REVIEW

終わりの鳥【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『終わりの鳥』ローラ・ペティクルー

REVIEW

この映画はスゴい!なんと独創的なんでしょう!冒頭から一気に引き込まれてしまいました。A24に才能を見出され本作を撮ったのは、1985年生まれ、クロアチア出身で本作で長編監督デビューを果たしたダイナ・O・プスィッチです。プスィッチ監督は、旧ユーゴスラビア出身で、10代前半の頃に経験した「シングルマザーに育てられ、変性疾患で亡くなった友人の死」から本作のインスピレーションを得たといいます(映画公式資料)。

映画『終わりの鳥』ローラ・ペティクルー
映画『終わりの鳥』

本作の原題は“TUESDAY”、邦題は『終わりの鳥』と付けられています。邦題は内容をそのまま反映しているので、本作のテーマを象徴する鳥が登場した際には、どんな役割を担ったキャラクターなのか容易に理解できるでしょう。ストーリーのほとんどは母娘でひっそりと暮らす家を舞台に展開されるものの、冒頭のシーンや、クライマックスではスケールの大きさが表現されており、「死」という壮大で深いテーマが、遠くもあり近くもあるものだと感じさせます。

映画『終わりの鳥』ジュリア・ルイス=ドレイファス

スリラーのようなおどろおどろしさもあれば、ユーモアや温かみもあり、そのバランスも絶妙です。そして、まさに死そのものが捕らえどころのないものであり、近づいてくると怖い一方で、この世に必要なことである所以も表現している点が秀逸です。

映画『終わりの鳥』ジュリア・ルイス=ドレイファス

愛する者の死を受け入れるのは誰にとっても辛く難しいことであり、去る側にもさまざまな思いが渦巻きます。そうした状況の母と娘が、“鳥”に出会うことでゆっくりと死に向き合う姿が胸を打ちます。ストーリーが展開していく過程で、観ている私達の死に対する捉え方もゆっくりと変化しているのを体感できるでしょう。悲しくて、辛いけれど、優しい気持ちにさせてくれる作品です。今後のダイナ・O・プスィッチ監督作にも大いに期待します。

デート向き映画判定

映画『終わりの鳥』ローラ・ペティクルー

ラブストーリーの要素はなく、ロマンチックなムードになるようなストーリーではないものの、お互いを大切に思う母と娘の様子を観ていると、パートナーの存在の尊さを実感でき、優しい気持ちも湧いてくるでしょう。鑑賞後に話したくなる要素もたくさんあるので、デートで観ても楽しめそうです。ただし、少し怖いシーンも出てくるので、初デートは避けたほうが良いかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『終わりの鳥』ジュリア・ルイス=ドレイファス/ローラ・ペティクルー

余命わずかな娘が自分よりも先にこの世を去るとわかっていても受け入れられない母親の辛さとともに、何としても娘を守ろうとする母親の強さが伝わってきます。一方で、娘も母親を思い、包み込む優しさと強さを持っています。最期の時を前に2人が正面から向き合う姿を観ると、伝えたい思いは伝えられる時に伝えておくべきだと感じるはずです。仲の良い親子でも、身近にいるからこそ話せないことは意外にあります。本作を一緒に観ると、先延ばしをしてはいけないと気づくきっかけにできそうです。

映画『終わりの鳥』ジュリア・ルイス=ドレイファス/ローラ・ペティクルー

『終わりの鳥』
2025年4月4日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©DEATH ON A TUESDAYLLC/THE BRITISH FILM INSTITUTE/BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2024

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年4月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ ロストランズ 闇を狩る者【レビュー】

“バイオハザード”シリーズでお馴染みの2人、ミラ・ジョヴォヴィッチとポール・W・S・アンダーソン夫妻が再びタッグを組み、“ゲーム・オブ・スローンズ”の原作者、ジョージ・R・R・マーティンの短編小説を7年の歳月をかけて映画化…

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

映画『君の顔では泣けない』芳根京子 芳根京子【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月28日生まれ。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. 映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ
  2. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  3. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール
  4. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  5. Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP