REVIEW

旅立ちのラストダンス【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『旅立ちのラストダンス』ダヨ・ウォン/マイケル・ホイ

REVIEW

2024年秋に本国、香港で公開された本作は、「初日で、それまでの中国映画興行収入歴代1位の『コールド・ウォー 香港警察 堕ちた正義』が持つオープニング興行収入記録を塗り替え、公開2日間で『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の3日間の興収を突破」し、「社会現象的なヒットを記録」しました。ヒットの理由の1つとして、もともとコメディアンとして人気を博すダヨ・ウォンと、「『Mr.Boo!ミスター・ブー』シリーズで監督・主演を務め、香港映画のコメディ黄金期を築いた存在」マイケル・ホイの32年ぶりの共演が挙げられています。(映画公式資料)

映画『旅立ちのラストダンス』ダヨ・ウォン/マイケル・ホイ

ダヨ・ウォン、マイケル・ホイというコメディ界の大スターが共演しているものの、本作が取り上げるテーマは、死者を弔う際に行われる道教の儀式「破地獄(ポーディーヨッ)」です。だから、本作では2人の名優が率いる人間ドラマを堪能できます。映画公式資料によると、「破地獄」は下記のように説明されています。

「破地獄」とは、道教における伝統的な葬儀儀礼の一つで、香港人の間では最も一般的なもの。特に若くして亡くなった者、事故死・自死などによって“本来の寿命を全うできずに死んだ者”が安全にあの世へ渡れるように、地獄の門を“破り”、魂の通り道を開くとされる儀式である。(中略)死者を送り出すと同時に、生者が背負ってきた悔いや痛みを“区切り”として受け止める境界の儀式でもある。(映画公式資料)

映画『旅立ちのラストダンス』マイケル・ホイ

コロナ禍で多額の借金を背負ったトウサン(ダヨ・ウォン)は、葬儀業者に転身し、再起を図ります。前オーナーから会社を継いだトウサンは、厳格な「葬儀道士」であるマン師匠(マイケル・ホイ)とうまくやっていかなければいけません。一方で、マン師匠は伝統的な儀式である「破地獄」を執り行う「葬儀道士」の跡継ぎ問題に悩まされることになります。

映画『旅立ちのラストダンス』ダヨ・ウォン/ミシェル・ワイ

本作では、伝統を守りたい立場と、親子関係でいえば子どもの幸せを第一に考えたい立場での葛藤が、さまざまなキャラクターの視点を通して描かれています。また、伝統的側面とともに宗教的側面もあるため、固定観念に縛られる者、客観的にみる者の両者の視点も描かれています。そこには性別の問題も含まれています。本作を観ると、宗教や伝統的な儀式等でいわれる性別に対する考え方は、本来悪意はなかったとしても、社会の価値観を形作るほどの威力を持っているとわかります。そして、伝統として長きに渡り定着されてきた思想は、無意識な性差別の種となっている可能性も否めません。

前半は死者を弔うとはどういうことかを考えさせるエピソードによって死生観を描きつつ、後半は遺された者がどう生きていくかという視点で死生観を描いています。どのキャラクターに感情移入をするかによってさまざまな観方ができる作品です。親心がわからない、子心がわからないと感じている方どちらにもオススメです。

デート向き映画判定

映画『旅立ちのラストダンス』ダヨ・ウォン

主軸ではないものの、恋愛関係や夫婦関係も描かれているので、生涯を共に過ごすつもりの相手がいる方が観ると、考えさせられる部分もあります。なので、パートナーと真正面から向き合って話し合う覚悟が既にできている方は、話し合うきっかけに本作を観るのもアリでしょう。一方で、まだ込み入った話をする心構えができていない方は、1人でじっくり観るほうが良いかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『旅立ちのラストダンス』ミシェル・ワイ/チュー・パクホン

自分が子どもの頃や10代の頃を振り返ると、頭では生と死について考える機会があったとしても、死に対してはまだピンときていなかった印象があります。なので、もう少し大人になってから観たほうが、一層自分事として観られるように思います。一方で、跡継ぎ問題に直面している方は、年齢を問わず自分事として観られそうです。

映画『旅立ちのラストダンス』

『旅立ちのラストダンス』
2026年5月8日より全国公開
ツイン
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2024 Emperor Film Production Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2026年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『キングダム 魂の決戦』山﨑賢人 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2026年7月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2026年7月】のアクセスランキングを発表!

【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集! 【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集!

メタ認知は、自分で自分をわかるために必要な認知機能です。今回は、映画鑑賞においてメタ認知の働きによって、鑑賞後の印象が変わるはずという仮説のもと、メタ認知が働く映画鑑賞とそうでない映画鑑賞で何が異なるのかを一緒に考えます。本ゼミでは、映画鑑賞に絡めて日常にも役立つ心理学を取り上げています。

映画『四十九-SEEK』映画祭受賞、浅野寛介、シェイン・コスギ監督 日本映画界に希望をもたらす制作の仕組みを実現!『四十九-SEEK』浅野寛介さん(主演・プロデューサー)&シェイン・コスギ監督インタビュー

CGに頼らず生身の肉体で魅せる“本物のアクション”で、世界17ヵ国42の映画祭でセレクション入り、12ヵ国で82の賞を受賞した『四十九-SEEK』は、独自の“劇場公開前リクープ(投資回収)”エコシステムで作られました。今回は、このシステムについてのお話を中心に、主演でプロデューサーを兼務した浅野寛介さんと、監督・編集と海外交渉を担当したシェイン・コスギさんにお話をお伺いしました。

映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』福原遥/細田佳央太 あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。【レビュー】

大ヒットした『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の続きを描いた本作では、元の時代に戻った加納百合(福原遥)がどう過ごしているかを描いています…

映画『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』トム・ホランド スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ【レビュー】

トム・ホランドが主演を務める本シリーズは2017年からスタート、スパイダーマンとしての初登場は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年公開)なので、既に10年間続いていることになります…

映画『ブルーロック』高橋文哉/櫻井海音/高橋恭平/綱啓永/野村康太/K(&TEAM)/青木柚/西垣匠/富本惣昭/倉悠貴/東啓介/畑芽育/窪田正孝 ブルーロック【レビュー】

本作を観て、コミックの人気、アニメ版や2.5次元版の人気の高さにも納得…

海外ドラマ『ザ・ボーイズ シーズン2』ジャンカルロ・エスポジート ジャンカルロ・エスポジート【ギャラリー/出演作一覧】

1958年4月26日生まれ。デンマーク生まれ。

映画『ミニオンズ&モンスターズ』 ミニオンズ&モンスターズ【レビュー】

本作は、映画愛が詰まったストーリーとなっています。冒頭あたりから、不意に…

映画『猫たちと7000マイルの旅』ケイティ・マクヒュー 『猫たちと7000マイルの旅』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『猫たちと7000マイルの旅』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『白パンと独裁者』ジャスパー・ビラーベック 戦争で歪む人の心理―当事者だけが知る残酷な真実―

戦争は人を狂わせ、人生を狂わせます。人は戦争の時だけ苦しめられるわけではなく、その前も後も苦しめられます。今回は、そうした残酷な真実を描く作品をご紹介します。

【映画でSEL】にたどりつくまでの道

今のあなたに必要な非認知能力を伸ばす【映画でSEL】プログラムのご案内

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集! 【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集!

メタ認知は、自分で自分をわかるために必要な認知機能です。今回は、映画鑑賞においてメタ認知の働きによって、鑑賞後の印象が変わるはずという仮説のもと、メタ認知が働く映画鑑賞とそうでない映画鑑賞で何が異なるのかを一緒に考えます。本ゼミでは、映画鑑賞に絡めて日常にも役立つ心理学を取り上げています。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』ラミ・マレック 映画好きが選んだ実在アーティストの伝記映画ランキング

今回は実在アーティストの伝記映画について、正式部員の皆さんに投票してもらいました。さまざまな有名アーティストにまつわる作品がある中で上位にランクインしたのはどの作品でしょうか?

映画『ズートピア2』 映画好きが選んだ2025アニメ映画ベスト

今回は、2025年に劇場公開されたアニメ映画について、正式部員の皆さんによる投票結果ベスト30を発表!2025年のアニメ映画ベストに輝いたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集!
  2. 映画『四月の余白』一ノ瀬ワタル/上阪隼人
  3. 【映画学ゼミ第9回】「作品との心理的距離感に影響を与え得る情動知能」参加者募集!

REVIEW

  1. 映画『キングダム 魂の決戦』山﨑賢人
  2. 映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』福原遥/細田佳央太
  3. 映画『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』トム・ホランド
  4. 映画『ブルーロック』高橋文哉/櫻井海音/高橋恭平/綱啓永/野村康太/K(&TEAM)/青木柚/西垣匠/富本惣昭/倉悠貴/東啓介/畑芽育/窪田正孝
  5. 映画『ミニオンズ&モンスターズ』

PRESENT

  1. 映画『猫たちと7000マイルの旅』ケイティ・マクヒュー
  2. 映画『左利きの少女』ニーナ・イエ/マー・シーユエン
  3. 映画『トイ・ストーリー5』Tシャツ
PAGE TOP