取材&インタビュー

『夕方のおともだち』村上淳さん、菜葉菜さんインタビュー

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映画『夕方のおともだち』村上淳さん、菜葉菜さんインタビュー

SMクラブに足繁く通う男性と、彼の女王様を務める女性の心の交流を描いた物語『夕方のおともだち』で、主演を務めた村上淳さん、菜葉菜さんにインタビュー!インパクトの強いキャラクター設定から抱くイメージを良い意味で裏切る本作に、お2人はどんな心情で挑んでらっしゃったのかお聞きしました。

<PROFILE>
村上淳(むらかみ じゅん):ヨシオ 役
1973年7月23日生まれ。大阪府出身。モデル活動を経て、1993年に『ぷるぷる 天使的休日』で映画デビュー。その後、『ナビィの恋』『不貞の季節』『新・仁義なき戦い。』の3作品で、第22回ヨコハマ映画祭助演男優賞を受賞。その他の近年の主な出演作に、“新宿スワン”シリーズ、『グラスホッパー』『パンク侍、斬られて候』『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』『ある船頭の話』『初恋』『鳩の撃退法』『島守の塔』などがある。本作『夕方のおともだち』の廣木隆一監督とは、ストリートカルチャー誌のモデルだった村上淳が、TBS番組『素敵な恋をしてみたい』内のミニドラマ<スケートボード>をきっかけに出会った。以降30年近くもの間に、『不貞の季節』『ラマン』『PとJK』『ここは退屈迎えに来て』など10作以上の廣木監督作品に参加しており、本作では主演を飾る。また、本作が芸能生活30周年にあたる記念すべき作品となる。

菜葉菜(なはな):ミホ 役
2005年に映画『YUMENO』で主演を飾り、本格的に俳優デビュー。以降、『夢の中へ』『孤高のメス』『ヘヴンズ ストーリー』『百合子ダスヴイダーニヤ』『64-ロクヨン-』『後妻業の女』『ラストレシピ~麒麟の下の記憶~』などの話題作に出演。2012年、『どんづまり便器』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭最優秀主演女優賞を受賞。主演作『赤い雪』では第14回Los Angeles Japan Film Festival 最優秀俳優賞を受賞した。2022年は『夕方のおともだち』『ノイズ』『ホテルアイリス』と出演作が続々と公開される。


役者は芝居をすれば良い、映画が仕掛ければ良い

映画『夕方のおともだち』村上淳/菜葉菜

マイソン:
設定にインパクトがあるので観る前はどんな内容なのかなと思ったのですが、観てみるとすごく深いお話だと感じました。今回のオファーが来てから10年くらい経ったとお伺いしているのですが、オファーが来た時の印象と、長い年月を経て改めて撮り始めた時の心境に変化はありましたか?

村上淳さん:
10年前にオファーをいただいた時から途中紆余曲折がありましたけど、印象みたいなものは変わらずで、やっぱり10年経ったほうが良かったんだなと。今を撮ったほうが人として演者として熟成された2人がそこに立ったなというのは強く思いました。これが若い勢いとかエッジな部分だけでいってしまうと、それはそれかもしれませんが、こういう印象にはならなかったのかなと思っています。

菜葉菜さん:
私は念願の廣木組でこの作品をという想いがあって、ずっとやりたいと思ってようやく叶いました。この作品の前に他の廣木監督の作品にもちょこちょこ呼んでいただいたのですが、がっつり主役でというのはこの作品が初めてでした。念願だったからこそすごく気負いみたいなものも一瞬生まれましたが、インする前に監督と話してミホを掘り下げていくなかで、「菜葉菜のことを知っているし、廣木組のスタッフだし、相手は村上淳さんだし、その中でできるという喜びを素直に持って気負わずに何をやってくれても良いから。必ず菜葉菜を魅力的に撮るから、絶対大丈夫だから」って言ってくださいました。それで良い意味で肩の力が抜けました。とはいえ、現場に入ったら厳しい演出がたくさんくるので(笑)、その都度大丈夫かなって緊張したり、悩みながらではあったんですけど、信頼して臨みました。村上淳さんも、私が映画俳優としてやっていきたいと思った時からずっと観てきた方だし、村上さんと廣木さんの関係性も知っているし、私も他の作品で村上さんにはよくしていただいた間柄なので、そういう意味では思い切り飛び込んで良いよという状況を皆さんが作ってくださって、すごく幸せな現場でした。

映画『夕方のおともだち』村上淳さんインタビュー

村上淳さん:
まず映画って女優が魅力的に映らないとっていうのが僕は念頭にあるんです。僕は女優が輝けば良いというすごくシンプルな考え方なので、そのためにどうすれば良いのかっていう風に周りが動けば良いんじゃないかと思っています。

マイソン:
たしかに女優さんが綺麗に映っている作品は印象深いですよね。今回菜葉菜さんが演じたミホは女王様だったり1人の女性だったりというところで、スイッチを替えたり難しい面はありませんでしたか?

菜葉菜さん:
スイッチを入れ替えたという感覚はあまりないんです。もちろん役者としてはSをやっている時のほうが楽しくできていて、本当に普通の日常会話だったりする芝居のほうが全然何百倍も難しくて、ダメ出しもその分ありました。

村上淳さん:
廣木さんは特にそうでしたね。日常の何てことのないことを絶対に逃さないので。

菜葉菜さん:
仕草から何から。

村上淳さん:
そうはならないだろって。

映画『夕方のおともだち』菜葉菜さんインタビュー

菜葉菜さん:
そうですよね。結構そういう感じだったので、そんなにスイッチを替えたつもりはなくて、たぶん流れを作ってくださったんでしょうね。1人のミホがやっているから。

村上淳さん:
そういう風に見えているってことは、やっぱり撮影の鍋島淳裕さんとか監督がそういう風に撮ってくれたんだなって。ちょっとしたアングルとか光の加減とかルックで変わってくるので。役者は芝居をすれば良い、映画が仕掛ければ良いと思っていて、それが僕の理想です。ちょっと話がズレますが、僕が20代の時に佐藤浩市さんが「それはこっちのやることじゃねーよ」ってスタッフさんに言ったことがあるんです。つまりそれは俳優部がやることじゃないってことなんですよ。当時僕は何のことかわからなかったのですが、最近わかるようになりました。結局映画がそういう風に仕掛ければ、役者がそれ以上やってしまうとバランスが崩れてしまうよってことなんです。廣木監督の作品とかいわゆる良い作品って、役者が演じ分けているつもりがそこまでなかったとしてもそう見えていたということは、映画がそういう風に仕掛けてくれているっていうことだから、それがやっぱり良い映画のある種の定義なんじゃないかなと思います。

マイソン:
村上さんは廣木監督作品にたくさん出演されていますが、さきほどおっしゃっていた「女優さんが綺麗に」というところにも共通した目線を感じます。

映画『夕方のおともだち』村上淳/菜葉菜

村上淳さん:
綺麗に撮ろうというその先なのか手前なのか、僕はまだそこは曖昧なままでいいやって思っているんですけど、共通しているのは、冷酷さは非情に強いということ。追い込むとか、追い込まれたとかっていうことを多々聞くでしょうし、ある現場だとある主演女優が廣木さんのことを初号を観るまで「大嫌いだ」って言ってたのに、初号を観て「この人に一生ついていこうと思った」って言うくらい、現場では本当に嫌われ役に徹する時もあるんです。でも、それは菜葉菜ちゃんなら菜葉菜ちゃんがいかに魅力的に映るために「もうちょっとここをこうしないと」「菜葉菜ここを忘れているよ」っていう演出が多かったと思います。

菜葉菜さん:
そうでした。

村上淳さん:
「だってヨシオが愛しいでしょ、なら自然にこうなるじゃん」っていう演出が多かった気がします。それで結果菜葉菜ちゃんが演じる役が魅力的に映る、菜葉菜ちゃん自身が魅力的に映っている、そういう結果を作る上で廣木隆一は天下一品です。

マイソン:
俳優さんが自然にそうなるようにガイドをしてくれているっていう感じなんですね。

村上淳さん:
だから廣木さんに追い込まれると、ちょっと女優としての殻が剥けるみたいなマジックがたぶんそこにあって、追い込まれる分新しい一面が引き出されるみたいな部分があると思います。

映画『夕方のおともだち』村上淳/菜葉菜

マイソン:
なるほど〜。そういう目線で俳優さんをいろいろな作品で見比べるとおもしろいかもしれないですね。あと、撮影技術的なところで、SMプレイで痛くならないように撮るって難しくないですか?最初の釘のシーンは「うわ〜!」って思ったのですが…。

村上淳さん:
僕がアメリカ仕込みのエンターテイナーだったら「ワオ!痛かったぜ!」って言うと思うんですけど(笑)…。

一同:
ハハハハハ!

村上淳さん:
実際はウレタンを使っているので痛みはないんですよ。

マイソン:
本当にやるわけはないから、何か道具を使っているのかなとは思ったのですが(笑)。鞭で叩くシーンとかはどうなんでしょうか?

映画『夕方のおともだち』村上淳さん、菜葉菜さんインタビュー

菜葉菜さん:
私は思い切り叩いていますけど、鞭もいろいろな種類があって痛くないもので叩いていました。

村上淳さん:
全然痛くないんですよ。ただ初見の人はこのインタビューを読んで、僕が「もうとんでもなく痛かったぜ!」って言うほうが「これは痛いんだ〜」って思うじゃないですか。だから僕はエンタテインメントになりきれていないんですよ(笑)。

マイソン:
ハハハハ(笑)。でも、裏側の本当のところを知りたいので正直に教えていただいたほうが有り難いです。衣装が変わるのは、気分的にも影響がありますよね?

村上淳さん:
衣装でいうと僕はもっと服を着ているはずだったんですよ。

映画『夕方のおともだち』村上淳/菜葉菜

マイソン:
そうだったんですか!?結構裸でしたよね(笑)。

菜葉菜さん:
結構ずっとでしたよね。

村上淳さん:
「淳、ここ裸」って言われて、「はい」って(笑)。「ほぼ裸やん」って思いました。衣装合わせでは、柄のパンツは絶対に履こうって言っていたんですよ。でも現場に入ったら、「ここも全部脱いで」「はい」って。

一同:
ハハハハハ!

村上淳さん:
その辺は阿吽の呼吸でしたよ。

菜葉菜さん:
廣木さんと村上さんの関係性ですね。

マイソン:
では演じているうちに、より一層キャラクターのことが理解できたというか、最初と撮り終えた後でこれがわかったみたいなことはありますか?

映画『夕方のおともだち』村上淳/菜葉菜

村上淳さん:
僕はまずヨシオの素朴さ、SMがどうこうというよりもある種の一途さにすごくシンパシーを感じました。そこは撮り終えた時点ではわからなかったんですけど、初号を観た時に「なるほどと。女王様に謝りに行くシーンだけ僕はミスリードしていて、監督から「そうじゃないんだ。意味が違う」って言われて、「そっちの意味ですか?」って。ボリュームを上げていくとある種の愚直さとか誠実さになってくるんですけど、そういうものがスクリーンに映った時の僕の好みな感じ、実人生でもそういう人のほうが好きなので。もちろん卑しさとか汚さとかもあってそれも込みですけど、ある種の愚直さみたいなものが初号を観た後のほうが思っていたより出ていたなと思いました。
たまたまなのかもしれませんが、言霊というか、自分が本当に求めていない仕事は来ていないんですよね。すごくわかりやすくいうと、23歳の時に虹郎くんが生まれて、虹郎くんの寝顔を見ながら僕は「レイプ、血、死、ピストル、ナイフ、殺人がある映画には出ません」って思って、事務所に言ったんですよ。そしたら『ナビィの恋』のお話がきて、何てピースな映画なんだって(笑)。それを撮り終えた後に、「次はピストルが撃ちたいですね」って言ったら、『金融腐蝕列島 呪縛』のワンシーンが来て、撃ってみたら気持ち良いなって(笑)。だから、僕はありがたいことに実人生とシンクロしていることが結構あるんです。菜葉菜さんはどうですか?鞭を2、3本買い取っていたよね?

菜葉菜さん:
買い取っていません(笑)!おもしろいなとは思いましたけど、女王様と慕ってくれる人がいないので(笑)。なりますか?

村上淳さん:
僕で良ければ(笑)。木曜日さえ外してくれれば!

映画『夕方のおともだち』菜葉菜さんインタビュー

菜葉菜さん:
具体的(笑)!でも私も村上さんと同じで初号を観てわかった気がしました。やっている時はミホが掴みづらかったというのはあります。それで完成したものを観た時に「監督はこういうことをおっしゃっていたんだ。そうだ、ミホってこういう人だよな」って。自分が演じるミホだから自分もどこかで自分の感情に擦り合わせようとするんだけど、わからない部分があるというのが正直なところでした。でも、完成したものを観た時にこういうものだったんだなっていうのがすごくわかった感じがしました。納得せずにやっていたわけではないのですが、迷ったり考えたりは毎日していたので、そういう意味では自分で答えを作ってやっていたわけではなかったから不安はありましたが、完成した時にこういうことだったんだって思いました。

村上淳さん:
それが廣木組の醍醐味なのかもしれないですよね。廣木さんはその場で俳優にあまり答えを掴ませないので。それって俳優のエゴとか手応えに繋がっちゃうでしょ。そうすると次のシーンでちょっと俳優自体が出てくるので、そうさせないのが上手いですよね。

菜葉菜さん:
そうだったかもしれない。

マイソン:
最後まで観てミホの母性がすごいなって思いました。

映画『夕方のおともだち』菜葉菜

村上淳さん:
すごく良いこと言った!それは菜葉菜ちゃんが持っているものを廣木さんがスクリーンに映したんですよ。全くもっていないものは映らないので。僕もそれは感じたのですが、それは菜葉菜ちゃんが元々持っているもので、その元々持っているものを現場で出すのって恥ずかしいんですよ。すごく抵抗があるんです。自分がないもののボリュームを上げるのは良いのですが、自分がそもそもそういう人間だっていうのが裸にされるわけだから、それが映ったということは廣木さんの勝ちなんですよ。

菜葉菜さん:
わ〜!確かに!こういう役自体やってこなかったから、余計にこっぱずかしいっていうのがありました。何かを抱えていて重くてとんがっていてという役が多かったので、こういう女性は本当に初めてでした。村上さん然りですが、それは本当に周りの方達に引き出していただいたなと思います。

村上淳さん:
僕は全然。

映画『夕方のおともだち』村上淳/菜葉菜

菜葉菜さん:
女性が皆言っていましたが、ヨシオが愛おしく見えてきますよね。村上さんが演じるヨシオだからこそ守ってあげたくなるというか、母性本能をくすぐられるなと思いました。

村上淳さん:
それが最初の10年前から動いていない部分なんですよ。僕はやっぱり菜葉菜さんや廣木監督に感謝するし、自分にもまあまあ大事な部分を崩さずに8年も10年も腐らずある種健全さを守りながらキープしたなと思います。そのバランスが崩れてくるとキャスティングがまた変わってくるので、そこは廣木さんの見る目の強さです。

マイソン:
本当にすごいですね。では最後に一言だけお願いしたいのですが、いち観客として、大きな影響を受けた映画や、映画にまつわる人物がいらっしゃったら教えてください。

映画『夕方のおともだち』村上淳さん、菜葉菜さんインタビュー

村上淳さん:
僕はジャッキー・チェンです。初めての映画体験がジャッキー・チェンだったので。

マイソン:
ジャッキーは本当にすごいですよね。ジャッキーを挙げる方は結構多くて、やっぱり魅力的なんだなと思います。菜葉菜さんはどうですか?

菜葉菜さん:
私は『スタンド・バイ・ミー』ですね。小さい時に観て、ああいう子どものひと夏の…。

村上淳さん:
パイを吐くところとか、忘れないよね!

映画『夕方のおともだち』村上淳さん、菜葉菜さんインタビュー

菜葉菜さん:
そうそう!今でもこうやって笑って話せる映画で、子どもの時に観てドキドキワクワクしたんですよ。

村上淳さん:
線路を歩くシーンとか良いよね。

菜葉菜さん:
そうなんですよ。映画って大人の世界で非日常の世界だって思っていたものが、『スタンド・バイ・ミー』を観たらすごく身近なものに感じて、初めての感覚でした。

マイソン:
『スタンド・バイ・ミー』もほんとに素敵な映画ですよね。今日はありがとうございました!

2022年1月13日取材 PHOTO&TEXT by Myson

映画『夕方のおともだち』

『夕方のおともだち』
2022年2月4日より全国順次公開
R-18+
監督:廣木隆一
出演:村上淳/菜葉菜/好井まさお/鮎川桃果/大西信満/宮崎吐夢/田口トモロヲ/Azumi(Wyolica)/烏丸せつこ
配給:彩プロ

寝たきりの母と2人暮らしのヨシダヨシオは、SMクラブの常連だが、最近プレイに身が入らない。ヨシオはそんな悩みを女王様を務めるミホに打ち明け…。

公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

© 2021「夕方のおともだち」製作委員会

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