REVIEW

HERE 時を越えて【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト

REVIEW

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています。中でもトム・ハンクスとタッグを組んだ『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)や『キャスト・アウェイ』(2000)、『ポーラー・エクスプレス』(2004)等の作品において、私達観客は印象に残る挑戦を目撃してきました。そして、本作では、ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス、ロビン・ライト、脚本家のエリック・ロスと、『フォレスト・ガンプ/一期一会』で組んだ4人が再集結。彼等は本作で再び新しい手法にチャレンジしています。

映画『HERE 時を越えて』ミシェル・ドッカリー

まず驚くべきは、ほぼ全部のシーンで定点撮影を貫いていることです。本作では、屋外が見える大きな窓のある家のリビングを舞台に、時代を経た家族の物語が展開されていきます。さらに、描く時代の幅も広く、人間がまだ文明を築いていない太古の昔から現代までを描いています。だから、家のリビングが舞台と前述したものの、厳密にはまだ家が建っていない時代も同じ場所から移した風景のもと、物語が展開します。

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト

次に驚かされるのは、トム・ハンクス、ロビン・ライトが10代から70代までを演じており、10代なら10代の見た目に若返っている点です。この撮影には、最新のVFXが使われているそうで、「ハンクスとライトはVFXを加えた映像を現場で見ながら、シーンごとの年齢に合うように瞬時に動きを調整するという、キャリア初の革新的な演技を成功させゼメキスを歓喜させた」そうです。また、「シームレスで説得力のある老化の感覚を出すため、製作陣はVFXスタジオのMetaphysicと協力し、ハンクスや他のキャストの何千枚ものアーカイブ画像を使用し、俳優のデジタルメイクを作成した」といいます(映画公式資料)。その精度の高さは本編を観るとすぐにわかります。その他、好演が印象的なのはポール・ベタニーです。彼が演じるキャラクターは、ちょいちょいブラックユーモアで笑わせてくれますよ。

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト

本作では、同じ場所から眺めた家族の歴史、人類の歴史、地球の歴史が描かれています。同じ場所に建つその家は、人を繋ぎ止める一方で、人を縛っているともいえます。家は家族の象徴であり、家に家族の歴史は刻まれます。本作を観ると、改めて人類にとっての“家”とは何かを考えさせられます。

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト

また、ずっと同じ視点で家の一室から外に向けて撮られている点は、家族という小さな社会から、外の大きな社会への繋がりを示すメタファーとも受け取れます。最後だけ別の視点に切り替わる点で考えれば、家は家族の歴史、人類の歴史を静かに見守る存在であり、社会から見ても家族はその時代を象徴する姿なのかなという解釈が浮かびました。皆さんも、それぞれに解釈を楽しんでください。

デート向き映画判定

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト

長きに渡り、さまざまな家族の姿を映し出していて、中でもトム・ハンクス、ロビン・ライトが演じる夫婦を中心として家族の物語が展開します。10代から70代という年月を通して、夫婦が体験する幸も不幸も観ることができるので、カップルで観ると、自分達の過去を振り返ったり、未来を想像したりするきっかけとなるでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト

家族の中の子ども達の存在も印象的に描かれているので、大人とは違った観方で楽しめると思います。ただ、見た目に派手な出来事が起こる作品ではなく、日常を淡々と映し出した作品なので、映画を観慣れておらず受け身で観ると、キョトンとして終わる可能性は否めません。見た目の出来事の派手さではなく、人間の心の動きにフォーカスして観て欲しいので、ある程度映画鑑賞に慣れてから観ることをオススメします。

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト

『HERE 時を越えて』
2025年4月4日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年4月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 【映画学ゼミ第2回】「性格特性と映画の好みの関連」「伏線回収と解釈の実践1」参加者募集!

【映画学ゼミ】第2回概要映画学ゼミ第2回もNとSでテーマを変えて実施します。どちらかのみ参…

映画『女性の休日』 女性の休日【レビュー】

ちょうど今から50年前の今日、1975年10月24日に…

映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗 爆弾【レビュー】

呉勝浩による同名ベストセラー小説を原作として映画化された本作は、知らぬ間に…

海外ドラマ『エイリアン:アース』海外ドラマ『エイリアン:アース』 シドニー・チャンドラー【ギャラリー/出演作一覧】

1996年2月13日生まれ。アメリカ出身。

映画『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』マリアンヌ・ジャン=バプティスト/ミシェル・オースティン ハード・トゥルース 母の日に願うこと【レビュー】

現代のロンドンを繰り広げられる本作は、対照的な性格を持つ姉妹のそれぞれの日常を…

映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人 ミーツ・ザ・ワールド【レビュー】

この町で出会った、アニメにハマっている腐女子の由嘉里(杉咲花)、キャバ嬢のライ(南琴奈)、既婚の No.1 ホスト、アサヒ(板垣李光人)は、それぞれどこか孤独感、空虚感を…

韓国ドラマ『TWELVE トゥエルブ』パク・ヒョンシク パク・ヒョンシク【ギャラリー/出演作一覧】

1991年11月16日生まれ。韓国出身。

『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』豆原一成さん、八木莉可子さんインタビュー 『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』豆原一成さん、八木莉可子さんインタビュー

今回は『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』で恋人役として共演された豆原一成さんと八木莉可子さんにインタビューをさせていただきました。

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「なんとなく孤独、これでいいの?」

今回も、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談を2件取り上げました。最後に、2025年10月劇場公開作品の中で特にオススメの3作品を紹介しています。

映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ ローズ家~崖っぷちの夫婦~【レビュー】

昔、同じような設定の映画があった気がすると思っていたら、やはり元ネタは…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 【映画学ゼミ第2回】「性格特性と映画の好みの関連」「伏線回収と解釈の実践1」参加者募集!

【映画学ゼミ】第2回概要映画学ゼミ第2回もNとSでテーマを変えて実施します。どちらかのみ参…

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion ファイナンシャルプランナーから学ぶ【明るい未来のための将来設計とお金の基本講座】(スイーツとお飲み物付)女性限定ご招待!

本セミナーでは、「NISA・iDeCoなどの資産形成」「子どもの教育資金」「将来受け取る年金」「住宅購入・住宅ローン」「保険」など、将来に役立つお金の知識や情報、仕組みやルールについて、ファイナンシャルプランナーの先生が初めての方でもわかりやすく優しく教えてくれます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion

REVIEW

  1. 映画『女性の休日』
  2. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  3. 映画『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』マリアンヌ・ジャン=バプティスト/ミシェル・オースティン
  4. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
  5. 映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ

PRESENT

  1. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  2. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion
  3. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
PAGE TOP