REVIEW
バブル経済絶頂期の1989年、上司によるハラスメントによって、不当に退職を余儀なくされた女性が、当時数少なかった女性弁護士の助けを得て起こした「福岡セクシュアル・ハラスメント裁判」がありました。本作は、その日本初のハラスメント裁判に着想を得たフィクションです。


本作を観ると、当時の女性は結婚したら退職するものと考えられており、実力があっても希望する仕事をさせてもらいづらい環境であったことがわかります。また、偏った価値観を押し付けられ、不遇な状況への不満も取り合ってもらえない状況だったと伝わってきます。だから、訴訟を起こすと決意した上野恵(ファーストサマーウイカ)は、裁判をしても100%負けるといわれ、ことごとく弁護を断られます。そんななか、朝日道子(綾瀬はるか)に出会います。

恵が道子に巡り逢えたことで一筋の光が見えた後にも苦難は多くやってきます。訴訟を起こすことで恵が二次被害に遭う場面も生々しく描かれており、観ているだけでも腹立たしく辛くなります。一方で、道子こそ八方ふさがりな状況に置かれながらも、明るく周囲を鼓舞し戦い抜く姿に勇気をもらえます。

昨今はハラスメントに対する問題意識が高まってきたので、本作の舞台となっている時代よりはマシになった気もします。でも、世代を問わずほとんどの女性は、女というだけで少なからず不公平で不快な扱いを受けたことがあるはずです。だから、道子や恵の戦いに感情移入せずにはいられません。

ただ、本作は、男 vs. 女という短絡的な構図で描くのではなく、どちらの側にもいろいろな考え方、価値観の人がいて、変われない人、変わる人の両方が描いています。だから、先入観なく観ていただきたいです。そして、観た方同士でさまざまな意見を交換できれば、時代が少しでも良いほうに変わってきたと感じられそうです。
デート向き映画判定

夫婦間ですら、やっぱり偏った性役割が持たれていた時代だとみてとれます。女性弁護士の道子が難しい裁判に挑むなか、夫婦関係が変わるのか、変わらないのか、変わるとしたら良いほうに変わるのか、悪いほうに変わるのかも見どころとなっています。パートナーとの価値観が根本的にズレていないかどうかを知るきっかけにもなりそうなので、敢えてデートで観て、相手の感想を聞いて確かめてみるのもアリでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定

時代が異なるとはいえ、現代にもまだ存在する社会の歪みを客観視することができます。藤野栞(松本穂香)のように、野心を燃やす若者の目線も描かれているので、皆さんも身近な感覚で観られると思います。また、世の中のおかしいことに対しておかしいと堂々と言って、子どもを守る母親としての道子の姿からも、良い刺激をもらえるでしょう。

『ファーストボイス』
2026年10月2日より全国公開
松竹、ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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©2026「ファーストボイス」製作委員会
TEXT by Myson
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