学び・メンタルヘルス

利口な子どもに甘える大人『グッドワン』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

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映画『グッドワン』リリー・コリアス

【映画でSEL(社会性と情動の学習)】の簡単な解説はこちら

今回は、父と娘、父の友人の3人で出かけたキャンプでの様子を描く『グッドワン』を取り上げ、娘サム、父クリスと、その友人マットそれぞれの視点でどんな思考が働いていたかを想像してみます。

※一部ネタバレを含みますので未見の方は鑑賞後に下記をお読みください。

映画『グッドワン』リリー・コリアス/ジェームズ・レグロス/ダニー・マッカーシー

17歳の少女サム(リリー・コリアス)は、父のクリス(ジェームズ・レグロス)とキャンプに出かけます。同行者は、父の旧友マット(ダニー・マッカーシー)と彼の息子の2人だったはずが、マットの息子は行きたがらず、結局サム、クリス、マットの3人でキャンプに行くことになります。

思春期の少女が、父と父の友人の3人でキャンプに行くという状況は、それだけで娘サムの苦労が想像できます(苦笑)。マットの息子が行かないなら自分も行かないと拒否しても良さそうなものの、キャンプに行くところからクライマックスまで、聞き分けが良過ぎるサムの様子が目に付きます。サムが、自分には気遣いが足りないクリスやマットを気遣う背景には、親の離婚により傷ついた心境も関係しているのかもしれません。

映画『グッドワン』ジェームズ・レグロス/ダニー・マッカーシー

一方、気の置けない仲のクリスとマットは、サムが思春期の女の子ということにほとんど配慮がみられません。それでもサムは、父達よりも大人らしく振る舞い、その場を取り持とうとします。人生に行き詰まっている様子のマットを気遣い、いろいろな場面で鈍感な父の言動も大目に見てあげるサムを観ていると、やるせない気持ちになります。でも、本作はこれだけでは終わりません。

映画『グッドワン』リリー・コリアス/ジェームズ・レグロス

マットがサムに放った一言によって、サムは限界を迎えます。そして、サムがマットから気持ち悪いことをいわれたという事実を告げられたクリスは、あいつはくだらないことをいうから受け流せと、娘サムの悲痛な叫びを重く受け止めません。別の場面では、マットに対して激怒し、娘思いの父親らしい振る舞いを見せたクリスだけに、この対応にはガッカリさせられます。

映画『グッドワン』リリー・コリアス/ジェームズ・レグロス/ダニー・マッカーシー

サムに起きた一部始終は、序盤から続くちょっとしたやり取りの積み重ねだけでもそこそこキツイと思えるにもかかわらず、最後の一撃は観ているだけでも苦痛でなりません(泣)。サムに感情移入して観た方は、きっと同じような反応になったと思います。一方で、クリスやマットの気が知れません。そこで、それぞれの視点でどういう考えがあったのかを想像してみます。もちろん、以下が正解とは限りません。皆さん各々で解釈してみてください。

映画『グッドワン』リリー・コリアス

【サムの心に浮かんだであろう気持ち】
・マットに、友人の娘としてではなく、女性として見られたようで気持ちが悪かった。
・父クリスに対する友人マットの裏切りを見たようで複雑な気持ちもした。
・傷心のマットに対する、自分のこれまでの気遣いが踏みにじられて、空しさや怒りが湧いた。
・父クリスが取り合ってくれず、自分よりもマットを優先したようで悲しかった。
・父なのに守ってくれない上に、楽しみたいという父の気持ちを強要され、思いが伝わらない無念さと絶望感を抱いた。
・マットのあり得ない発言や父の反応に、大人の男性に対する恐怖心、失望が湧いた。…etc.

映画『グッドワン』リリー・コリアス/ジェームズ・レグロス

【ある発言をした時のマットに当てはまりそうな心情】
A:サムの利口さと優しさを勘違いして、女性として見てしまった。
B:自分の娘のような感覚で言ったつもりだった。
C:深いことは考えずに口走った。…etc.

【娘サムの訴えを取り合わなかった父クリスに当てはまりそうな心情】
A:娘サムが傷ついたと思いたくないし、マットの裏切りとも思いたくないので、敢えて軽く扱ってやり過ごしたかった。
B:娘をまだ子どもとして見ており、マットが娘を女として見るわけがないと、本当に大したことはないと思っていた。
C:娘サムのほうが大人で、マットは幼稚だから、サムのほうが我慢してくれれば丸く収まると本気で思っていた。…etc.

上記には、クリスとマットの言動を性善説で想像した場合を含んだものの、やっぱり許せない気持ちがわき上がります。自分がサムと同じ立場だったらと想像すると、恐怖と不安しかありません。日常でも、子どもが発するシグナルが見過ごされてしまうことは多々あると思います。子どもの利口さに甘えずに、しっかりと耳を傾け、様子を観察する責任が、大人にはあると感じます。

映画『グッドワン』リリー・コリアス

『グッドワン』
2026年1月16日より全国公開
スターキャットアルバトロス・フィルム
公式サイト

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©2024 Hey Bear LLC.

TEXT by 武内三穂(認定心理士)

【映画でSEL】の簡単な解説動画を公開しています。下記vimeoにてどなたでも無料でご覧いただけます。
【映画でSEL】とは→こちら
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