REVIEW

アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』ロムニック・サルメンタ/イライジャ・カンラス

REVIEW

怖い!巧い!物語の舞台はレストランの一席、ほぼ2人の登場人物で展開される会話劇で、ここまでスリリングな作品に仕立て上げるとはお見事です。ストーリーが展開するにつれて、『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』というタイトルの多面性も浮かび上がってきて、脚本、演出、俳優の演技の巧さにシビれます。会話劇が大好物な方は特に、絶対に損をしない1作です。

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』ロムニック・サルメンタ

最初に登場するのは、エリック(ロムニック・サルメンタ)です。エリックが待ち合わせの場所であるレストランへ入ると、先に1人の青年が座っています。彼の名前はランス(イライジャ・カンラス)。2人の会話が始まると、徐々に2人の関係が見えてきて、思わぬ展開へ向かっていきます。

映画公式サイトには、2人が何者かはもちろん、2人の関係やあらすじも書かれてはいるものの、私はいつも通り前情報を入れずに観ました。レストラン内で彼等の隣の席で盗み聞きしているような臨場感を味わいたいなら、ぜひ皆さんも極力前情報を入れずに観てください。

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』イライジャ・カンラス

代わりに本作の背景だけご紹介しておくと、ジュン・ロブレス・ラナ監督は制作の背景を以下のように語っています。本作の鬼気迫るムードは下記のような背景に帰している部分もありそうです。

これまでは、映画を作るときはいつも観客のことを考えるようにしていましたが、今回は違いました。 私の唯一の目的は、単に自分自身を救うことだったのです。色々なことがあり、当時の私は自殺寸前までひどく落ち込んでいました。でも誰に助けを求めることも恥ずかしくて出来なかった。そんな私が選んだのは、いつでも自分に安らぎを与えてくれるもの、つまり書くことだったのです。
子供の頃に何度も性的虐待を受けたことを含め、私の人生の大半を窒息させた多くのトラウマを思い出し、認めながら、3日間休みなく書き続けました。
フィクションであり、告白でもあるこの映画によって、私は自分の悪魔を追い出し、暗い過去と折り合いをつけ、自分の物語を完全にコントロールすることができたのです。
(タリン・ブラックナイト映画祭でのインタビューより/映画公式資料)

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』

本作は、「ワンシチュエーション・ノンストップ会話劇」(映画公式サイト)と称されているように、2人の男性が会話をしている様子のみで観客を魅了します。ジュン・ロブレス・ラナ監督は劇作家でもあるので、舞台演劇の手腕も発揮されていると感じます。そして、ワンシチュエーションでありながら、“場面を動かす”ユニークな手法がとられていて、この演出は俳優2人の手腕がなければ成立しません。ぜひ、ロムニック・サルメンタ、イライジャ・カンラスの名演もご堪能ください。特に、イライジャ・カンラスが演じるランスの様々な表情にはゾッとさせられますよ。

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』ロムニック・サルメンタ

時代の潮流や、世代間の価値観の違いを象徴するストーリーには、強烈な生々しさがあり、キャラクターの内面が深掘りされるにつれ、スリルが増していきます。最後は人間を狂気に導く絶望感の威力の強さ、救おうとする人間側の無力さを痛感します。鑑賞後の充実感も半端ありません。ぜひこのスリルを味わってください。

デート向き映画判定

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』ロムニック・サルメンタ/イライジャ・カンラス

恋愛もキーポイントとなるストーリーなので、デートで観ると各々で心中がざわざわするかもしれません。ただ、途中までは恋愛に関する話題に注意が向いたとしても、クライマックスは予想外の別の側面で怖さが一気に増してきます。そういう意味では、自分達の関係とは距離を置いて楽しめるでしょうし、観終わった後の会話も弾みそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』イライジャ・カンラス

皆さんは年齢の近いランスに感情移入しながら観ることになりそうですが、最終的にどんな感想になるのか予想がつきません。大人からすると、今どきの若者らしい面が見えるものの、同じ若者目線ではどう感じるのか、ぜひ皆さんの感想を聞いてみたいです。ただ会話をしているだけなのに、約90分の間に関係性が激変するので、普段の人間関係構築の参考にも観てみてください。

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』ロムニック・サルメンタ/イライジャ・カンラス

『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』
2026年1月17日より全国順次公開
サムワンズガーデン
公式サイト

© The IDEAfirst Company, Octobertrain Films, Quantum Films

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』織田裕二 踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!【レビュー】

『踊る大捜査線』は1997年に連続ドラマとして放送が開始され、「これまでに公開された映画シリーズ8作品の累計動員数は3863万人、累計興行収入は524.1億円.。映画第2弾『踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)は、興行収入173.5億円を記録」した…

映画『私たちは、ちょうどいい。』バービー・フェレイラ/ジョン・レグイザモ 私たちは、ちょうどいい。【レビュー】

普段極力前情報を入れずに観るので、本作の背景も知りませんでした。だから、とてもイイ話だなとウルウルしてたら、最後に…

映画『ナイトボーン -夜哭-』セイディ・ハーラ セイディ・ハーラ【ギャラリー/出演作一覧】

1984年1月1日生まれ。フィンランド・キルッコヌンミ出身。

映画『さとこはいつも』有村架純/石田ひかり/姫野花春 さとこはいつも【レビュー】

沖田修一監督作特有の甘塩っぱい世界観がたまらない1作…

映画『ブルーロック』高橋文哉 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2026年8月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2026年8月】のアクセスランキングを発表!

映画『ワンオペレーション』ローズ・バーン ワンオペレーション【レビュー】

観ているだけで、主人公リンダ(ローズ・バーン)の半端ない疲労感が生々しく伝わってくる作品です…

映画『白鳥とコウモリ』風吹ジュン 風吹ジュン【ギャラリー/出演作一覧】

1952年5月12日生まれ。富山県出身。

映画『八つ墓村』尾上松也 八つ墓村【レビュー】

シリーズ累計発行部数5500万部を超える、横溝正史のベストセラー「八つ墓村」は…

映画『顔 -かお-』シン・ヒョンビン ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】あの映画がおもしろいと思う本当の理由『ドラマなふたり』『顔 -かお-』『ナイトボーン -夜哭-』など

今回取り上げた映画は、『5秒で完全犯罪を生成する方法』『ドラマなふたり』『オークストリートの異変』『顔 -かお-』『ナイトボーン -夜哭-』です。

映画『ヒンド・ラジャブの声』 ヒンド・ラジャブの声【レビュー】

2024年1月29日、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区ラマッラーにある人道支援組織「赤新月社」の緊急通報センターでは、スタッフ達が6歳の少女ヒンド・ラジャブを救出するために力を尽くしました…

【映画でSEL】にたどりつくまでの道

今のあなたに必要な非認知能力を伸ばす【映画でSEL】プログラムのご案内

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ボヘミアン・ラプソディ』ラミ・マレック 映画好きが選んだ実在アーティストの伝記映画ランキング

今回は実在アーティストの伝記映画について、正式部員の皆さんに投票してもらいました。さまざまな有名アーティストにまつわる作品がある中で上位にランクインしたのはどの作品でしょうか?

映画『ズートピア2』 映画好きが選んだ2025アニメ映画ベスト

今回は、2025年に劇場公開されたアニメ映画について、正式部員の皆さんによる投票結果ベスト30を発表!2025年のアニメ映画ベストに輝いたのは?

映画『国宝』吉沢亮 映画好きが選んだ2025邦画ベスト

今回は、正式部員の皆さんに投票していただいた2025年邦画ベストの結果を発表!2025年の邦画ベストで上位にランクインしたのはどの作品でしょう?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集!
  2. 映画『四月の余白』一ノ瀬ワタル/上阪隼人
  3. 【映画学ゼミ第9回】「作品との心理的距離感に影響を与え得る情動知能」参加者募集!

REVIEW

  1. 映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』織田裕二
  2. 映画『私たちは、ちょうどいい。』バービー・フェレイラ/ジョン・レグイザモ
  3. 映画『さとこはいつも』有村架純/石田ひかり/姫野花春
  4. 映画『ブルーロック』高橋文哉
  5. 映画『ワンオペレーション』ローズ・バーン

PRESENT

  1. ドラマ『幸せカナコの殺し屋生活2』のん/藤ヶ谷太輔
  2. 実写映画『ルックバック』出口夏希/蒔田彩珠
  3. 映画『私たちは、ちょうどいい。』バービー・フェレイラ/ジョン・レグイザモ
PAGE TOP