取材&インタビュー

日本映画界に希望をもたらす制作の仕組みを実現!『四十九-SEEK』浅野寛介さん(主演・プロデューサー)&シェイン・コスギ監督インタビュー

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映画『四十九-SEEK』映画祭受賞、浅野寛介、シェイン・コスギ監督

CGに頼らず生身の肉体で魅せる“本物のアクション”で、世界17ヵ国42の映画祭でセレクション入り、12ヵ国で82の賞を受賞した『四十九-SEEK』は、独自の“劇場公開前リクープ(投資回収)”エコシステムで作られました。本作のエコシステムとは「自主制作で1作目を完成させ、日本公開を最初から目指すのではなく、まず世界の映画祭へ直接エントリー。現地での上映やマーケットでシェイン監督自らがディール(交渉)を行い、配信権を販売する」というもの(映画公式資料)。今回は、このシステムについてのお話を中心に、主演でプロデューサーを兼務した浅野寛介さんと、監督・編集と海外交渉を担当したシェイン・コスギさんにお話をお伺いしました。

<PROFILE>
浅野寛介(あさの かんすけ):相沢京平 役/プロデューサー
1986年生まれ、愛知県出身。ジャッキー・チェンに憧れ、幼少期からアクション、中国武術(カンフー)を始め、中国武術では10代の頃に全日本大会、世界大会で優勝を果たす。2006年に俳優デビューし、『忍びの国』(2017)、『貴族探偵』(2017/CX)、『記憶』(2018/フジテレビ×J:COM)、『バラシファイト』(2023)や、洋画では『DEATH MARCH』(2025)等に出演。『四十九-SEEK』では長編映画初主演とプロデューサーを務める。

シェイン・コスギ:監督・編集/海外交渉
1976年5月25日生まれ、ロサンゼルス出身。父は、ハリウッドで忍者ブームを巻き起こした、ショー・コスギ。兄のケイン・コスギと共に幼少期からアメリカで多数の映画に出演。日本では人気テレビ番組『SASUKE』等で活躍するほか、『ラストサムライ』(2003年)にも出演。本作で長編映画監督デビューを飾る。

やっぱり海外は広いから、もっと大きな目標を掲げて挑戦したほうがいい

映画『四十九-SEEK』浅野寛介

マイソン:
資料を拝見したところ、コロナ禍に河原でWEB配信用の短編動画を撮り始めたのが本作のきっかけだったとありました。当時、短編を撮り始めた1番の動機は何だったのでしょうか?

浅野寛介さん:
シェインさんとは、コンスタントに「アクションを撮ろう」と話していたんです。コロナ禍で時間ができたところで、僕等にもいろいろ歯痒い想い、悔しい想いがあって、自分達に何ができるんだというところで、とりあえずできることをやってみようという流れになりました。

シェイン・コスギ監督:
付け加えると、周りの人達も映像を作ったりしているし、僕達も他の作品に関わったりしているけれど、日本の映画を作って日本で上映するというスケール感なんですよね。でも、僕達のなかでは「逆にそれでいいのか?」という話し合いがありました。やっぱり海外は広いから、もっと大きな目標を掲げて挑戦したほうがいいんじゃないかって。

映画『四十九-SEEK』メイキング
撮影現場の様子

マイソン:
シェイン監督はハリウッドで生まれて、ご家族も映画業界で活躍されています。ルーツがそもそも海外にあるというところでも、そういう発想に繋がったのでしょうか?

シェイン・コスギ監督:
そうですね。やっぱりそこが1番大きいというか、きっかけだと思います。日本の作品はなぜもっと海外で人気になれないのか、英語のアフレコが良いかどうかだったり、海外との文化の違い、配給の観点でも興行収入がなぜ増えないのかなど、いろいろと勉強や研究をしてきました。アクション監督の石井靖見さん(岩井曜 役も兼務)や他のキャストともそういう話をして、海外に手が届くようであれば、たぶん仕事の依頼も増えてくるし、もっといろいろな海外の作品で日本人が使われるようになるので、もっとチャンスがあるんじゃないかって。

マイソン:
お二人がアクションの分野に強くて、プラス“忍者”という日本が世界に誇る人気ジャンルという点が世界で戦う上ですごく活きたのかなと思ったんですけど、そもそも忍者にしようとなったのはどういう流れだったんでしょうか?

浅野寛介さん:
そういう意味でいえばマーケットを意識したかもしれないですね。海外に向けてだったら何が良いかという観点はすごくあったので。包み隠さずいえば、シェインさんのお父さん、ショー・コスギさんが海外で名を轟かせていらっしゃるのをはじめ、(監督はシェイン・コスギさん、兄のケイン・コスギさんも出演していて)コスギ家という名前があったのはもちろん大きいです。ただ、やっぱり海外に対して日本の強みってなんだろうって考えた時に、忍者というところは早くに決まったかなと思います。

映画『四十九-SEEK』

マイソン:
現在は技術が発展して、アクションの見せ方も増えました。アクションをずっとやっていらっしゃるお二人からすると今の環境の良い面と、逆にここは昔の方法を大事にしたいと思うところはありますか?

浅野寛介さん:
間違いなくあります。僕としては、アナログとデジタル、温故知新という裏テーマがありました。便利なほうに走りがちですが、本当に面倒くさいことのほうが大事っていう部分がアクションにもあります。あとは芝居ですね。生身で戦っている時の熱量が違います。今はカット割をして迫力を付けられるし、ワイヤーを使ったり、CGでテンポを早くしたりという工夫もすごくわかるし、良いところなんですけどね。改めて『四十九-SEEK』に関していうと、生身で僕らがどれだけ見せられるかというところに挑戦しています。1人でも「これ何だかすごくいいよね」って言ってもらえたら、昔の映画を観た時に「あれ?昔の映画もいいよね」って繋がっていく気がするんですよ。昔ながらのアクションができる人達って、足まで見せられるんです。そこがやっぱり他とは違うんです。でもおもしろいのが、シェインさんは新しいものが好きなので、何か魅力的なアングルだったり、新しい試みもしています。

シェイン・コスギ監督:
寛介が言ったように、僕もずっとそう思っています。映画、特にアクションは、20年か30年がワンサイクルだとよくいわれるんですよ。つまり、30年後にまた復活、流行するサイクルなので、実際に経験をしているアクションマンかあまり経験がないかは、仕草とか細かいところですぐバレるんです。だから、寛介や石井さんなどアクションを経験しているプロの人達なら、見せ場が結構わかりやすいかなと思います。

映画『四十九-SEEK』浅野寛介

マイソン:
技術でいろいろできるけど、結局表情のような細かいところでは、ごまかしきれないんですね。

シェイン・コスギ監督:
例えばジャッキー・チェン、ドニー・イェン、ジェット・リー、ブルース・リーなど、アクション界のトップの人達は、他の人と何が違うかっていうと、当然アクションだけど、目付きとか、姿勢とか、一つの動きでもすごくカリスマ性があるじゃないですか。やっぱりそういう経験をしていないと、なかなかあそこまで頭が回らないですよね。

マイソン:
確かにそうですね。ちょっと話が逸れるというか、アクションの専門家に以前からすごく聞きたかったことがありまして。ジャッキー・チェンさんの映画『パンダプラン』は、アクション俳優が本物の犯人と戦って本当に強いのかみたいなストーリーになっていて、他にも似たような映画がありました(例えば、『フォールガイ』)。アクションスターの方々が本当に格闘した時って、やっぱり強いんですかね(笑)?

浅野寛介さん:
強い人もいる可能性はありますが、アクション俳優がリアルなファイトでいけるかとなると、まあ難しいと思います。映画のアクションはやっぱり見せるものなので、一種の無駄を見せないと人には伝わらないところがあります。アクション俳優の方が持っているのは見せる技術です。僕は中国武術をやっていますけど、それもやっぱり表現なので、リアルファイトじゃないんですよ。僕は実際に痛いのは嫌いですし、本当に怪我に気をつけながらやっていて、負けず嫌いではあるけども、相手を潰したいっていう思いは基本ないです(笑)。

映画『四十九-SEEK』浅野寛介/ケイン・コスギ

マイソン:
元々プロだった方がアクション俳優に転向された場合、逆にアクションシーンって撮りにくいんですかね?慣れるまでが大変というか。

浅野寛介さん:
そうですね。何かに精通している方がアクションをやるというのはすごく近道ではあると思うんですけど、本当に当たっているのに痛そうに見えなかったりとか、逆効果な部分はありますね。

マイソン:
なるほど!

日本人は世界で挑戦できるのにやっていないだけ!?

映画『四十九-SEEK』完成報告会見、浅野寛介、ケイン・コスギ、シェイン・コスギ監督
完成報告会見より:左からケイン・コスギ、シェイン・コスギ監督、浅野寛介

マイソン:
改めてビジネスのお話をお聞きします。今回日本で配給をする前にリクープ(投資回収)が完了しているとお聞きしました。これはお二人がアクションという強みを持っていて、海外に精通してやり方をわかっていたから実現したという感じなのでしょうか?それとも、他の日本人映画製作者も真似できるところがあるのでしょうか?

浅野寛介さん:
僕の観点からお伝えすると、シェインさんという存在は大きいなと思いました。言葉もそうですし、アメリカ人としての交渉能力というか。ただ、別に大きく言うわけではなく、日本人も世界を視野に入れて勝負できると思っています。

シェイン・コスギ監督:
寛介が褒めてくれてるんだけど、結局日本人全般で元々強い商品とか、良い商品があれば世界に売りたいじゃないですか。日本は素晴らしい面がいっぱいあるのに、まだ世界で発信していないんですよね。一歩進んでいないだけかなと思うんですよ。

映画『四十九-SEEK』菜 葉 菜

マイソン:
シェイン監督からみて、日本人が世界で勝負をする時の1番のポイントは何だと思いますか?

シェイン・コスギ監督:
1番は言葉の壁とか、皆抵抗があるんじゃないですか。あとは、日本人は性格が控えめですよね。でも、外国へ行くと控えめでは通用しないし、はっきり言わないといけない。あとは駆け引きです。自分の譲れないポイントをしっかり持って、駆け引きができたらいいと思います。

マイソン:
どちらかというと内容とかよりも先に、日本人は世界で挑戦できるのにそもそもやっていないだけという感じなんですね。

シェイン・コスギ監督:
そうそう。これまでも偉大な人達は海外でも映画を売り込んだり、やっているところはやっているし、今は時代も時代でネットとか配信が増えているのに、「なぜできない?」って逆に聞きたいんですよね。

映画『四十九-SEEK』三浦誠己

マイソン:
やっぱりやる前にやれないって思い込んでいる方がいらっしゃるんですね。今お二人が感じている日本映画業界の1番の問題点は何だと思いますか?

浅野寛介さん:
いろいろあると思うなか、本当に個人的な見解で申し訳ないんですけど、やっぱりギャラ事情ですね。スタッフさん、キャストさん、もちろん配給宣伝さん、あとは取材を受ける方達もそうですけど、取っ払い(当日その場で現金でギャラが支払われる方法)でやることが常ですし、職人さん達も日当いくらなんですけど、やっぱり技術で測られている現場はない気がしています。そういうところで僕らはシステムとして還元できるように、皆の士気が上がるように今この作品で取り組んでいます。
もう1つは、日本映画界として固まっている気がして、日本人で固まっている作品でもいいんですけど、正直なところ、もっと合作があってもいいかなって思います。さらにいえば、日本にある題材で日本が作る際に、日本が主体となって、日本が主導で海外の人達を呼ぶくらいのことができたらいいですよね。

マイソン:
せっかく日本の題材で映画化するなら、日本人がもっと発言力を持てるといいですよね。

浅野寛介さん:
なので真田広之さんはすごいことをされているなと感じます。『SHOGUN 将軍』では、日本から日本のチームを読んで、海外の方達とやっていらっしゃるので。もっともっと映画がやれることでいったら、僕らも今自主制作ですぐにできることとして、海外の人を呼ぼうよとか、そういう目論見もシェインさんと話している最中です。

映画『四十九-SEEK』浅野寛介

マイソン:
今回は先に世界中の映画祭に出されたとおっしゃっていたんですけど、まずは作品を作らなければいけないというところで、最初はどうやって資金を工面したんですか?

浅野寛介さん:
どれだけ映画が売れても、スタッフやキャストに二次利用で入ってくることはあまりなく、末端のところには難しいかもしれないですけど、やっぱりそういうシステムがあれば、もっともっと撮影をする時に頑張れるんじゃないかということで、僕らはそうしたシステムを構築したいと思ったんですよね。それで会社を経営している方達に話をしたら、「じゃあ出すよ」と賛同していただけて。その方達もある意味で製作委員会として組めるようにホームページを作ってもらったりとか、いろいろ担っていただく形をとりつつお金を集めました。お金を集めて撮れるっていう段階まで持っていってから撮って、じゃあ映画祭に回していこうという、本当にそういう段取りでしたね。

マイソン:
じゃあ、取っ払いのお仕事で終わりではなく、制作に関わった方々やキャストの方々は映画が成功したら、後から少しずつでも収入が得られるというような契約もあったんですかね。

浅野寛介さん:
そうですね。まだメインの方だけですけどね。メインの方達には制作時のギャラは安いんだけど、これが売れた時に何パーセントはお渡しするからって話して、皆「わかった、やろう!」といって協力してくれました。

マイソン:
そっちのほうが夢がありますよね。

浅野寛介さん:
夢があるって感じていただけたらね。だから逆に売れなきゃいけないって、皆売ると思うんですよね。売れたら入ってくるから。そして、このシステムが基本賃金を下げる目的で使われないように、僕等はちゃんと表に出していこうというコンセプトでやっています。

映画『四十九-SEEK』メイキング、浅野寛介
メイキング

マイソン:
最後にこの映画で、映画業界に貢献できたらいいなと思っていらっしゃるところと、これからご覧になる皆さんに一言お願いします。

浅野寛介さん:
僕は1番に、このアクション映画でアクションを盛り上げたいと思っています。アクション業界にいる人達は、思っている以上に評価がされづらいと感じています。すごくレベルの高い、世界でも評価されている人でも、やっぱり賃金面に反映されていなかったりするので、僕は本当にアクションを盛り上げたいです。
観客の方達に向けては、捉え方は人それぞれですが、何でこんな風に作っているんだろうっていうのを観て感じて欲しいです。この作品って何かに似てるなとなったら、たぶん海外映画になると思うんですよ。「『ジョン・ウィック』みたいだ」とかそういうところを観客の人達に感じていただけると、シェイン監督が撮ったという意味がわかってもらえると思います。

シェイン・コスギ監督:
やっぱり先ほど寛介が言ったようにアクションを観て欲しいんですけど、映画自体は総合エンタテインメントですよね。だから1時間半で観てどういう感情が出るとか、好き嫌いもあるだろうけど、それがエンタテインメントだと思います。プラス、経営サイドで考えるとビジネスだから、これからの日本の映画だけじゃなく世界の映画、例えば大作でも費用を回収するのは結構大変になってきているんですよね。だから、映画が大好きで低予算で作って、それで回収できて利益が出たら、やっぱり夢があります。今だったら、『バックルームズ』とか『オブセッション 災愛』が大ヒットして、1億で作って450億以上の興行収入になっています。そういう意味でも、エンタテインメントで夢を皆に感じてもらえたらと思います。

マイソン:
とても夢のあるお話で本作のさらなる成功にも期待しています。本日はありがとうございました。

2026年7月28日取材 TEXT by Myson

映画『四十九-SEEK』浅野寛介/ケイン・コスギ

『四十九-SEEK』
2026年7月31日より全国順次公開
KeyHolder Pictures
監督・編集:シェイン・コスギ
出演:浅野寛介/三浦誠己/菜 葉 菜/弓削智久/小川未祐/吉田美佳子/上村侑/結城貴史/石井靖見/ケイン・コスギ

影の組織 “四十九(シーク)”のエージェント、相沢京平(浅野寛介)は、最愛の恋人が飛行機事故で彼の前から姿を消して以降、孤独な日々を送っていた。そんなある日、京平は四十九から任務を受け、爆薬新素材【RDXα】を手に入れた日本のヤクザ“高月組”へ侵入するが…。
公式サイト

©2026 映画「四十九-SEEK」製作委員会

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PRESENT

  1. 映画『さとこはいつも』有村架純/石田ひかり/姫野花春
  2. 映画『ヒンド・ラジャブの声』
  3. 映画『冴えないボクと映えるキミ』アビシャン・ジーヴィント/アナスワラ・ラージャン
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