侮蔑的な言葉だったが、性的マイノリティの当事者がこの言葉を取り戻し、「ふつう」や「あたりまえ」など規範的とされる性のあり方に当てはまらないジェンダーやセクシュアリティを包括的に表す言葉として使われている。(LGBT法連合会「LGBTQ 報道ガイドライン – 多様な性のあり方の視点から 第2版」)

本作の舞台は1950年代のメキシコシティです。主人公のウィリアム・リー(ダニエル・クレイグ)は、町でユージーン・アラートン(ドリュー・スターキー)を見かけ一目惚れしてしまいます。リーは何とかユージーンと交友関係を築いたものの、ユージーンが自分と友人以上の関係になる気があるのかわからず、二の足を踏んでしまいます。そうしているうちに、ユージーンへの想いは募るばかり。そんな状況にいてもたってもいられなくなったリーはあることを試みようとします。
まず、ダニエル・クレイグが演じるリーがあまりにピュアでシャイで、観ていて微笑ましく感じます(笑)。気を引くためにおどけてみせるけれど、冷たくされるとシュンと気を落としたり、本当に大好きなんだなと伝わってきます。ドリュー・スターキーが演じるユージーンは、とても美しく、まさに高嶺の花で、つかみどころのなさが余計にリーを夢中にさせます。そんな2人のやり取りにはいろいろなキュンが詰まっています。

ラブストーリーとして観るのも1つの楽しみ方であるものの、精神世界に紛れ込んだような描写も印象的です。見た目にアーティスティックであり不気味でもある、とてもユニークな描写が出てきます。本作には、ルカ・グァダニーノ監督の過去作『君の名前で僕を呼んで』の切なさと美しさ、『ボーンズ アンド オール』の野性味、『チャレンジャーズ』の荒々しさがブレンドされています。

本作を観て、クィアとして生きるとはどういうことか考えさせられました。もちろん簡単に理解はできません。時代を経て、クィアという言葉のイメージや使われ方はポジティブな方向に変わってきたと聞きます。いずれにしても、ジェンダーを問わない普遍性があると同時に、やはり生きづらさがあると感じます。本作を最後まで観ると、まだ若く自分が何者かが定まっていないユージーンに対して、リーは深い愛と同時に責任感なのか罪悪感なのかわからない重いものを抱えていたように思えました。ただ、本作は一度観ただけでは咀嚼しきれない部分があり、噛めば噛むほど味が出てくると思います。そして、現代にこの物語が映画化された意味を感じます。
デート向き映画判定

性描写やヌードが出てくるので、初デートや交際ホヤホヤのカップルのデートで観ると気恥ずかしいかもしれません。とはいえ、グァダニーノ監督ファン、ダニエル・クレイグやドリュー・スターキーのファン、ウィリアム・シュワード・バロウズのファンというように接点がいろいろあるので、2人とも興味があれば、デートで観てみてはどうでしょうか。ただし、2人の熱のバランスが釣り合わないカップルは、各々が作品からどんな影響を受けるかが未知数であることを承知した上で観てください。
キッズ&ティーン向き映画判定

R-15なので、15歳になってから観てください。年齢的にはだいぶ大人だけれど、夢中になる相手を見つけたリーと、まだ自由を謳歌し、大人に頼るよりも自立したいように見えるユージーンのやり取りを観ていると、年齢を問わずいろいろな感情や考えが湧き出てくると思います。片思い中の場合は、ユージーンよりもリーに共感しながら観る方もいそうです。ストーリーに身を任せて、観てみてください。

『クィア/QUEER』
2025年5月9日より全国公開
R-15+
ギャガ
公式サイト
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©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l.
TEXT by Myson
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情報は2025年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

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