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わたしは最悪。【レビュー】

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映画『わたしは最悪。』レナーテ・レインスヴェ

『わたしは最悪。』というタイトルからして「私も主人公と同じです」と堂々といっても良いものかというところはありつつ(笑)、自分に正直に生きている人は彼女にめちゃめちゃ共感するのではないでしょうか。観る人によっては主人公のユリヤは身勝手な女性だと思うかもしれません。でも、しっくりこないこと、しっくりこない相手との関係があったとして、それは自分が未熟なせいなのか、本当に相性が悪いのか判断が難しいことは多々あります。そういうときに自分の直感を信じて動くのか、ずっと我慢と妥協をして生きていくのかの違いではないでしょうか。もちろん忍耐力がないだけの場合もあるので、判断が正しかったかどうかはわからないままということもあるでしょう。ただ、本作はユリヤと彼女に関わる人達のその後も描いていて、人の幸せは本人だけの選択からできているのではなく、関わる人の選択との化学反応で成り立つものだということがわかります。本作の魅力はまず、主人公が自分に正直である点だと思います。
もう一つの魅力は、人間同士の距離感が綿密に描かれていること。同じ2人の距離感を描く上でも、恋愛関係での距離感と1人の人間同士の距離感とで異なっています。恋愛関係でなくても、私達は生きている間、同じ人とずっと同じ距離感でいることはほぼありません。日々の出来事で微妙に波が出てくることもあるでしょう。だからこそ、本作に描かれている人間関係の変化がとても生々しく感じて、キャラクターの誰かしらに感情移入しやすいのだと思います。ラブストーリーとして観ても、1人の女性の成長物語としても楽しめる作品です。女子の皆さんには特にオススメですよ。

デート向き映画判定
映画『わたしは最悪。』レナーテ・レインスヴェ/アンデルシュ・ダニエルセン・リー

恋愛の生々しい面を描いているので、1人で観るか、仲の良い友達と観ることをオススメします。これまでの恋愛を振り返って話したくなる部分もあるので、恋愛のモヤモヤを抱えたままの方は恋愛話ができる友達を誘って発散すると良いでしょう。自分のキャリアについても振り返るきっかけになるので、内省したい方は1人でじっくり観てください。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『わたしは最悪。』レナーテ・レインスヴェ

15歳以上のティーンは本作を観ることができます。すごくロマンチックなシーンもあるなので、「この人とくっつけばいいのに!」なんて盛り上がるところもありますが、生々しい現実を叩き付けられる展開もあって、いろいろと勉強になると思います(笑)。ただ、本作を観て頭でっかちにならずに主人公のようにその時その時自分に正直に生きれば良いのではないでしょうか。そんな意味でも一つの価値観として参考にして欲しい1作です。

映画『わたしは最悪。』レナーテ・レインスヴェ

『わたしは最悪。』
2022年7月1日より全国順次公開
R-15+
ギャガ
公式サイト

© 2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VÄST – SNOWGLOBE – B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

TEXT by Myson

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