REVIEW

ブルー・バイユー【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ブルー・バイユー』ジャスティン・チョン/アリシア・ヴィキャンデル

他の国で生まれ、幼い頃にアメリカに連れて来られて養子になった人々の中に突然国外追放される方がたくさんいらっしゃるという実態を本作を観て知りました。主人公のアントニオを演じるのは、監督も兼任するジャスティン・チョン。彼は数年前に読んだ記事に衝撃を受け、本作を作ったとのことです。エンドロールにもアントニオと同じような経験をされた方々がたくさん写真で映し出され、驚かされます。
アントニオは韓国生まれで3歳の時に養子としてアメリカに連れて来られます。彼はシングルマザーのキャシー(アリシア・ヴィキャンデル)と結婚し、彼女の娘ジェシー(シドニー・コウォルスケ)と3人で暮らしています。さらにキャシーは妊娠中でもうすぐ家族がもう1人増えようとしています。でも、3人の暮らしはとても貧しく、アントニオは禁断の手を使ってしまいます。
彼らに何が起きるのかは本編でご覧いただくとして、本作では人種の違い、移民、貧困、養子縁組に関わる問題が描かれています。アントニオはそのすべての問題を抱えていて、本人にいくらやる気があっても社会に受け入れてもらえないという厳しい現実が生々しく伝わってきます。だからどんどん負の連鎖が生じ、自分で自分を追い込んでしまう状況に必然的に陥っていくメカニズムがあるのだとわかります。そんな本作を観ていると、いかに社会が冷たいものであるかを目の当たりにし、本当にやるせない気持ちになります。また、彼らが抱えるさまざまな背景から人間関係がこじれていき、そこから強制送還の恐れが出てくる展開も見もので、思わぬところから生活が一瞬にして壊されてしまう怖さが身近に感じられます。
一方、本作ではジェシーとアントニオの血の繋がらない親子関係も印象的に描かれていて、2人のやり取りにすごく癒されると同時に、お互いの愛情が強いからこそ、アントニオが強制送還されそうになるとその辛さが倍に伝わってきます。全体的にはとても切ないストーリーですが、社会問題を知ることができると同時に、大きな愛を感じることができる作品です。年齢性別問わず観て欲しいと思います。

デート向き映画判定
映画『ブルー・バイユー』ジャスティン・チョン/アリシア・ヴィキャンデル

アントニオとキャシーの夫婦関係も物語の鍵となっています。自分達ならどうするか想像せずにはいられないと思うので、現在カップルの関係を左右しそうなシビアな問題を抱えている状態で観ると、何かしらの影響があるかもしれません。ただ、2人の奮闘に励まされる部分もあるので、苦難を一緒に乗り越えたいと思える関係なら一緒に観て、いろいろと話し合うきかっけにすると良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ブルー・バイユー』ジャスティン・チョン

大人向けの内容なので、小学生以下の方にはまだ難しい部分があるかもしれませんが、キャシーの娘ジェシーの目線で観られると思うので、興味があれば年齢問わず観てみてください。ティーンの皆さんは社会勉強として観るのも良いと思います。日本ではまだ養子縁組制度は浸透しておらず、本作で取り上げられているような現実は身近に感じられないかもしれませんが、親子とは何ぞやという大きなテーマも描かれているので、血の繋がりがあるかないかに関わらず親子関係で悩んでいる方がいたら、いろいろな関係があることを知るきっかけになるのではないでしょうか。

映画『ブルー・バイユー』ジャスティン・チョン/アリシア・ヴィキャンデル

『ブルー・バイユー』
2022年2月11日より全国公開
パルコ、ユニバーサル映画
公式サイト

©2021 Focus Features, LLC.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『夢の中』山﨑果倫/櫻井圭佑 夢の中【レビュー】

本作は、『蝸牛』でMOOSIC LAB 2019短編部門グランプリほか4冠を達成した都楳勝監督による最新作です。主人公のタエコ(山﨑果倫)の…

『ウォーレン・バフェット氏になる』ウォーレン・バフェット 本物かペテン師か【ビジネスの巨人】映画特集

儲け話というよりも人生訓として、良いお手本、悪いお手本の両方で、どのエピソードにも参考になる要素があります。

映画『無名』トニー・レオン 無名【レビュー】

第2次世界大戦下の1940年代上海で、中国共産党、国民党、日本軍のスパイが…

映画『FARANG/ファラン』ナシム・リエス 『FARANG/ファラン』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『FARANG/ファラン』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『ミセス・クルナス vs.ジョージ・W・ブッシュ』メルテム・カプタン ミセス・クルナス vs.ジョージ・W・ブッシュ【レビュー】

トルコ移民のラビエ(メルテム・カプタン)は、ある日、長男のムラートが旅先のパキスタンでタリバンの一員だと疑われて拘束されたことを知り…

映画『弟は僕のヒーロー』フランチェスコ・ゲギ フランチェスコ・ゲギ【プロフィールと出演作一覧】

2002年8月19日イタリア、ローマ生まれ。2022年、Netflix映画『僕らをつなぐもの』での演技が…

映画『異人たち』アンドリュー・スコット/ポール・メスカル 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2024年4月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2024年4月】のアクセスランキングを発表!

映画『アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~』アン・ハサウェイ/ニコラス・ガリツィン アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~【レビュー】

ロビン・リーによる人気小説「The Idea of You」を映画化した本作は、アイドルグループに属する24歳の青年ヘイズ・キャンベル(ニコラス・ガリツィン)と、一人娘がいる40歳のシングルマザー、ソレーヌ(アン・ハサウェイ)を…

映画『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』ワールドプレミア、セレステ・オコナー セレステ・オコナー【プロフィールと出演作一覧】

1998年12月2日ケニア生まれ。2019年、映画『セラとチーム・スペード』で俳優として…

映画『人間の境界』 人間の境界【レビュー】

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』で、ロシア政府が隠していた事実を暴いたアグニェシュカ・ホランド監督が、再び社会の事実を伝える作品を撮りました…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『MIRRORLIAR FILMS Season5』横浜流星 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内20代編】

今回は、国内で活躍する20代(1995年から2004年生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で70名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ティモシー・シャラメ 映画好きが選んだ2023洋画ベスト

正式部員の皆さんに2023年の洋画ベストを選んでいただきました。どの作品が2023年の洋画ベストに輝いたのでしょうか?

映画『テルマ&ルイーズ 4K』スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス あの名作をリメイクするとしたら、誰をキャスティングする?『テルマ&ルイーズ』

今回は『テルマ&ルイーズ』のリメイクを作るとしたら…ということで、テルマ役のジーナ・デイヴィスとルイーズ役のスーザン・サランドンをそれぞれ誰が演じるのが良いか、正式部員の皆さんに聞いてみました。

REVIEW

  1. 映画『夢の中』山﨑果倫/櫻井圭佑
  2. 映画『無名』トニー・レオン
  3. 映画『ミセス・クルナス vs.ジョージ・W・ブッシュ』メルテム・カプタン
  4. 映画『異人たち』アンドリュー・スコット/ポール・メスカル
  5. 映画『アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~』アン・ハサウェイ/ニコラス・ガリツィン

PRESENT

  1. 映画『FARANG/ファラン』ナシム・リエス
  2. 映画『猿の惑星/キングダム』オリジナルTシャツ
  3. 映画『九十歳。何がめでたい』草笛光子
PAGE TOP