REVIEW

ルッツ 海に生きる【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ルッツ 海に生きる』ジェスマーク・シクルーナ

タイトルにある“ルッツ”は、主人公が祖父から代々受け継いで使っている小さな木製の漁船のことです。主人公のジェスマークはこのルッツに乗って漁師をしていますが、売れる魚はあまり捕れません。さらに競りでは大きな組織が幅を効かせていて不利な状況に追いやられています。なかなか漁師だけでは家族を養うのが難しい状況にあるなか、生まれたばかりの赤ん坊は発育不良で治療費もかかり、妻デニスの不安も募るばかり。そういったことが1度にプレッシャーとなってジェスマークにのしかかります。そんなとき、ある現場を目撃したジェスマークは、“禁断の果実”に手を出してしまいます。
この一連の過程を観ているだけでも、この世は弱肉強食で「正直者がバカをみる」という状況に胸が痛くなります。だからジェスマークに感情移入すればするほど、自分ならどうするのかと人間性を問われている気がしてきます。また、世界中がコロナ禍で生活に苦しみ、仕事を選んではいられない状況に陥っている人が多いことを思うと、本作のストーリーは余計に誰にとっても身近に感じられるはずです。ジェスマークは息子であり、親でもあり、夫であるという立場だからこそ、あらゆる選択に迫られます。私達は日々小さな選択を積み重ねていますが、追い込まれている時の選択は重みが異なります。一つひとつの選択が運命を大きく変えるような威力があり、その怖さを実感させられます。厳しい現実を突きつける内容なので、観る方によっては身につまされるかもしれません。結末もどう捉えるかは解釈が分かれそうですが、どういう気持ちになるかによって、自分の中に残っている希望を測れるのではないでしょうか。

デート向き映画判定
映画『ルッツ 海に生きる』ジェスマーク・シクルーナ/ミケーラ・ファルジア

カップルとしての現実を突きつける内容でもあり、ロマンチックなムードにはなりません。ただ、ずっと連れ添いたい相手となら一緒に観るのもアリでしょう。相手が大事で相手の夢や思いを尊重したいからといって、そうしていられないこともあります。そういうときにどうすべきか、客観視できるストーリーです。単なるカップルから一生のパートナーになりたいなら、避けて通れない話が描かれているので、本作を機に2人で苦難を乗り越えられるかシミュレーションしてみても良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ルッツ 海に生きる』ジェスマーク・シクルーナ

キッズにはまだピンとこない内容だと思いますが、ティーンになると親の状況も何となく見えてくるので、大人の葛藤や苦悩を想像できるかもしれません。どんな仕事も安定した収入が得られるわけではないということ、時代の変化によって昔のやり方が通じなくなる仕事があることなど、社会の仕組みも知ることができます。興味を持ったらぜひ観てみてください。

映画『ルッツ 海に生きる』ジェスマーク・シクルーナ/ミケーラ・ファルジア

『ルッツ 海に生きる』
2022年6月24日より全国順次公開
アーク・フィルムズ 、活弁シネマ倶楽部
公式サイト

© 2021 Luzzu Ltd

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ウーナ・チャップリン アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ【レビュー】

REVIEWシリーズ3作目となる本作でも、まず映像美と迫力に圧倒されます。物理的に目の前で…

映画『新解釈・幕末伝』ムロツヨシ/佐藤二朗 新解釈・幕末伝【レビュー】

幕末を描いた本作は、“新解釈”とタイトルにあるように、ユニークな解釈で描かれて…

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』来日ジャパンプレミア、ジェームズ・キャメロン監督、山崎貴監督、宮世琉弥 お互いの才能を讃え合うジェームズ・キャメロン監督と山崎貴監督、若者代表、宮世琉弥も感動『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』来日ジャパンプレミア

最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のワールドツアーの一環として、ジェームズ・キャメロン監督が3年ぶりに来日。山崎貴監督と宮世琉弥も会場に駆けつけました。

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』八木莉可子 八木莉可子【ギャラリー/出演作一覧】

2001年7月7日生まれ。滋賀県出身。

映画『グッドワン』リリー・コリアス 『グッドワン』トーク付きプレミア試写会 10組20名様ご招待

映画『グッドワン』トーク付きプレミア試写会 10組20名様ご招待

映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』コリン・ファレル/マーゴット・ロビー ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行【レビュー】

「人生をやり直せるドア」が登場する点と、コリン・ファレルとマーゴット・ロビーが向かい合うキービジュアルから、恋愛をやり直すストーリーかと思いきや…

映画『サリー』エスター・リウ 『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン THE END(ジ・エンド)【レビュー】

REVIEWいつも通り観賞前にほぼ何も情報を入れず、登場人物はいつの時代にどこに住んでいる…

映画『シェルビー・オークス』 シェルビー・オークス【レビュー】

かつて繁栄しながらも今は廃墟と化しているシェルビー・オークスという町で…

映画『ナイトフラワー』渋谷龍太 渋谷龍太【ギャラリー/出演作一覧】

1987年5月27日生まれ。東京都出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ウーナ・チャップリン
  2. 映画『新解釈・幕末伝』ムロツヨシ/佐藤二朗
  3. 映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』コリン・ファレル/マーゴット・ロビー
  4. 映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン
  5. 映画『シェルビー・オークス』

PRESENT

  1. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
  2. 映画『サリー』エスター・リウ
  3. 映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ
PAGE TOP