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はちどり

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映画『はちどり』パク・ジフ

中学2年生のウニが過ごす日常をただ淡々と描いているように見えて、その日々の小さな出来事の中にドラマがたくさん詰まっていて、ウニが傷付きながら成長していっているのがわかります。ウニはまだあどけなさがありおとなしそうに見えますが、どちらかというとませている女子で、不良っぽいところもあります。でも中身はまだまだ子どもで、兄や姉、両親や周囲の大人を見る視線には、時に好奇心と恐れが混在しています。ウニの目線を通して世界を観ると、「大人ってこういう風に見えるんだ」と気付かされ、普段当たり前にやっていることが違った風に見えてきます。恋をしたり、友達とやんちゃをやったり、両親以外の大人と1対1で接したり、大きくなっていくと、傷付くことも増えていきますが、ウニがいろいろな体験を通して、傷付くことに免疫を付けていく姿に共感を覚えます。ウニと同世代の人が感情移入しやすいのはもちろん、大人でも「自分にもこういう時期があったな」と、当時の感情や感覚がリアルに呼び覚まされて、誰もがこんな風に成長していくんだなと思えるので、普段のイヤなことも前向きに捉えられる元気をもらえます。そして、ウニを見事に演じたパク・ジフの演技力と佇まいにもご注目ください。

デート向き映画判定
映画『はちどり』パク・ジフ

ウニはおませな女子なので、恋愛遅咲きの大人が観ると「え!中学2年生で、こんな感じ?」とビックリする人もいるかも知れませんが、背伸びをしつつも初々しさがあるので、高校生以上のカップルが観るなら、そこまで気まずいことはないように思います。ただ中学生カップルが観ると、ぎこちない感じになるかも知れません。でも、恋愛だけを描いているわけではないので、1人の少女の成長物語として観るならば、誰でも共感できると思います。正直見た目の派手さや起伏はそれほどなく、心情を丁寧に描く静かな作品なので、普段派手なアクション映画ばかり観ている人を誘うには不向きだと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『はちどり』パク・ジフ

ティーンの皆さんは等身大で観るか、高校生以上ならほんの少し前に自分も体験したような感覚で感情移入しやすいと思います。中学生になると、自分が接する世界が一気に広がって、自我にも目覚めてくるので、心の動きが激しくなるのも、ウニの姿で客観視できます。親以外の大人と接することも増えてきますが、子どもの事情と大人の事情の違いにも気付いてくるでしょう。本作を観ることで、ウニの日常を通してそんな事柄をシミュレーション、疑似体験できるので、まだ人と接することに慣れていない人や、知らない場所にや環境に飛び込むのに躊躇している人は、本作で心の準備をするのはどうでしょうか。

映画『はちどり』パク・ジフ

『はちどり』
2020年6月20日より全国順次公開
PG-12
アニモプロデュース
公式サイト

© 2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

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