REVIEW

ハンガー・ゲーム0【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ハンガー・ゲーム0』トム・ブライス/レイチェル・ゼグラー

REVIEW

本作は“ハンガー・ゲーム”シリーズのスノー大統領(ドナルド・サザーランド)の若き日を描いた物語。スノー大統領がパネムの独裁者に君臨する数十年前かつ、第12区からカットニス(ジェニファー・ローレンス)がゲーム参戦を志願する64年前にあたる前日譚とされています。これまでに映画で描かれてきたストーリーは、カットニスをはじめとした貧困地区から出場を余儀なくされたプレイヤー達の物語が軸でした。一方、本作は富裕層のハンガー・ゲームともいえるストーリーとなっていて、家名を守り、富裕層としての地位を存続させようとする若者達に焦点が当てられています。
主人公のコリオレーナス・スノー(トム・ブライス)は、名家の生まれでありながら、財産がほぼ尽きてしまい、優秀な生徒に贈られる賞金を得て、状況を立て直そうとしていました。そのためには、ハンガー・ゲームの教育係として担当するプレイヤーを勝たせるしかありません。でも、彼が担当することになったのは、第12区のか弱いプレイヤー、ルーシー・グレイ・ベアード(レイチェル・ゼグラー)でした。ルーシーの武器といえば、歌声だけ。果たしてコリオレーナスはルーシーを勝たせることができるのかという点が、見どころの1つとなっています。

ただ、2人が勝てるかどうかで終わらないのが本作のおもしろいところです。本作はコリオレーナス・スノーという人物にどんな過去があったのかが1番の見どころとなっていて、家名を背負い、権力者側にいるからこその葛藤が描かれています。彼の人となりが方向づけられたといえる展開があり、ロマンチックなシーンもありながら、現実的な展開が印象的です。
また、これまでの“ハンガー・ゲーム”シリーズでは、貧困地区の若者達が生き残りをかけたゲームのバトルシーンをメインに描いていましたが、本作はどちらかというとゲームを主催する側に焦点が当てられている点で、シリーズを通して観てきたファンにとっては新鮮で、一層興味深い内容となっています。

映画『ハンガー・ゲーム0』トム・ブライス/レイチェル・ゼグラー

物語の舞台となる時代が変わったことで、一新されたキャストも魅力的です。主演を務めるトム・ブライスは、まだ人間味、優しさがありながら、家名を背負っているせいか、そもそも持ち合わせているのかわからない狡猾さも垣間見える、若き頃のコリオレーナス・スノーの多面性を見事に表現しています。コリオレーナスの心の揺らぎを観ていると、将来彼がどんな人物になるのかわかっていても惹かれるところがあるでしょう。また、劇中の第1章と第3章で体格が違っている点でも細かい役作りをしているのがうかがえて、トム・ブライスに今後の活躍にも期待できます。ルーシー役のレイチェル・ゼグラーは可憐さとパワフルな歌声のギャップで観客を魅了するでしょう。歌のジャンルも『ウエスト・サイド・ストーリー』とは全然違うので、彼女の歌い手としての幅と実力を改めて感じます。さらに脇を固めるヴィオラ・デイヴィスは貫禄と不気味さが際立つキャラクターを好演、ピーター・ディンクレイジも鍵となる人物を演じ、作品に重厚感を与えています。
“ハンガー・ゲーム”シリーズとしては、新鮮な要素が満載で、シリーズのファンはもちろん、本作から初めて観るという方でも楽しめると思います。良い意味でとても意地悪なストーリーで見応えがありますよ。

デート向き映画判定

映画『ハンガー・ゲーム0』レイチェル・ゼグラー

人間ドラマ、アクション、ラブストーリーと一粒で3度美味しい作品で、デートで観るのも良いでしょう。ただし、家柄の違いや住む世界の違いで悩んでいるカップルが本作を一緒に観ると、どういう反応になるのか読めないところがあります(苦笑)。映画を観ると何でも自分に重ねてしまう方は、1人でじっくり観るか、仲の良い友達と観るほうが気楽に楽しめるかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ハンガー・ゲーム0』トム・ブライス/ヴィオラ・デイヴィス

命懸けのハンガー・ゲームで「歌が武器になるの?」と思う方もいるでしょう。そんな状況で彼等がどういう作戦に出るのかが、まず観ていておもしろいです。その戦略にはどこか現代に繋がる部分もあるので、感情移入しやすいポイントもいくつかあると思います。主人公がティーンエイジャーで、将来どんな人間になるかを運命づける展開が描かれているので、ティーンの皆さんは特に等身大で観られそうです。

映画『ハンガー・ゲーム0』トム・ブライス/レイチェル・ゼグラー/ピーター・ディンクレイジ/ハンター・シェイファー/ジョシュ・アンドレス・リベラ/ジェイソン・シュワルツマン/ヴィオラ・デイヴィス

『ハンガー・ゲーム0』
2023年12月22日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2023 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

TEXT by Myson


関連作

『ハンガー・ゲーム』

Amazonプライムビデオで観る U-NEXTで観る Huluで観る
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

『ハンガー・ゲーム2』

Amazonプライムビデオで観る U-NEXTで観る Huluで観る
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

『ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス』

Amazonプライムビデオで観る U-NEXTで観る Huluで観る
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 第68回部活ドルビーアトモス部活

『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』

Amazonプライムビデオで観る U-NEXTで観る Huluで観る
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 【映画に隠された恋愛哲学】最終的に選ぶ男は、生きていくために必要な人

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年12月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『言えない秘密』京本大我/古川琴音 アイドルを観たい!知りたい!アイドル映画特集

こちらの記事では、アイドル出演作から、アイドルが原作を書いた作品、アイドルが主人公の作品、実在のアイドルがモデルとなっている作品まで、アイドルにまつわる作品をアレコレご紹介します!

映画『ミッシング』石原さとみ ミッシング【レビュー】

𠮷田恵輔監督、石原さとみ主演の本作は、行方不明になった6歳の娘を必死で探す夫婦と、その姿を報道するテレビ局の人間を通して…

映画『猿の惑星/キングダム』フレイヤ・アーラン 猿の惑星/キングダム【レビュー】

本作の宣伝で“完全新作”と称している通り、これまでとは異なるテンションが…

映画『不死身ラヴァーズ』見上愛/佐藤寛太 映画に隠された恋愛哲学とヒント集76:恋愛における過去・現在・未来の重要性

今回は、高木ユーナによる同名コミックを原作とし、松居大悟監督が10年以上温め続けてきたという『不死身ラヴァーズ』を題材に、恋愛における過去・現在・未来の重要性について考えます。

映画『またヴィンセントは襲われる』カリム・ルクルー またヴィンセントは襲われる【レビュー】

主人公のヴィンセントは、ある日突然、会社でインターンの男性に襲いかかられ…

海外ドラマ『三体』エイザ・ゴンザレス ポッドキャスト【だからワタシ達は映画が好き】8〜「最近観たNetflix作品」

『三体』は全部観た方とぜひ共有したい、とある伏線についての話で盛り上がっています…

映画『カラーパープル』タラジ・P・ヘンソン タラジ・P・ヘンソン【プロフィールと出演作一覧】

1970年9月11日アメリカ、ワシントンD.C.生まれ。俳優、プロデューサー、監督。2001年『サウスセントラルLA』で注目を集め…

映画『胸騒ぎ』 胸騒ぎ【レビュー】

『胸騒ぎ』というタイトルなので、最初から嫌な予感にアンテナが立ってしまい…

映画『トランスフュージョン』サム・ワーシントン トランスフュージョン【レビュー】

ティーンエイジャーの息子のお父さん役を演じているサム・ワーシントン…

映画『夢の中』山﨑果倫/櫻井圭佑 夢の中【レビュー】

本作は、『蝸牛』でMOOSIC LAB 2019短編部門グランプリほか4冠を達成した都楳勝監督による最新作です。主人公のタエコ(山﨑果倫)の…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『MIRRORLIAR FILMS Season5』横浜流星 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内20代編】

今回は、国内で活躍する20代(1995年から2004年生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で70名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ティモシー・シャラメ 映画好きが選んだ2023洋画ベスト

正式部員の皆さんに2023年の洋画ベストを選んでいただきました。どの作品が2023年の洋画ベストに輝いたのでしょうか?

映画『テルマ&ルイーズ 4K』スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス あの名作をリメイクするとしたら、誰をキャスティングする?『テルマ&ルイーズ』

今回は『テルマ&ルイーズ』のリメイクを作るとしたら…ということで、テルマ役のジーナ・デイヴィスとルイーズ役のスーザン・サランドンをそれぞれ誰が演じるのが良いか、正式部員の皆さんに聞いてみました。

REVIEW

  1. 映画『ミッシング』石原さとみ
  2. 映画『猿の惑星/キングダム』フレイヤ・アーラン
  3. 映画『またヴィンセントは襲われる』カリム・ルクルー
  4. 映画『胸騒ぎ』
  5. 映画『トランスフュージョン』サム・ワーシントン

PRESENT

  1. 映画『FARANG/ファラン』ナシム・リエス
  2. 映画『猿の惑星/キングダム』オリジナルTシャツ
  3. 映画『九十歳。何がめでたい』草笛光子
PAGE TOP