REVIEW

アンティークの祝祭

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『アンティークの祝祭』カトリーヌ・ドヌーヴ

神のお告げがあったと言って、急に身の回りのものを処分しようとガレッジセールを開く主人公。彼女の家にはたくさんのアンティークがあり、それぞれにまつわる思い出が映像の中で描かれていきます。一方、現在の彼女は孤独で、認知症の傾向なのか、時々誰と何を話しているのか混同することも。そんな彼女は過去のある出来事に囚われているようで、現実と幻想の中を彷徨っています。物語が展開するにつれ、その原因が明らかにされていくのですが、彼女が“身辺整理”をしていくなかで、娘や息子に関わる人生の精算もしていくストーリーとなっています。そんな本作は、突然大切なアンティークを一気にガレッジセールに出すという主人公の行為を心配しながら、静かに見守るような感覚で観ることになると思いますが、油断は禁物です。最後の最後で大きな展開が待っていて、衝撃的かつ一瞬「どういうこと?」と呆然とさせられますが、ある意味の潔さが爽快でもあります。
本作は、神の存在、終活、親子関係の修復…と、どのテーマに焦点を当ててみるかによって印象が異なり、幻想と現実の間を行き交う演出などによって一見つかみどころがないようでいて、そこが観る側の想像を膨らませてくれるところであり、魅力となっています。象の時計についての解釈が観終わった後すぐにはできなかったのですが、あのくだりは、主人公が娘にした約束を守ることになったのだと私は考えました。細かいところに「?」が散りばめられているので、ぜひそんなところの考察も楽しんでください。あと、カトリーヌ・ドヌーヴとキアラ・マストロヤンニの実の親子が、劇中でも母娘を演じている点で、演技とはいえ、どんな気持ちで演じているんだろうと想像するのも楽しいです。

デート向き映画判定
映画『アンティークの祝祭』カトリーヌ・ドヌーヴ/キアラ・マストロヤンニ

人生の終わりを迎えようとしている老女のストーリーなので、デートムービーという雰囲気の作品ではないですが、のどかで美しい世界観なので、2人の好みが合えばデートで観るのも良いのではないでしょうか。最後に「ええええ!!!」となるので、観終わった後に誰かと解釈を巡って話したくなる作品です。その点で会話のネタになり、映画鑑賞後のティータイムや食事も楽しく過ごせるでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『アンティークの祝祭』カトリーヌ・ドヌーヴ

テーマ的に大人向けであり、わかりやすいストーリーというよりも、感覚や感性で楽しむ作品という印象です。なので、いろいろな経験をして、家族の歴史なども積んでから、大人になって観るほうが何倍も感情移入しやすくなると思います。でも、文学的な世界観が魅力的な作品なので、文学好きの高校生、大学生ならばトライしてみても良さそうです。あとアートの要素も多いので、美術、芸術が好きな人も独自の目線で楽しめるかも知れません。

映画『アンティークの祝祭』カトリーヌ・ドヌーヴ

『アンティークの祝祭』
2020年6月5日より全国順次公開
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト

© Les Films du Poisson – France 2 Cinema – Uccelli Production – Pictanovo

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗 『爆弾』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『爆弾』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『おーい、応為』長澤まさみ 心理学から観る映画58:遺伝と環境がヒトに与える影響『おーい、応為』

今回は、葛飾北斎の娘、お栄(長澤まさみ)の半生を描いた『おーい、応為』を題材に、遺伝と環境が才能に与える影響について考えてみます。

海外ドラマ『ウェンズデー シーズン2』ジェナ・オルテガ ジェナ・オルテガ【ギャラリー/出演作一覧】

2002年9月27日生まれ。アメリカ出身。

映画『愚か者の身分』北村匠海/林裕太/綾野剛 愚か者の身分【レビュー】

闇ビジネスに関するニュースが増えてきた日本において、本作で描かれているような出来事は…

映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平 次元を超える【レビュー】

キービジュアルとタイトル、「人はどこから来て、どこへ行くのか」という意味深なキャッチコピーだけで観たくなったのは…

映画『見はらし世代』黒崎煌代 黒崎煌代【ギャラリー/出演作一覧】

2002年4月19日生まれ。兵庫県出身。

映画『ヒポクラテスの盲点』 ヒポクラテスの盲点【レビュー】

新型コロナウイルスワクチンの被害が起こっている現実に着目した、中立した立場の取材に基づくドキュメンタリー…

映画『ファンファーレ!ふたつの音』ピエール・ロタン ピエール・ロタン【ギャラリー/出演作一覧】

1989年6月20日生まれ。フランス出身。

映画『トロン:アレス』ジャレッド・レト トロン:アレス【レビュー】

本シリーズ1作目『トロン』(=『トロン:オリジナル』)は1982年、『トロン:レガシー』は2010年に作られ、本作はシリーズ3作目となります…

映画『層間騒音』イ・ソンビン 層間騒音【レビュー】

冒頭から不可解な現象が映し出され、観る側はゾワゾワさせられながら騒音の原因を想像することになるわけですが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion ファイナンシャルプランナーから学ぶ【明るい未来のための将来設計とお金の基本講座】女性限定ご招待!

本セミナーでは、「NISA・iDeCoなどの資産形成」「子どもの教育資金」「将来受け取る年金」「住宅購入・住宅ローン」「保険」など、将来に役立つお金の知識や情報、仕組みやルールについて、ファイナンシャルプランナーの先生が初めての方でもわかりやすく優しく教えてくれます。

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  2. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion
  3. 映画学ゼミ:アイキャッチ1/本の上の犬と少女

REVIEW

  1. 映画『愚か者の身分』北村匠海/林裕太/綾野剛
  2. 映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平
  3. 映画『ヒポクラテスの盲点』
  4. 映画『トロン:アレス』ジャレッド・レト
  5. 映画『層間騒音』イ・ソンビン

PRESENT

  1. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  2. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion
PAGE TOP