REVIEW

TOVE/トーベ

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『TOVE/トーベ』アルマ・ポウスティ

これはムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソンの物語です。私も小さい頃にテレビでムーミンを観ていましたが、あの可愛らしい物語の背景にこんな作者の物語があったとは驚きです。本作を観て、改めてムーミンがどんなストーリーだったか興味が湧きました。
観る前はポップな映画なのかと思いきや、軸はラブストーリーで、トーベの生き方も一見自由を謳歌しているようでいて、実は葛藤と苦悩に満ちているという点で意外性を楽しめます。トーベは画家としてキャリアをスタートさせ、有名な彫刻家の父とは良好な関係とは言えず、芸術家としての苦悩や恋愛での苦悩から生まれる彼女の心情がムーミンの物語にいくらか投影されていると思うと、ムーミンの物語自体をまた違った角度から楽しめそうです。
また、ムーミンがどんな道のりで多くの人々に愛されるようになったのかという経緯も知ることができ、ムーミンがさまざまな形で世に出されたことで、トーベ自身もさまざまな選択肢を得たと言える点に共感できます。一方で、自由な生き方を求めつつも、深い愛を抱いた瞬間から強く縛られて身動きが取れなくなるトーベの姿を観ていると、人間の不器用さがすごく伝わってきて、キュンと切なくなります。でも、最後には必死で自分の道を切り拓こうとし、あらゆる葛藤を乗り越えた彼女の姿に希望をもらえます。ムーミンは抜きにしても、自分らしい生き方とは何ぞやということを追究している物語という点で誰にでも共感できる内容だと思います。自分の意志は固くても周囲から認められずに気持ちが負けそうになっている方は特に観て欲しい物語です。

デート向き映画判定
映画『TOVE/トーベ』アルマ・ポウスティ

ヌードやラブシーンが何度か出てきますが、とても自然な感じで綺麗に撮っているので、それほど気まずさはないと思います。ただ、初デートだとさすがに恥ずかしいと思う方もいそうなので、自分達の感覚で大丈夫かどうか判断の上、誘うか決めてください。ラブストーリーとしては切ない部分が多いので、共感というよりは、胸が痛くなるかもしれませんが、逆に平和に交際できているカップルは自分達の関係の有り難みを自覚できるかもしれません(笑)。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『TOVE/トーベ』

ムーミンは子どもから大人まで人気があるので、ムーミンの作者の話と聞くと子どもが観てもOKかなと思われそうですが、かなり大人向けの内容です。ムーミンという作品が作者の人生にどんな影響を与えたのかというところはもちろん描かれていますが、あくまで主軸はトーベの心の動きやそれに伴う人間関係の変化などなので、せめて中学生くらいになってから観るほうが楽しめるのではないでしょうか。

映画『TOVE/トーベ』アルマ・ポウスティ

『TOVE/トーベ』
2021年10月1日より全国公開
クロックワークス
公式サイト

© 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『Mr.ノボカイン』ジャック・クエイド Mr.ノボカイン【レビュー】

痛みを感じない疾患を持つ主人公、ネイサン・カイン(ジャック・クエイド)は…

映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン 罪人たち【レビュー】

ライアン・クーグラー監督と、マイケル・B・ジョーダンの名コンビが贈る本作は、まず設定がとても…

映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム おばあちゃんと僕の約束【レビュー】

『バッド・ジーニアス危険な天才たち』など数々の話題作を放ち、タイで勢いのあるスタジオとして注目を浴びるGDHが手がけた本作は…

映画『異端者の家』ソフィー・サッチャー ソフィー・サッチャー【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月18日生まれ。アメリカ、シカゴ出身。

映画『リライト』池田エライザ リライト【レビュー】

法条遥による同名小説を映画化した本作は、松居大悟監督とヨーロッパ企画の代表である上田誠が初タッグを組んだ作品です。“時間もの”作品で…

映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット 親友らしい態度とは?『親友かよ』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は『親友かよ』を取り上げ、親友らしい態度とは何かを考えます。

映画『サブスタンス』マーガレット・クアリー マーガレット・クアリー【ギャラリー/出演作一覧】

1994年10月23日生まれ。アメリカ出身。

映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李 フロントライン【レビュー】

2020年1月20日に横浜港を出港した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号では、その後、香港で下船した乗客が新型コロナウイルス感染症に罹患していることがわかり…

映画『プレデター:最凶頂上決戦』 プレデター:最凶頂上決戦【レビュー】

アニメーションとはいえ、さすが“プレデター”シリーズとあって、描写が激しく…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』綱啓永 綱啓永【ギャラリー/出演作一覧】

1998年12月24日生まれ。千葉県出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット
  2. 映画『年少日記』
  3. 映画『か「」く「」し「」ご「」と「』奥平大兼/出口夏希/佐野晶哉(Aぇ! group)/菊池日菜子/早瀬憩

REVIEW

  1. 映画『Mr.ノボカイン』ジャック・クエイド
  2. 映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン
  3. 映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム
  4. 映画『リライト』池田エライザ
  5. 映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李

PRESENT

  1. 映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人
  2. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  3. 中国ドラマ『墨雨雲間〜美しき復讐〜』オリジナルQUOカード
PAGE TOP