REVIEW

ロイヤルホテル【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック

REVIEW

アシスタント』のキティ・グリーン監督と、主演を務めたジュリア・ガーナーが再びタッグを組んだ本作は、2016年のドキュメンタリー映画“HotelCoolgardie(原題)”に登場するオーストラリア西部に実在する店がモデルとなっています。ハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)は、ワーキングホリデーの職場に、オーストラリアの田舎にあるロイヤルホテルという名のパブを選びます。でも、現地に着くなりオーナーのビル(ヒューゴ・ウィーヴィング)からは侮辱的な言葉を吐かれ、パブに来ている客もセクハラ発言ばかり。そんな状況で恐怖心を募らせるハンナと、気にせずに楽しもうとするリブの間に意見の相違ができ始めます。

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック

言葉だけでは言い表せない、こうした恐怖に満ちた状況は、女性の多くが経験したことがあるのではないでしょうか。本作はハンナの目線を軸に緊張感の高い状況をリアルに映し出しています。雇われている店員という立場、異国の地、まるで挨拶のようにあちらこちらからセクハラ発言が飛び交い、腕力では勝てない相手に囲まれて、どんなに恐ろしいことか。おまけに唯一の味方であるはずの親友には危機感が足りないのがさらに恐ろしいです。「女は愛嬌」という言葉がありますが、こうした状況で身を守るには、無愛想で不機嫌な態度を取るしかありません。でも、そういう態度を取ることで、さらに相手の好奇心を煽る恐れがあるのもなお怖いです。こうした状況は、万国共通、田舎も都会も関係なく、私達の身近にあります。

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック

この生々しい怖さと、危機的な状況に陥りそうな火種があちこちにある現実を表現できたのは、ドキュメンタリー映画を得意とするキティ・グリーン監督の手腕と、俳優陣の演技力の賜物といえます。この怖さが広く理解されるなら、社会はもう少し生きやすくなるのかもしれない。そんなことを感じさせる作品です。

デート向き映画判定

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック

デートのムードが盛り上がるどころではないストーリーながら、一緒に観て感想を聞けば、パートナーの感覚を知るきっかけにできるかもしれません。一緒にどこかに出かけたり、店に入った時、居心地の悪さの感覚があまりに違うと、この先が思いやられます。そして、本作の感想から、感覚の大きな違いを感じたら、相性が合っているのかどうか一度考え直したほうが良いかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/トビー・ウォレス

特に皆さんの年頃では、好奇心や楽しみたい気持ち、友達とノリを合わせることが重視されるかもしれません。若いうちにいろいろ経験しようとしているなら、悲観的過ぎても良くない場合ももちろんあります。ただ、それとは違う角度で危機感が必要な場面はあります。残念ながら、世の中には悪い人もいるし、こちらの拒否が伝わらずにおもしろがって余計に執拗に関わってこようとする人もいることが、本作を観るとわかると思います。ハンナの態度にはお手本になる部分もあるでしょう。

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック

『ロイヤルホテル』
2024年7月26日より全国順次公開
アンプラグド
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一 イクサガミ【レビュー】

今村翔吾著のベストセラー「イクサガミ」シリーズを原作とする本シリーズでは、岡田准一が主演、プロデューサー、アクションプランナー、藤井道人、山口健人、山本透が監督と脚本を担当…

映画『TOKYOタクシー』蒼井優 蒼井優【ギャラリー/出演作一覧】

1985年8月17日生まれ。福岡県出身。

映画『バーフバリ エピック4K』来日舞台挨拶イベント、プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ(プロデューサー) プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ来日!『バーフバリ エピック4K』には追加シーンも

2025年に劇場公開10周年を迎える大ヒット作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ2 王の凱旋』を一つの作品として再編集し、壮大な物語を4K映像で体験できる『バーフバリ エピック4K』の日本公開を目前にして、バーフバリ役のプラバースと、プロデューサーのショーブ・ヤーララガッダが来日しました。

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 楓【レビュー】

残酷過ぎて、切な過ぎて、優し過ぎて、どうしましょ(笑)。ネタバレを避けると、ほぼ何も書けませんが…

【東京コミコン2025】オープニング:イライジャ・ウッド、カール・アーバン、リー・トンプソン、トム・ウィルソン、クローディア・ウエルズ、ダニエル・ローガン、ジョン・バーンサル、クリスティーナ・リッチ、イヴァナ・リンチ、ノーマン・リーダス、ショーン・パトリック・フラナリー、ジャック・クエイド、マッツ・ミケルセン、浅野忠信、ピルウ・アスベック、セバスチャン・スタン、ジム・リー、C.B.セブルスキー、フランク・ミラー、クリストファー・ロイド、中丸雄一(MC)、伊織もえ(PR大使)、山本耕史(アンバサダー) 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』一行や人気アメコミ出演者達が勢揃い!【東京コミコン2025】オープニングセレモニー

年末恒例行事となった東京コミコンのオープニングセレモニーを取材してきました。今年は過去最高といえるのではないかという数のスター達が来日してくれました。

映画『ズートピア2』 ズートピア2【レビュー】

さまざまな動物達が人間と同じように暮らすズートピアを舞台にした本シリーズは…

映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル エディントンへようこそ【レビュー】

アリ・アスター監督とホアキン・フェニックスの2度目のタッグが実現した本作は、メディアの情報に翻弄される人々の様子を…

映画『愚か者の身分』林裕太 林裕太【ギャラリー/出演作一覧】

2000年11月2日生まれ。東京都出身。

映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン ペンギン・レッスン【レビュー】

『ペンギン・レッスン』というタイトルが醸し出す世界観、スティーヴ・クーガンやジョナサン・プライスといった名優がメインキャストに名を連ねていることからして…

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一
  2. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  3. 映画『ズートピア2』
  4. 映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル
  5. 映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP