REVIEW

今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/河合優実

REVIEW

いつもの通り、前情報を極力入れずに本編を観て、特に独特なセリフと掛け合いが印象に残りました。観終わってから、映画公式資料を見てみると、原作者はジャルジャルの福徳秀介氏と知って、作家としての才能に驚くとともに、漫才やコントで観ているジャルジャルの独特な世界観と、本作に漂う個性が結びつくところがあり、妙に納得がいきました(笑)。お笑い芸人さんの中に作家としても活躍されている方が複数いらっしゃる背景には、ストーリーテラーとしてのセンスがあるからなのだなと改めて感じます。

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久

物語の舞台は関西で、福徳氏は映画化にあたり、「キャストさんが大阪弁を話せることと、メインとなる3人(小西、桜田、さっちゃん)のそれぞれの長ゼリフは活かしてほしいってことだけは言わせてもらいました」と述べています(映画公式資料)。小西の設定は大阪出身ではなくなり大阪弁ではないものの、3人の長ゼリフのシーンはそれぞれ印象的に描かれています。

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/河合優実

私が個人的に一番気に入ったのは、さっちゃん(伊東蒼)の長ゼリフのシーンです。すごく切ないシーンでありながら、すごくおもしろい。おもしろいからこそ、切ない。その繰り返しです。セリフは本当にすごく長いし、話している間に揺れ動く心情を表現するのはすごく高度な演技力が必要だったと思います。映画公式資料の大九監督のコメントによると、該当シーンは一気にノーカットで撮ったそうですが、伊東蒼は見事に演じています。

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/伊東蒼

映画公式資料によると、大九監督は原作を読んで、小西とさっちゃんにそれぞれ思うところがあり、さっちゃんの描写は原作よりも多めに入れたそうです。ネタバレになりそうなので書けませんが、大九監督が原作を読んで感じた思いがぶつけられている要素も随所に反映されているようなので、もしパンフレットにも書かれていたら、それを読んだ上で再度観ると違った味も楽しめそうです(笑)。

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』河合優実

本作では、福徳氏の母校、関西大学が全面協力し、キャンパス内外の風景が頻繁に映ります。主人公の小西(萩原利久)と彼の学内唯一の友人、山根(黒崎煌代)や、桜田(河合優実)は大学生で、大学生が別の大学生を観て感じている本音を吐露するシーンがまた笑えます。辛辣さの中に劣等感やいろいろな感情が複雑に入り交じっていて、とても生々しいんですよね。でも、ちょっと俯瞰できている自分もいるから何だか可笑しいんです。そんなところにも、お笑いのセンスが感じられます。

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久

ラブストーリーでありつつ、友情物語でありつつ、成長物語である本作。福徳氏が作った世界観に若手実力派俳優達が見事にハマり、大九監督が見事に料理していています。ぜひ、この世界観に浸ってください。

デート向き映画判定

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/河合優実

良い意味で感情を振り回されるので、観終わった後の反応は未知数です(笑)。でも、一周回ってホッコリできて、人生いろいろあるけど頑張ろうと思えるストーリーなので、ある程度お互いの映画の好みがわかっている者同士ならデートで観るのも良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/黒崎煌代

大学生が主人公なので、特に年頃が近いティーンの皆さんは親近感を持って観られるのではないでしょうか。若い頃は特に、恋愛や友達関係で、浮いたり沈んだりでジェットコースターのような日々に疲れることもあるかもしれません。でも、本作は前に進む勇気をもらえるストーリーとなっています。

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』萩原利久/河合優実/伊東蒼/黒崎煌代/古田新太

『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
2025年4月25日より全国公開
日活
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会

TEXT by Myson


関連作

「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」福徳秀介 著/小学館
Amazonで書籍を購入する

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年4月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ モンテ・クリスト伯【レビュー】

アレクサンドル・デュマ・ペールの傑作小説「巌窟王」を映画化した本作は…

映画『秒速5センチメートル』松村北斗 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年10月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年10月】のアクセスランキングを発表!

映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一 旅と日々【レビュー】

つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』などを手がけた三宅唱監督が映画化…

映画『風のマジム』肥後克広 肥後克広【ギャラリー/出演作一覧】

1963年3月15日生まれ。沖縄県出身。

【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】羽佐間道夫、山寺宏一ほか 人気声優達が真剣勝負!会場が終始笑いに包まれた【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】本番リポート

発起人である羽佐間道夫のもと、山寺宏一、林原めぐみほか錚々たる人気声優達がズラリと顔を揃えたライブは今年で20周年を迎えました…

映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』ホン・サビン/シン・ジュヒョブ あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。【レビュー】

物語の始まりは、1995年の韓国、テグ。学校でいじめられていたドンジュン…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  2. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー
  3. 映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング
  4. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  5. 映画『秒速5センチメートル』松村北斗

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP