REVIEW

僕が跳びはねる理由【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『僕が跳びはねる理由』

自閉症者には世界がどんな風に見えているのかを綴った本作は、自閉症の東田直樹氏が13歳の時に執筆したエッセイ「自閉症の僕が跳びはねる理由」が原作です。『クラウド・アトラス』の原作者としても知られるデイヴィッド・ミッチェルと、妻のケイコ・ヨシダが、本作の原作の翻訳を務めていますが、彼等自身の息子が自閉症ということで、この本に感銘し、世界中の自閉症の子を持つ親にも読んで欲しいという願いで翻訳するに至ったそうです。そうしてこの原作は世界30ヵ国以上で翻訳され、117万部を超える大ベストセラーになっており、国境を越えて自閉症者やその家族達に希望を与えています。
普段私達は、思ったことを自然に言葉にして相手に伝えることができますが、自閉症者にとってそれはとても難しいことです。それがなぜ難しいのかを、自閉症である東田直樹氏自身の言葉で綴った原作をもとに語られていて、自閉症者の内面を知ることができます。他にも彼等がなぜ跳びはねるのかということや、同じ景色でも彼等にはどんな風に見ているのかなど、彼等がこの世界をどう見て、何を感じているのかを伝える内容になっています。そんな本作を観ると、私達の多くが自閉症について知らないことが多く、誤ったイメージや認識を持っていることを痛感します。また、本作にはあらゆる国の自閉症者とその家族が登場しますが、周囲の理解が得られないことで苦労し、うちひしがれてしまう人もいる現状も映し出されていて、多くの人の理解と協力が必要だということも伝わってきます。さらに、自閉症の我が子の思いや考えが今までわかっていなかったことに罪悪感を持つ親御さん達が涙ながらに語る本音も知ることができます。私達が普段当たり前だと思っていることがそうではないと知ることができ、新たな視点をもたらしてくれます。締めくくりの東田氏の言葉も胸に刺さります。

デート向き映画判定
映画『僕が跳びはねる理由』

デートムービーではありませんが、共有して欲しい知識や情報が詰まった作品です。本作は自閉症についてテーマにしていますが、広く捉えると他者を理解することに繋がると思います。とても優しくて穏やかな気持ちにしてくれる作品なので、ぜひデートでも観てください。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『僕が跳びはねる理由』

学校などで自閉症についてどれくらい教えてもらう機会があるのかわかりませんが、皆さんの回りにも1人くらいは自閉症の友達がいるのではないでしょうか。うまく会話ができない、言いたいことを言葉にするのが難しいだけで、皆いろいろな思いを持っています。相手を知ることでグッと距離も縮まるので、本作を観て自閉症のことについてもっと知っていただけたらと思います。

映画『僕が跳びはねる理由』

『僕が跳びはねる理由』
2021年4月2日より全国順次公開
KADOKAWA
公式サイト

© 2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー 『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー

写真家、深瀬昌久の78年に渡る波瀾万丈の人生を、実話とフィクションを織り交ぜて描いた映画『レイブンズ』。今回は本作で、深瀬昌久の最愛の妻であり被写体でもあった洋子役を演じた瀧内公美さんにインタビューさせていただきました。

映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン ミッキー17【レビュー】

『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞したポン・ジュノ監督(脚本、製作を兼務)が、この度制作したハリウッド映画は…

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン マイキー・マディソン【ギャラリー/出演作一覧】

1999年3月25日生まれ。アメリカ出身。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太 BAUS 映画から船出した映画館【レビュー】

2014年、東京都、吉祥寺の映画館“バウスシアター”が閉館となりました。本作は、この映画館を親の代から運営してきた本田拓夫著…

映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー 白雪姫【レビュー】

1937年に製作されたディズニーの『白雪姫』は、世界初のカラー長編アニメーションであり、ウォルト・ディズニー・スタジオの原点とされています…

映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』 ニンジャバットマン対ヤクザリーグ【レビュー】

バットマン・ファミリーが戦国時代の歴史改変を食い止めた『ニンジャバットマン』の続編…

【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性 自分を知ることからすべてが始まる【映画でSEL】

SEL(社会性と情動の学習)で伸ばそうとする社会的能力の一つに「自己への気づき」があります。他者を知るにも、共感するにも、自己をコントロールするにも、そもそも自分のことを全く理解していなければ始まりません。

映画『悪い夏』北村匠海 悪い夏【レビュー】

染井為人著の原作小説は、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しています。映画化の際には…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 Before 高校デビュー編【レビュー】

本作は、縦スクロール形式のデジタルコミック“webtoon”で人気を博したyaongyi(ヤオンイ)作の同名コミックを原作としています…

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ 教皇選挙【レビュー】

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  2. 映画『風たちの学校』
  3. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿

REVIEW

  1. 映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン
  2. 映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太
  3. 映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー
  4. 映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』
  5. 映画『悪い夏』北村匠海

PRESENT

  1. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
  2. 映画『私の親愛なるフーバオ』
  3. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
PAGE TOP