REVIEW

未来は私たちのもの

  • follow us in feedly
  • RSS
<ドイツ映画祭HORIZONTE 2021>『未来は私たちのもの』ベンヤミン・ラジャブプル/バナフシェ・フールマズディ/アイディン・ジャラリー

本作は、イラン系移民2世のファラズ・シャリアットによる自伝的作品で、本作で監督デビューを飾っています。物語は、ドイツの移民系青年パーヴィスを中心とした青春物語が映し出され、移民問題、LGBTQといった繊細なテーマがベースにありつつ、恋愛や友情といった普遍的なテーマも織り交ぜて描かれているので、主人公の心情に自然と感情移入することができます。
パーヴィスはあることをきっかけに難民施設で通訳として働くことになり、そこでイランからやってきた姉弟アモンとバナに出会います。彼らはすぐに親しくなっていきますが、だんだんと置かれている状況の違いを感じるようになります。日本人にとって移民問題はあまり馴染みがありませんが、本作を通してその現状や難しい問題があることを痛感させられます。その一方で、純粋に恋愛や友情を楽しむパーヴィス達の様子がおしゃれなファッションやハイブリッドな音楽に乗せてとても華やかに映し出されていて、その緩急が上手く描かれている点に監督の手腕も感じられます。
また、日本のアニメ『美少女戦士セーラームーン』の格好をした幼い頃の監督の姿や、主人公のパーヴィスがセーラームーンのコスチュームを身につけているシーンなどが登場するので、セーラームーンを知っている人ならより親近感を感じられるのではないでしょうか。さまざまなテーマが盛り込まれている作品ですが、あまり難しく考えずに素直に観て受け止めて欲しいと思います。

デート向き映画判定
<ドイツ映画祭HORIZONTE 2021>『未来は私たちのもの』ベンヤミン・ラジャブプル

パーヴィスの恋愛模様も映し出されており、彼が純粋に人を好きになっていく姿にはどんな人でも共感できると思います。ただし、本作のテーマである移民問題やLGBTQが彼の恋愛にも深く関わっていくので、そんな困難な状況とパーヴィスがどう向き合っていくのかにも注目です。

キッズ&ティーン向き映画判定

移民問題やLGBTQといった難しいテーマの作品なので、キッズはせめて中学生くらいになってから観たほうが、物語をより理解して観られると思います。ティーンの場合は、パーヴィス達と同じ目線で観られますが、皆さんの今の状況と彼らの状況の違いに驚く点もあると思います。本作を通して世界にこういった現実があることを知り、もし気になったらご自身でも移民問題について調べてみてください。

<ドイツ映画祭HORIZONTE 2021>『未来は私たちのもの』

『未来は私たちのもの』
<ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021>オープニング作品
2021年11月18日(木)より21日(日)まで開催の<ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021>にて公開
公式サイト

TEXT by Shamy

© Juenglinge Film

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  4. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  5. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP