REVIEW
PTSDは日本語で「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。“Post Traumatic Stress Disorder”の頭文字をとったPTSDという言葉は、ニュースなどで聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。映画公式資料によると、「PTSD:ベトナム戦争帰還兵の精神的後遺症への対応をきっかけに定義された概念」とされています。本作は、ベトナム戦争を経験した元兵士で帰還後もPTSDに苦しめられた、アレン・ネルソンの実話を基にした作品です。

塚本晋也監督は、「『野火』を作るにあたり、多くの戦争資料を読む中で、「加害者の目線で描くことの大切さ」を痛感し、(中略)2018年1月、それを具体化できる」本作の原作を基にプロットを書き始めたそうです。単独製作をした木下グループは、企画承認にあたり「主要登場人物には、世界中の誰もが知る俳優をキャスティングすること」という条件を出していたそうです。(映画公式資料)

そんななか、キャスティングされた、ロドニー・ヒックス、ジェフリー・ラッシュ、マーク・マーフィー等の演技は見事です。中でも印象的だったのは、カウンセリングのシーンです。ヒックスが演じるアレン・ネルソンと、ジェフリー・ラッシュが演じるニール・ダニエルズ医師の対話は、観客の心を揺さぶります。

ダニエルズ医師は、ネルソンに何度もなぜ人を殺したのかと尋ねるんです。当然ネルソンは戦争だったからと答えます。けれど、ダニエルズ医師は別の答えを引き出そうとしていることがわかります。ネルソンがどう答えるに至ったのかは、ぜひ本作を観て確かめてください。

本作は、戦争の残酷さを描いているだけではありません。時代を問わず、戦争が起こっていない社会に存在する“火種”に目を向ける問いを私達に投げかけてきます。そうした現実に気づかされるとなおさら、戦争の無意味さや、社会の歪みに翻弄されているのはいつも弱者であることを痛感します。

アレン・ネルソン氏が苦しみを抱えつつも、生前に行っていた活動の意義深さ、そして、ネルソン氏の遺志を絶やすまいとする本作の意義深さを感じます。ぜひ、多くの方に観て欲しい1作です。
デート向き映画判定

アレン・ネルソン氏とともに、家族がどんな思いだったかも描かれています。パートナーとしてどう支えればよいのかは、妻の立場、そして子ども達の母の立場で、いろいろと本当に難しい状況だったとわかります。答えが見つかるわけではないとしても、パートナーと本作を一緒に観るだけでも、有意義な時間になると思います。
キッズ&ティーン向き映画判定

ネルソンが子どもの頃、若い頃、親世代になって以降のストーリーが描かれていると同時に、息子や娘、学校に訪れたネルソンの話を聞く子ども達も登場するので、皆さんも等身大で観られる部分があるでしょう。戦争でなくても、日常にある差別や暴力の根底に、どんな人間心理があるのかを知るきっかけになります。自分事として観てもらえると嬉しいです。

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』
2026年9月11日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ
公式サイト
©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA
TEXT by Myson
本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2026年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。





























