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ブロークン・ヴォイス【レビュー】

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映画『ブロークン・ヴォイス』カテジナ・ファルブロヴァー

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日本でも公演を行っていた、チェコ、プラハの名門少年少女合唱団“バンビーニ・ディ・プラーガ”で、1984年から2004年にかけて、少なくとも49人の少女が性被害を受けていました。同合唱団の指導者ボフミル・コリーンスキーは2004年に性的虐待の容疑で逮捕されました。本作は、その実際の事件から着想を得たフィクションです。

なぜ、20年もの間、49人にものぼる少女達が被害に遭うまで逮捕されなかったのでしょうか。本作は着想の基となる事件をそのまま描いているわけではないとしても、観れば少女達が陥ったであろう恐ろしい心理状態を察することができます。

映画『ブロークン・ヴォイス』カテジナ・ファルブロヴァー

本作は、13歳のヴァレリエ(カテジナ・ファルブロヴァー)と、15歳の姉のルチエ(マヤ・キンテラ)を軸としたストーリーとなっています。具体的な表現はされていないものの、序盤でルチエのセリフや態度に不可解な点が出てきます。

ルチエが活動する合唱団は選ばれし者しか入れないことは観ていて伝わってきます。入ってからも公演メンバーになれるかどうかはわからず、少女達は指揮者のヴィーテク(ユライ・ロイ)の顔を窺っています。ヴィーテクは少女達の運命を握る人物であり、認められたいという気持ちから少女達の憧れの的でもあるように映ります。

映画『ブロークン・ヴォイス』ユライ・ロイ

そして、ヴァレリエが合唱団に加入すると、仲の良い姉妹の関係は複雑になっていきます。この姉妹のやり取りにこそ、無垢な子どもの混乱が表れていて、権力を持つ大人によるグルーミングが行われていた影響をみてとれます。

以下はあくまで私の解釈です。読む方によってはネタバレと感じる内容が含まれるため、観終わってからお読みいただくことを推奨します。

映画『ブロークン・ヴォイス』

本作を観ると、少女達の何ともいえない表情や反応が何を意味しているのかと考えずにはいられません。少女達はそれぞれに自分は特別だと思い込まされています。そして、ヴィーテクに優しくされたと思えば急に厳しくされたり、不安になるように仕向けられているように映ります。

そんななか、性被害を受けるとどうなるのかといえば、傷に蓋をして、自分の被害を歪曲するという防衛反応が出ても不思議ではありません。だから、多くの少女が被害を受けながらも声をあげられなかったのではないかと思います。

映画『ブロークン・ヴォイス』カテジナ・ファルブロヴァー

ルチエがヴァレリエに対して意地悪をする展開は特に複雑な心境を表しています。ヴィーテクがヴァレリエに関心を示しているのを察知して、ルチエは自分が特別ではないという現実を目の当たりにします。それは自分に起きた被害を、あれは被害ではなかったと自分に言い聞かせられなくなることを意味します。だから、辛い現実から逃げられなくなった辛さや悲しみ、妹を守るためにヴィーテクから遠ざけようとする複雑な感情が、不可解な行為に走らせたのではないかと感じます。

最後のシーンで、伏線となっていたセリフの奥の意味が明らかになります。ヴァレリエがその言葉をかけられた時には気づかなかった“意味”は、“皆が被害者である”ことを暗に示しています。だから、あのシーンには本当にゾッとさせられます。実話が基になっていると思うと、なお心が痛みます。こんな大人は本当に許せません。子ども達を守るためには、周囲の大人達も加害者のステータスなどに惑わされることなく、注視する必要性を実感します。

デート向き映画判定

映画『ブロークン・ヴォイス』カテジナ・ファルブロヴァー

被害に遭った方の傷ついた心理は大変複雑だと思います。本作で描かれている少女達の様子も、問題がないように見えるかもしれません。でも、人に言いづらい被害だからこそ、自分で何とかしようとして、もっと辛くなっているはずです。こうした事態に陥った時、人は恐怖で動けないという状況をお互いに知っておくだけでも、有意義な映画鑑賞になるのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ブロークン・ヴォイス』

普段よく接している身内でも、社会的な立場が立派でも、悪いことを平気でする大人はいます。ヴァレリエと同じような状況になってしまったら、その場から逃げ出すだけでも怖いと思います。でも、何かおかしいなと思ったら、その感覚を無視しないでください。本作を観て、同じような状況になったら、自分ならどう対処するか考えてみるだけでも、とっさの時に役立つかもしれません。

映画『ブロークン・ヴォイス』カテジナ・ファルブロヴァー

『ブロークン・ヴォイス』
2026年9月19日より全国順次公開
クレプスキュール フィルム
公式サイト

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© endorfilm s.r.o. Punkchart films s.r.o. Česká televize innogy Česká republika a.s. Barrandov Studio a.s. 2025

TEXT by Myson

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