取材&インタビュー

『山女』山田杏奈さんインタビュー

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映画『山女』山田杏奈さんインタビュー

柳田國男による「遠野物語」から着想を得て、オリジナルストーリーとして作られた映画『山女』。今回は本作で、過酷な運命に翻弄されながらも、たくましく生きる主人公の凛を演じた山田杏奈さんにインタビューさせていただきました。18世紀の村で暮らす凛を演じる上で準備されたことや、自分らしく生きていく上で山田さんご自身が心掛けていることについて直撃しました。

<PROFILE>
山田杏奈(やまだ あんな):凛 役
2001年1月8日生まれ。埼玉県出身。2011年に「ちゃおガール☆2011 オーディション」でグランプリを受賞し、デビューを果たす。2018年、『ミスミソウ』で映画初主演を飾る。2019年、『小さな恋のうた』で第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。近年の主なドラマ出演作に、『未来への10カウント』『17才の帝国』『新・信⻑公記〜クラスメイトは戦国武将〜』『早朝始発の殺風景』などがある。映画出演作では『五億円のじんせい』『哀愁しんでれら』『名も無き世界のエンドロール』『樹海村』『ひらいて』『彼女が好きなものは』などがある。また舞台“夏の砂の上”では舞台初出演を果たした。

※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。

凛のへこたれないところは私と似ていると思います

映画『山女』山田杏奈

シャミ:
18 世紀末の村が舞台となっており、そこで暮らす凛の生活や運命に驚きました。山田さんが最初に脚本を読んだ時は、本作からどんな印象を受けましたか?

山田杏奈さん:
日本の昔話みたいな世界観だなというのが第一印象でした。18世紀の冷害に苦しむ人達や、山岳信仰など、今なら名前を付けて解明されている事象でも当時は実態がわからず、何を頼りに生きていたのかとか、山男(森山未來)という得体の知れない存在などを題材として扱っている点がすごくおもしろいと思いました。

シャミ:
現代とは全く異なる生活が映し出されていましたね。凛は村で暮らしていて、方言を話すキャラクターでしたが、凛役に向けて事前に準備されたことはありますか?

山田杏奈さん:
方言の練習と、あとは藁を家に持ち帰ってわらじを編む練習をしました。そうすると家の中が藁だらけになってしまい、毎回練習の後に掃除機をかけていました(笑)。

映画『山女』山田杏奈さんインタビュー

シャミ:
藁を編むシーンはとても自然だったので、たくさん練習されたんですね。

山田杏奈さん:
そうですね。本当に頑張りました。

記者A:
18世紀が舞台で、普段はなかなか演じることのない時代だと思うのですが、役作りはどのようにされましたか?

山田杏奈さん:
凛自身がどう生きてきたのかと考えることが、役作りをする上で1番大きい時間を占めていました。今では当たり前のことも当時はそうではなく、私だったら逃げ出したくなるような環境に凛がいると思いました。もし凛が逃げたとしてもどう逃げるのか、どこへ行くのかと考えていくと、私の想像を絶するような気持ちを凛は抱えていたんだろうなと思いました。そういったことを役作りとして考えていました。

映画『山女』山田杏奈

記者B:
今まで山田さんに透明感のあるイメージを持っていたのですが、今回はそれとは真逆のビジュアルでした。実際に演じてみていかがでしたか?

山田杏奈さん:
本当にドロドロでしたよね(笑)。メイクで黒く塗っていたのですが、最初は自分でも見慣れませんでした。でも、凛があれだけ働いていたら、日焼けもするし、手も汚れていくだろうなと思ったので、撮影当時は爪をあまり綺麗にし過ぎないようにしたり、リップクリームをなるべく塗らないようにして、髪の毛もかなりバサバサにしていました。そういったメイクや衣裳などの見た目は役作りの助けになりました。

シャミ:
凛とご自身とで似ているところや特に共感できたところはありますか?

山田杏奈さん:
凛のへこたれないところは私と似ていると思います。村を出て山に歩いていくシーンを撮った時に、監督から「凛が怒っている顔をしているのが印象的だった」「あの環境にいても凛が完全に可哀想に見えないところが良い」と言われたのですが、その怒りは完全に私の中から出たものなんです。実際にもしこんな状況になったらすごくイライラするだろうなと思い、私自身の負けず嫌いな部分が凛として出たと思います。

映画『山女』山田杏奈さんインタビュー

シャミ:
裸足になって山に入るシーンはとても印象に残っています。山に入って生きていくという凛の決意が表れているシーンだと思いました。

山田杏奈さん:
したたかというか、ちゃんと強いですよね。凛は生命力のあるたくましい人で、そこが凛の尊敬する部分であり、魅力的な部分だと感じました。

シャミ:
山田さんご自身がそういった凛の魅力を見事に体現されていたと思います。

山田杏奈さん:
ありがとうございます!

シャミ:
森山未來さんが演じた山男とのシーンもとても印象的でした。山男は一言も話さず、無表情のキャラクターで、凛とのシーンがほとんどでしたが、共演シーンに臨む上で、事前に監督や森山さんと話したことや、何か意識されたことなどはありますか?

映画『山女』森山未來

山田杏奈さん:
お芝居についてこうしましょうというお話はありませんでしたが、それよりも監督は佇まいを大事にされていました。森山さんが演じた山男については、最初「山男ってどういうこと?」と思いますよね。でも、山男としての森山さんと森の中で出会ったら、これが山男なんだと納得するしかないというか、それくらい説得力がありました。役としてその場にいるということはこういうことなのかと感じましたし、凛を演じる上でもすごく助けてもらいました。

記者A:
撮影で山男としての森山さんを目の前にした時はどんな印象でしたか?

山田杏奈さん:
森山さんは撮影中特殊メイクをされていて、山男としての森山さんを見ることが多かったので、逆に普段の森山さんを見た時は緊張してしまいました(笑)。山男は話さないし、凛も山男といる時はそんなに話しかけず、お互いに空気を感じ取り合うお芝居が多く、目を見つめるシーンも多かったのですが、その時は動物を見ているような感覚だったので、普段の森山さんと会うと違う人と話しているような気がしました(笑)。

一同:
ハハハハハ(笑)!

記者A:
山男といる時の凛の表情が村にいる時よりも穏やかに見えました。その辺りは監督の演出があったのか、ご自身で考えたのでしょうか?

映画『山女』山田杏奈/森山未來

山田杏奈さん:
自分でそうなったと思います。山では愛情をゆっくり感じる時間があり、凛は山に入って初めて自分の髪の毛をとかし、山男の髪をとかすシーンもありました。そういった自分にかける愛情や、誰かに愛情をかける時間が村にいた時はなかったと思うんです。そういう時間があるからこそ自分自身も知ることができ、すごく幸せだろうなと思って演じていました。

記者A:
今回の撮影で特に大変だったのはどのシーンでしょうか?

山田杏奈さん:
身体的にも感情的にも大変だったシーンは、凛が村に戻されそうになるシーンです。無我夢中で引っ張り合っていたので、気が付いたらアザができていました。それだけ集中していたシーンだったと思います。

映画『山女』山田杏奈さんインタビュー

シャミ:
山でのシーンが多くあり、神秘的な山の魅力もたくさん映し出されていました。山田さんが本作の撮影を経て感じた山の魅力はどんな点でしょうか?

山田杏奈さん:
山で撮影することは結構多いのですが、『樹海村』の時に苔(こけ)の美しさに気づき、今回の撮影の時もずっと苔を見ていました。倒れている木に生えている苔に水滴が付いていることがあり、そこに光が差すとすごく綺麗で、よく見ていました。

自分の好きな自分をきちんと考えて、そこは曲げないようにしています

映画『山女』山田杏奈

シャミ:
閉鎖的な村の生活が映し出され、凛の困難な人生が描かれている作品でしたが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

山田杏奈さん:
撮影裏はとても和やかな雰囲気でした。周りは大人の方が多く、森山さんとはお芝居のことよりも世間話をさせていただき、永瀬正敏さんもああいう父親の役でしたが、ご本人はすごく優しくて、写真を撮ってくださったこともありました。
大ベテランの方ばかりの現場で、皆さんの姿を見ていると、本当に自分の役割を100%理解して演じていらっしゃるんだなと感じました。撮影中は怖い表情をするシーンもありましたが、裏では皆さん本当に普通にお話されていて、素敵だなと思いましたし、プロだと感じました。

映画『山女』永瀬正敏

シャミ:
なるほど〜。本作は、自分らしく生きること、人間らしさとは何なのかというテーマも盛り込まれた作品でした。山田さんが普段自分らしく生きていく上で、何か心掛けていることはありますか?

山田杏奈さん:
私は人と出会うことで自分の価値観が揺らぎがちなタイプで、後々悩んだりすることも多くありました。なので、今は自分の好きな自分をきちんと考えて、そこは曲げないようにしています。自分の中だけですが、スタンスとしてこういう自分でいようと1個決めておこうと思い、今トライしています。

シャミ:
良い志ですね!では、山田さんご自身のお話も聞かせてください。2011年に「ちゃおガール☆2011 オーディション」でグランプリ受賞を経てデビューされていますが、最初に俳優やモデルのお仕事に興味を持ったのはいつ頃でしょうか?

映画『山女』山田杏奈さんインタビュー

山田杏奈さん:
オーディションに応募した時は、まだ子どもだったこともあり、どちらかというと賞品目的で、具体的に俳優やモデルの仕事をしたいとは思っていませんでした。でも、現場で少しずつお芝居をさせていただいたり、作品のオーディションに受かるようになってから、「私に演じて欲しいと思ってくれる方がいるんだ。そういう仕事なんだ」と感じ、芝居もより楽しくなり、仕事としてやっていきたいと思うようになりました。

シャミ:
やっていくうちに気持ちに変化があったんですね。何か具体的なきっかけなどがあったのでしょうか?

山田杏奈さん:
最初に嬉しいと感じたのは、15歳くらいの時に“城とドラゴン”というCMのオーディションを受けた時です。その時にカメラを見つめて歌うオーディションがあったのですが、そこで「目力があるね」と初めて言われて、自分にそういう持ち味があるんだと思いました。それからは自分の強みになるところは何だろうと考えるようになりました。

映画『山女』山田杏奈

シャミ:
子どもの頃からお仕事を続けていくなかで、ご自身の俳優という仕事に対する意識で何か変化したことはありますか?

山田杏奈さん:
実は仕事としてお芝居を始めてからもしばらくは将来の夢のところに俳優と書いていたんです。でも、今は「仕事は俳優です」と言えるくらいにはなれたと思うので、それはすごく良い変化だったと思います。

シャミ:
では最後の質問です。これまでで1番影響を受けた作品、もしくは俳優や監督など人物がいらっしゃったら教えてください。

映画『山女』山田杏奈さんインタビュー
ヘアメイク:田中陽子
スタイリスト:中井彩乃

山田杏奈さん:
高校生くらいの時に『オアシス』という韓国映画を薦められて観たのですが、出演されていた俳優さんの演技にすごく衝撃を受け、何度も観返しています。役者が演じているとは信じられないくらいリアルで、私もそういう俳優を目指したいと思いました。芝居に見えない芝居が究極だと思いますし、それはとても難しいことですが、私もそうなれたらと思います。

シャミ:
本日はありがとうございました!

2023年6月21日取材 PHOTO&TEXT by Shamy

映画『山女』山田杏奈

『山女』
6月30日ユーロスペース、シネスイッチ銀座
7月1日新宿K’s cinemaほか全国順次公開
監督:福永壮志
出演:山田杏奈/森山未來/二ノ宮隆太郎/三浦透子/山中崇/川瀬陽太/赤堀雅秋/白川和子/品川徹/でんでん/永瀬正敏
配給:アニモプロデュース

舞台は18世紀後半の東北。冷害に苦しむ村で、凛は父と弟と3人で暮らしていた。ある日、凛の父親が盗みを働いてしまい、凛は家を守るために父をかばい、自ら村を去ることを決める。山へと足を踏み入れた凛は、そこで伝説の存在として恐れられる山男と出会い…。

公式サイト

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©YAMAONNA FILM COMMITTEE

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