REVIEW
2024年1月29日、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区ラマッラーにある人道支援組織「赤新月社」の緊急通報センターでは、スタッフ達が6歳の少女ヒンド・ラジャブを救出するために力を尽くしました。本作は、電話越しに助けを求めるヒンド・ラジャブと「赤新月社」のスタッフ達の実際のやり取りを再現した作品です。

映画公式資料によると、「2025年10月10日にガザ地区での停戦が発行されてからも、いまだイスラエル軍の攻撃は継続し、軍事支配が進んでいる」といいます。ヒンド・ラジャブは、車で外出中、襲撃に遭います。最初の通報は、2024年1月29日の14時半頃、ドイツ在住のパレスチナ人男性からで、その通話の後、ヒンド・ラジャブと直接電話で会話を交わしていくうちに、誰と車に乗っていて、他の人が無事なのかどうかなどがわかっていきます。
本作でこの出来事を初めて知る場合は、通報を受けたスタッフと同じように、幼いヒンド・ラジャブがいかに過酷な状況にあるのかを知り、驚愕するはずです。そして、すぐに救助に行きたくても思い通りにはいかない状況にやるせなさを抑え切れずにいるスタッフの心情もリアルに伝わってきます。

また、本作では、実際の通話記録を使っています。カウテール・ベン・ハニア監督は、俳優達に、「録音された言葉の一言一句を忠実に再現する」と同時に、「その瞬間をその人物のように生きて、現在進行形でその出来事が起きているように感じてほしい」と要求したそうです。ハニア監督は撮影を以下のように振り返っています。
俳優は皆パレスチナ人で、ヒンド・ラジャブの悲劇を知っていました。彼らにとってガザで起きていることは、非常に強く感情を揺さぶる問題なのです。(中略)準備段階で、俳優たちは音声通りのセリフを一言一句完璧に覚えました。(中略)撮影が始まったとき、初めて彼らのヘッドセットに本物のヒンド・ラジャブの声を流したんです。(中略)セリフは覚えていましたが、その演技は「演技」ではなく、真実そのものだったんです。撮影は長回しで行いましたが、「もう一度やり直そう」「次はこうしてみて」とはとてもじゃないけど言えませんでした。なぜなら、彼らは演技をしてるわけではなかったので。(映画公式資料)

ヒンド・ラジャブと直接話すスタッフの他、救助隊を手配する立場にあるスタッフ、管理者など、さまざまな立場の人物が登場します。皆ヒンド・ラジャブを助けたい気持ちは同じである一方で、救助に向かう人が危険な目に遭うリスクも考慮しなければなりません。

ヒンド・ラジャブが置かれている状況が落ちつく兆しもなく、救助を待っている間にも何が起こるかわからない状況で、不安と恐怖は計り知れないほどだと伝わってきます。
「スター俳優が出演しているわけでもないし、アラビア語の映画だから字幕も必要」な本作で、ヒンド・ラジャブの声を幅広く届けるために助けが必要だったとハニア監督は語っています。そんななか、ブラッド・ピット、ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラ、アルフォンソ・キュアロン、ジョナサン・グレイザー、スパイク・リー、マイケル・ムーアがプロデューサーとして加わってくれたといいます。

本作は、第82回ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞受賞を含む8冠を達成、第98回アカデミー賞国際長編映画賞や第83回ゴールデングローブ賞非英語映画賞にノミネートされました。こうした功績も、多くの方が本作で描かれている実態を知るきっかけになることを願います。

『ヒンド・ラジャブの声』
2026年9月4日より全国公開
スターキャットアルバトロス・フィルム
公式サイト
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©MIME FILMS — TANIT FILMS
TEXT by Myson
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情報は2026年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。





























