REVIEW

コメント部隊【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『コメント部隊』ソン・ソック

REVIEW

情報社会になった現代、大きな組織による世論操作が行われているのではないかと疑っている方は少なくないでしょう。本作は、私達が普段からいかに些細で真偽不明な情報に踊らされているかを物語っており、世論操作がいとも簡単にできてしまう世の中の仕組みを提示しています。

主人公は大企業の不正に関するスキャンダルを報じたものの、誤報であるとされ停職処分になった新聞記者のイム・サンジン(ソン・ソック)。イムはなかなか復職できずにいたなか、以前イムが記事に書いた大企業のスキャンダルは誤報ではないと証明できるという者から連絡を受けます。そして、その人物に会いに行くと、彼は自分は世論操作を行う集団に属しているといい、これまで自分達が行ったいくつかの世論操作の裏側を明かしていきます。

映画『コメント部隊』ソン・ソック

本作では、世の中に溢れている情報には真実と嘘が両方含まれているからこそ人は騙されてしまうという仕組みについて、1つの考え方が示されています。世論操作の例としては、ステルスマーケティングから、特定の人物に対する承認欲求の刺激や誹謗中傷等によって間接的に大きな組織の目的を達成するような例まで挙げられています。そうした例を観ていると、一見無関係な事柄が裏で結びついていることも想像させられます。なので、私達は気をつけていても無意識に世論操作に巻き込まれている可能性があると気づかされます。

映画『コメント部隊』ソン・ソック

映画制作者達の意図の有無は不明ながら、実は本作の冒頭と最後に、本作に関する真逆の説明がされています。私達が普段映画を観ている際、その映画が実話に基づいているのか、フィクションなのかというアナウンスは、よく見かけます。本作の冒頭では実話に基づく部分があると説明されているものの、最後にはフィクションですというクレジットが出ます。「結局、どっちやねん!」とツッコミを入れたくなるところでありつつも、本作で一連の内容を観た後では、最終的にどこが嘘でどこが本当かは受け取る側の私達自身が考えて決めなければいけないということなのかもしれません(ただし、本作に限らず実話に基づく映画すべてにおいて、必ず想像の範囲で作られた部分は含まれます)。

映画『コメント部隊』キム・ソンチョル

とにかく、恐ろしい時代になったと実感する内容です。ただ、絶望だけではなく、使いようによっては大きな力にねじ伏せられてきた悪事に、いち個人でも対抗できる時代になったとも感じる内容です。まさにメディアリテラシーの重要性を伝える作品となっているので、多くの方に観て欲しいです。

デート向き映画判定

映画『コメント部隊』ソン・ソック

私達は日々さまざまな情報にさらさており、買い物はもちろん、深いところでいえば思想まで影響を受けている可能性があります。たかが情報とはいえない時代になってきているので、お互いに情報の取扱いに意識を高めておく機会があると良いのではないでしょうか。本作はそんなきっかけとなる内容です。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『コメント部隊』キム・ソンチョル/キム・ドンフィ/ホン・ギョン

本作を観ると、情報が持つ力がいかに大きいかがわかります。生まれた時から情報が溢れかえる状況にさらされている皆さんにとって、本作はどう見えるか聞いてみたいところです。そういう時代に生まれた皆さんの世代特有の能力があるのかもしれない一方で、これが当たり前だからこそ知らぬ間にハマっている罠もありえます。本作を観て、改めて自分達が置かれた状況を俯瞰してみてください。

映画『コメント部隊』ソン・ソック/キム・ソンチョル/キム・ドンフィ/ホン・ギョン

『コメント部隊』
2025年2月14日より全国公開
クロックワークス
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2024 ACEMAKER MOVIEWORKS & KC VENTURES & CINEMATIC MOMENT All Rights Reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ファンファーレ!ふたつの音』エマニュエル・クールコル監督インタビュー 『ファンファーレ!ふたつの音』エマニュエル・クールコル監督インタビュー

フランスで3週連続NO.1(仏映画興収/実写映画において)を獲得し、260万人動員の大ヒットを記録した話題作『ファンファーレ!ふたつの音』。今回は本作のエマニュエル・クールコル監督にインタビューさせていただきました。

映画『ひゃくえむ。』 ひゃくえむ。【レビュー】

魚豊著の『チ。 ―地球の運動について―』がすごく好きなので、絶対に本作も…

映画『お嬢と番犬くん』櫻井海音 櫻井海音【ギャラリー/出演作一覧】

2001年4月13日生まれ。東京都出身。

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ セレステ・ダッラ・ポルタ【ギャラリー/出演作一覧】

1997年12月24日生まれ。イタリア出身。

映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ ブロークン 復讐者の夜【レビュー】

『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』などを手掛けたサナイピクチャーズが贈る本作は…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『ひゃくえむ。』
  2. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  3. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  4. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流
  5. 映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP