REVIEW

愛に乱暴【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『愛に乱暴』江口のりこ/小泉孝太郎

REVIEW

『悪人』『さよなら渓谷』『怒り』など数多くの映画化作品がある吉田修一の同名小説を映画化した作品とあって、心して観たものの、やっぱり想像以上にズシっと重たいものを感じる作品となっています。自己肯定感が下がりまくっている時に観るとかなり辛いかもしれません。
江口のりこが演じる桃子は、夫や義母など周囲の人の世話を惜しみなくしています。夫との関係は冷え切っているようでいて、桃子は明るく接し、関係を修復しようと努力しているように見えます。そして、ストーリーが進むにつれて、実態が明かされてくると、桃子が置かれている状況が一層残酷に見えてきます。何気なく映るシーンにどんな意味があるのかがわかってくると、その残酷さが身に沁みます。
同時に桃子の過去も明らかになってくると、それまでとは違う複雑な感情が喚起されます。何も悪くない人物が自分を責めて苦しむ姿、何かにすがろうと必死な人物が蹴落とされそうになる姿を観るのが相当辛いです。ただ、人は盲目的に執着しているものを手放すと、違う生き方を見つけられるのではないかという希望が見える部分もあります。なので、メンタルが弱り過ぎている時に観るのはあまりオススメしませんが、前向きな気持ちが出てきた時に観るなら、良い刺激をもたらしてくれる可能性もあります。
そして、江口のりこの演技力の高さを改めて感じられる、見応えのある作品となっています。人間のいろいろな感情が観られて、本当の幸せとは何かを考えるきっかけにもできると思います。

デート向き映画判定

映画『愛に乱暴』江口のりこ/小泉孝太郎/馬場ふみか

夫婦関係、恋愛関係がしっくりきていない方は、本作を機に別の選択肢がよぎるかもしれません。また、目を背けている場合は、自分の現実を客観視する機会になりそうです。そういう意味で、デートで観るのは不向きかなと思います。1人でじっくり観るか、本音を話せる仲の良い友達と観るほうが良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『愛に乱暴』江口のりこ/風吹ジュン

大人の恋愛や悩みが描かれているので、ある程度人生経験を積んでから観たほうが、より感情移入できると思います。とはいえ、どんな人間関係に置き換えても観られる部分はあるので、ビビッときたら観てみても良いのではないでしょうか。ただ、心の居場所がないとか、誰かに必要とされていないと強く感じている状況では悪い展開ばかりにフォーカスして辛くなるかもしれません。俯瞰して観る余裕がない場合や、気持ちが引っ張られ過ぎる方は観るタイミングを考えましょう。

映画『愛に乱暴』江口のりこ

『愛に乱暴』
2024年8月30日より全国公開
東京テアトル
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©2013 吉田修一/新潮社 ©2024「愛に乱暴」製作委員会

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『MELT メルト』ローザ・マーチャント MELT メルト【レビュー】

いろいろな意味で残酷。絶対起きてはならない出来事…

映画『怪物』黒川想矢 黒川想矢【ギャラリー/出演作一覧】

2009年12月5日生まれ。埼玉県生まれ。

映画『スタントマン 武替道』トン・ワイ/テレンス・ラウ/フィリップ・ン スタントマン 武替道【レビュー】

香港映画に対する誇りと、香港映画や映画作りに関わる人達を守りたい気持ちが交錯する…

映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 2名様プレゼント

映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 2名様プレゼント

映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド 大切な人ができれば、譲れないことも変わる!?『We Live in Time この時を生きて』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は運命的な出会いを果たし、ぶつかり合いながらもお互いに正直に生きるカップルの物語『We Live in Time この時を生きて』を取り上げます。

映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊 『雪風 YUKIKAZE』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『雪風 YUKIKAZE』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー IMMACULATE 聖なる胎動【レビュー】

敬虔な修道女のセシリア(シドニー・スウィーニー)は、イタリアの美しい田園都市にある修道院にやってきます…

映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド ストレンジ・ダーリン【レビュー】

6章からなる本作は、ユニークな構成となっています…

映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー/ブランドン・スクレナー ブランドン・スクレナー【ギャラリー/出演作一覧】

1990年6月26日生まれ。アメリカ出身。

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット スーパーマン【レビュー】

ジェームズ・ガン監督らしい表現によって、全く新しい“スーパーマン”が観られます。冒頭の演出からして…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド
  2. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  3. 映画でSEL:告知1回目

REVIEW

  1. 映画『MELT メルト』ローザ・マーチャント
  2. 映画『スタントマン 武替道』トン・ワイ/テレンス・ラウ/フィリップ・ン
  3. 映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー
  4. 映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド
  5. 映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット

PRESENT

  1. 映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ
  2. 映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊
  3. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
PAGE TOP