REVIEW
戦後の厳しい時代を生き抜く子ども達の姿を描く本作は、広島に生まれた西川美和監督によって作られました。映画公式資料によると、西川監督にとって「『戦争』や『平和』は幼少期からの教育を通じてあまりに身近で、キャリアの初期には、その重々しいテーマから逃れていたい気持ちもあった」そうです。でも、『すばらしき世界』(2021)の原作となった佐木隆三のノンフィクション・ノベル「身分帳」に、主人公が「終戦後の街や米軍キャンプで戦争孤児たちと行動を共にしながら育ったたことが綴られて」おり、「焼け跡や闇市で生き延びた孤児たちの物語と、彼らを吸収していった裏社会のことが西川の胸に焼き付いて離れなかった」といいます。

そうした背景のもとに作られた本作では、名子役の演技が光ります。まず、主人公の琴子を演じた小八重葵美(こやえ あみ)は、登場するなりオーラを放っています。オーディションで大抜擢された11歳(当時)の小八重は、凜とした顔立ちが美しいだけでなく、あどけなさと大人びた雰囲気が絶妙で琴子にピッタリです。きっと多くの方が観ていて「逸材現る!」と感じるでしょう。

琴子が行動を共にする個性的な子ども達を演じる子役も皆好演しています。特に新谷将吉は琴子の運命を握っていて印象に残ります。羽山由一郎が演じる将吉は大人顔負けの人間力があり、本作を観れば惚れてしまう方が続出するはずです(笑)。

そして、大人キャストが何とも豪華です。私は毎度ながら前情報を入れずに鑑賞し、二階堂ふみ以外の出演者は頭に入れておらず、他にも次から次へと名優が出てきて驚きました。役所広司、田中裕子、竹野内豊、岡田准一、吉田羊、北村有起哉のベテラン勢の他、坂東龍汰、櫻井海音など人気若手実力派が出演しており、限られた登場シーンでも印象を残しています。

ストーリーは、琴子が疎開しているところから始まります。そして、終戦し琴子は東京に帰るものの、元の生活はありません。家や家族を失ったのは琴子だけではなく、路上には複数の孤児達がいます。そんななか、琴子は何とか居場所を見つけようとしつつも、女として生きる上での残酷さを知ります。

大人はもちろん子どもは一層生きるのが過酷な状況で、女はさらに過酷な状況に置かれます。それは琴子だけではなく、曽根文美子(二階堂ふみ)も同じで、観ているだけでも恐怖を感じ、胸が痛みます。ネタバレを防ぐために具体的な表現は避けるとして、琴子がやむを得ずとる対策も危うく、限界がみえているだけに最後まで心配はつきません。

琴子や将吉を含め子ども達が生きるために何度も難しい選択に迫られる様子を観ていると、胸が張り裂けます。純粋で仲間思いだからこそ危なっかしい一方で、絶大な信頼関係を築いた彼女達が、最後にみせる姿は目に焼き付きます。当時の名も無き子ども達の存在と命の尊さを映画で伝えたかった西川監督の思いが存分に伝わってくる1作です。
デート向き映画判定

人生観を問う重みのある作品なので、一緒に観に行くなら本命の方を誘いたいところです。老若男女さまざまな立場のキャラクターが出てくるので、誰かしらに自分を重ねて観ることができるでしょう。ただ、気楽にフラッと観に行くというより、今日は映画を観る日と決めて挑むというスタンスが合っていると思います。そういう意味では、1人でじっくり観るほうが向いているような気もします。
キッズ&ティーン向き映画判定

皆さんと年の近い子ども達が主人公なので、同じ目線で観られるでしょう。当時の様子を観ると、私達が生きる現代の日本がいかに恵まれた状況にあると実感できるはずです。また、現代はジェンダーレスが謳われるようになったとはいえ、女として生まれると避けられない試練があるとわかります。感情が揺さぶられるシーンが多く出てくるので、何かしら感じるところがあると思います。ぜひ琴子達の心情を体感してください。

『わたしの知らない子どもたち』
2026年10月16日より全国公開
PG-12
K2 Pictures
公式サイト 本予告映像
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TEXT by Myson
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情報は2026年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。






























