学び・メンタルヘルス

心理学から観る映画45:【映画でウェルビーイングを見つける】Vol.2『窓ぎわのトットちゃん』

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『窓ぎわのトットちゃん』

【映画でウェルビーイングを見つける】第2弾で選んだ映画は、黒柳徹子の自伝小説を映画化した『窓ぎわのトットちゃん』です。本企画では、ウェルビーイングを感覚としてつかむ上で有用な映画をご紹介していきます。

ウェルビーイング(Well-being)とは
●身体的・精神的・社会的に良い状態にあること(文部科学省)
●持続的な幸福のあり方(セリグマン,2014)
→さらに詳細はこちら

ウェルビーイングの5要素

  • ポジティブ感情
  • エンゲージメント(何かに夢中になり没我する感覚。フロー状態と関係がある)
  • 意味・意義
  • ポジティブな関係性
  • 達成感

※ウェルビーイングの構成要素は研究者によって諸説ある中で、上記は、セリグマン(2014)を採用しています。

昨今、国内外でウェルビーイングに注目が集まってきており、研究者も増えてきました。研究者によって定義や構成要素が微妙に異なりますが、本記事では上記のセリグマン(2014)が提唱する要素をもとにしています。

今回の題材映画

映画『窓ぎわのトットちゃん』
映画『窓ぎわのトットちゃん』

『窓ぎわのトットちゃん』
2023年12月8日より全国公開中
東宝
原作:黒柳徹子
監督・脚本:八鍬新之介
声の出演:大野りりあな/小栗旬/杏/滝沢カレン/役所広司
公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 ムビチケ購入はこちら

第二次世界大戦中の日本が舞台となっている本作では、お転婆なトットちゃん(子どもの頃の黒柳徹子)と、学校の友達や先生、家族の日常が描かれています。子どもでものびのびと過ごすことができない時代にめげず、トットちゃんが何事にも明るく一生懸命に取り組む姿がとても印象的です。そんな本作のストーリーをウェルビーイングの5つのポイントと結び付けて考えてみました。

©黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会

『窓ぎわのトットちゃん』に観る、ウェルビーイング5つのポイント

映画『窓ぎわのトットちゃん』

ポジティブ感情:説明不要なくらい、トットちゃんは何に対してもポジティブに考えているのが伝わってきます。トットちゃんはポジティブ感情に溢れています。
エンゲージメント:トットちゃんは何に対しても一生懸命です。お財布をある場所に落っことして気が済むまで探したり、仲良しのやすあきちゃんに自慢の眺めを見せてあげようと試行錯誤したり、幾度となく無我夢中な姿が観られます。
意味・意義:利他的なトットちゃんの言動の数々も印象に残るでしょう。自分が楽しくてやっていたとしても、相手のためを思ってやっている部分が常にあるとわかります。
ポジティブな関係性:家族はもちろん、トモエ学園の先生や友達ととても良い関係を築いています。そして、トットちゃんはいつも周りの人を幸せにします。特に一番の仲良し、やすあきちゃんとの絆はトットちゃんに大きな影響を与えていることが見て取れます。
達成感:トットちゃんはやる前から諦めることがありません。“エンゲージメント”で取り上げたシーンも含め、トットちゃんは何事にも全力投球なので、観ているだけでも達成感が伝わってきます。

上記はあくまで私の視点です。皆さんも自由に感じたまま当てはめて観てみてください。

映画『窓ぎわのトットちゃん』

本作を観た時にまさにウェルビーイングのヒントが詰まった作品だなと感じました。戦争中で誰もがとても辛い思いをしている時代にもかかわらず、トットちゃんの元気な姿、彼女の周りの人達の優しさを観ていると、幸福感に包まれます。トットちゃん自身がとても優しくて前向きだからこそ、幸福感に溢れているのはもちろんのこと、トットちゃんの周りの人達も優しさに溢れていて、幸福の連鎖、相互作用があるように感じます。

トットちゃんだけでなく、トットちゃんの両親、トモエ学園の小林先生、やすあきちゃんの姿にもウェルビーイングのヒントがたくさんあります。

映画『窓ぎわのトットちゃん』

ぜひ、年齢を問わず多くの方に観ていただきたい作品です。初見は純粋に映画を楽しんでいただき、2回目、3回目と繰り返し観る機会に、ウェルビーイングの要素をイメージしながら観てみてください。

<参考・引用文献>
文部科学省「ウェルビーイングの向上について(次期教育振興基本計画における方向性)」中央教育審議会教育振興基本計画部会(第13回)会議資料【資料8】
マーティン・セリグマン(2014)(宇野カオリ訳)『ポジティブ心理学の挑戦“幸福”から“持続的幸福”へ』ディスカヴァー・トゥエンティワン,東京
前野隆司・前野マドカ(2022)『ウェルビーイング』日本経済新聞出版

原作本「窓ぎわのトットちゃん」

Amazonで書籍を購入する

TEXT by Myson(武内三穂・認定心理士)

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年12月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン 罪人たち【レビュー】

ライアン・クーグラー監督と、マイケル・B・ジョーダンの名コンビが贈る本作は、まず設定がとても…

映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム おばあちゃんと僕の約束【レビュー】

『バッド・ジーニアス危険な天才たち』など数々の話題作を放ち、タイで勢いのあるスタジオとして注目を浴びるGDHが手がけた本作は…

映画『異端者の家』ソフィー・サッチャー ソフィー・サッチャー【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月18日生まれ。アメリカ、シカゴ出身。

映画『リライト』池田エライザ リライト【レビュー】

法条遥による同名小説を映画化した本作は、松居大悟監督とヨーロッパ企画の代表である上田誠が初タッグを組んだ作品です。“時間もの”作品で…

映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット 親友らしい態度とは?『親友かよ』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は『親友かよ』を取り上げ、親友らしい態度とは何かを考えます。

映画『サブスタンス』マーガレット・クアリー マーガレット・クアリー【ギャラリー/出演作一覧】

1994年10月23日生まれ。アメリカ出身。

映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李 フロントライン【レビュー】

2020年1月20日に横浜港を出港した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号では、その後、香港で下船した乗客が新型コロナウイルス感染症に罹患していることがわかり…

映画『プレデター:最凶頂上決戦』 プレデター:最凶頂上決戦【レビュー】

アニメーションとはいえ、さすが“プレデター”シリーズとあって、描写が激しく…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』綱啓永 綱啓永【ギャラリー/出演作一覧】

1998年12月24日生まれ。千葉県出身。

映画『ラ・コシーナ/厨房』ラウル・ブリオネス/ルーニー・マーラ ラ・コシーナ/厨房【レビュー】

イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーが書いた1959年初演の戯曲“調理場”を映画化した本作は…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット
  2. 映画『年少日記』
  3. 映画『か「」く「」し「」ご「」と「』奥平大兼/出口夏希/佐野晶哉(Aぇ! group)/菊池日菜子/早瀬憩

REVIEW

  1. 映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン
  2. 映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム
  3. 映画『リライト』池田エライザ
  4. 映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李
  5. 映画『プレデター:最凶頂上決戦』

PRESENT

  1. 映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人
  2. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  3. 中国ドラマ『墨雨雲間〜美しき復讐〜』オリジナルQUOカード
PAGE TOP