REVIEW

君は行く先を知らない【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『君は行く先を知らない』ラヤン・サルラク

イランの荒野をレンタカーで走る一家のロードムービー。彼等がどこへ向かっているのかは途中まで明かされません。でも、何か深刻な状況がありそうなムードは漂っています。だから、父、母、成人したばかりの長男の言動からいろいろな想像が掻き立てられます。そんななか、事情を知らない幼い次男(ラヤン・サルアク)は無邪気にはしゃいでいます。大人3人と次男とのやり取りには、束の間の家族の平和な姿が映し出され、観る側も癒されます。
物語が進んでいくと、彼等が何を目的に旅をしているのか、どこへ向かっているのかがわかります。そして、国民の自由と人権が脅かされているイランの現状を目の当たりにします。同時に、決断をした家族それぞれの思いの深さと愛情を一層感じます。最後まで観ると、『君は行く先を知らない』というタイトルには何重もの意味を感じます。車が向かう先、家族それぞれの未来、イランという国の未来といったいろいろな意味です。その象徴として、幼い次男の存在がストーリーにとても響いてきます。
本作はストーリー、テーマ、演出が見事です。家族4人の姿もとてもリアルで、それぞれの役者の演技にも引き込まれます。特に虜になってしまうのは、とっても可愛らしい次男です。登場するなり可愛くて、何をやっても可愛くて、元気いっぱいの姿からパワーをもらえます。そんな次男を演じるラヤン・サルアクの一瞬にして人を魅了する演技力に驚かされます。パナー・パナヒ監督は、イラン映画の巨匠といわれるジャファル・パナヒ監督の実の息子です。映画公式サイトには、ジャファル・パナヒ監督が表現者としてイランの弾圧を受けてきた過去について書かれていて、そんな父の背中を見てきたパナー・パナヒ監督が本作へ込めた思いを想像させられます。だからこそ、本作に登場する幼い次男が無邪気で明るく可能性を秘めた存在として描かれている背景に希望を感じます。未来への希望を映し出してくれる子どもの姿と、愛情をいっぱいの家族の姿をご覧ください。

デート向き映画判定
映画『君は行く先を知らない』パンテア・パナヒハ/アミン・シミアル

家族の微笑ましい姿が観られる作品です。本作を観ると、自分の家族のことを思い出す方もいると思います。映画を観た後は、お互いの家族の話をするのも良いですね。また、夫婦の掛け合いにもユーモアがあって、夫婦のバランスも絶妙です。カップルで観ると、お手本として観られる部分もありそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『君は行く先を知らない』モハマド・ハッサン・マージュニ/アミン・シミアル

皆さんは、長男や次男の目線で観られると思います。ただし、イランの国情を少しは知らないとピンとこないと思うので、社会情勢をニュースなどで知るようになってから観るか、少しイランのことを調べてから観るほうが良いでしょう。もし、皆さんが今家族一緒に平和に暮らせていたとしても、それは当たり前のことではありません。本作鑑賞を機に、何か気になったこと、感じたことがあれば、視野が広がるきっかけにもなると思います。

映画『君は行く先を知らない』ラヤン・サルラク

『君は行く先を知らない』
2023年8月25日より全国順次公開
フラッグ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©JP Film Production, 2021

TEXT by Myson

本ページの情報は2023年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン 罪人たち【レビュー】

ライアン・クーグラー監督と、マイケル・B・ジョーダンの名コンビが贈る本作は、まず設定がとても…

映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム おばあちゃんと僕の約束【レビュー】

『バッド・ジーニアス危険な天才たち』など数々の話題作を放ち、タイで勢いのあるスタジオとして注目を浴びるGDHが手がけた本作は…

映画『異端者の家』ソフィー・サッチャー ソフィー・サッチャー【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月18日生まれ。アメリカ、シカゴ出身。

映画『リライト』池田エライザ リライト【レビュー】

法条遥による同名小説を映画化した本作は、松居大悟監督とヨーロッパ企画の代表である上田誠が初タッグを組んだ作品です。“時間もの”作品で…

映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット 親友らしい態度とは?『親友かよ』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は『親友かよ』を取り上げ、親友らしい態度とは何かを考えます。

映画『サブスタンス』マーガレット・クアリー マーガレット・クアリー【ギャラリー/出演作一覧】

1994年10月23日生まれ。アメリカ出身。

映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李 フロントライン【レビュー】

2020年1月20日に横浜港を出港した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号では、その後、香港で下船した乗客が新型コロナウイルス感染症に罹患していることがわかり…

映画『プレデター:最凶頂上決戦』 プレデター:最凶頂上決戦【レビュー】

アニメーションとはいえ、さすが“プレデター”シリーズとあって、描写が激しく…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』綱啓永 綱啓永【ギャラリー/出演作一覧】

1998年12月24日生まれ。千葉県出身。

映画『ラ・コシーナ/厨房』ラウル・ブリオネス/ルーニー・マーラ ラ・コシーナ/厨房【レビュー】

イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーが書いた1959年初演の戯曲“調理場”を映画化した本作は…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット
  2. 映画『年少日記』
  3. 映画『か「」く「」し「」ご「」と「』奥平大兼/出口夏希/佐野晶哉(Aぇ! group)/菊池日菜子/早瀬憩

REVIEW

  1. 映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン
  2. 映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム
  3. 映画『リライト』池田エライザ
  4. 映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李
  5. 映画『プレデター:最凶頂上決戦』

PRESENT

  1. 映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人
  2. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  3. 中国ドラマ『墨雨雲間〜美しき復讐〜』オリジナルQUOカード
PAGE TOP