REVIEW

キングダム エクソダス<脱出>【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『キングダム エクソダス<脱出>』ボディル・ヨルゲンセン

辛辣でいて愉快!ギョエッとさせられるシーンもありながら、どこかお茶目でユーモアがある世界観が独特です。物語は、夢遊病者のカレン(ボディル・ヨルゲンセン)が、不思議な夢の中で助けを求める声に誘われ、“キングダム”といわれる大病院で邪悪な存在と戦うというもの。カレンは“キングダム”で仲間を得て、見えざる敵を探しながら、世界を救おうと奔走します。一方、“キングダム”では医師や看護師達が送る奇妙な日常が描かれており、徐々に彼等とカレンの物語が交わっていきます。
本作は本国デンマークで放送されたドラマ5話を繋げて、日本では5時間強の映画として劇場公開されます。シリーズは1990年代に作られ、3部作となることは決まっていたものの、前2作から20年以上空けて、ようやく完結編となる本作が作られました。私は残念ながら前2作をまだ観ておらず(2023年7月初旬現在、配信等はされていません)、完結編となる本作から観ました。ラース・フォン・トリアー監督作品なので、理解が難解な描写があって当然とは思いつつ、もしかしたら前2作を観ていると意味や意図がわかるのかもしれないと思える部分もあります。本作だけでも楽しめますが、完全制覇したい方は今回同時公開される1作目と2作目も合わせて観ると良いでしょう(計15時間を覚悟で!)。
そして、本作では多様性やジェンダーなど、現代社会で話題になっているテーマに切り込んでいます。ラース・フォン・トリアー監督作をご存じの方ならお察しの通り、中には物議を醸すであろう表現もあります。でも、内心同じ疑問を感じていながら誰も声に出していない現実を、観る者に突きつけているともいえます。毎話の最後にラース・フォン・トリアー監督自身がコメントしており、物議を醸すであろうことがわかっていて本作を制作している点にも触れています。エンドロールはラース・フォン・トリアー監督のお茶目さが出ているのでお見逃しなく。
最後まで観て、「あの人達は何だったの?」「あの人は結局どうなった?」と、若干ほったらかしの部分があるのもご愛嬌(笑)。そんなこんなもひっくるめて不条理が描かれているおもしろさがあります。ベースはホラーだとしても、単純に描写がコミカルでツッコミどころのあるシーンも満載です!「善も悪もあることを心得よ」の決め台詞も念頭に置きながら観ると、「まさしく!」と思えます。私達人間にさまざまな問いを投げかけてくれる作品なので、どっぷり思考の時間を楽しんでください。

デート向き映画判定
映画『キングダム エクソダス<脱出>』ボディル・ヨルゲンセン/ニコラス・ブロ/ツヴァ・ノヴォトニー

デートの時間がほぼ本作鑑賞で埋まってしまうので、2人ともよっぽどラース・フォン・トリアー監督のファンでないと上映時間319分は正直辛いと思います(苦笑)。当然ながら、かなりクセのある作品なので、もちろん初デートや、相手の映画の好みがわからないうちは誘うには不向きです。ただし、映画を観て語るのが好きなベテランカップルなら、たまにはこういう特異な作品で映画デートをしてみても良いかもしれないですね。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『キングダム エクソダス<脱出>』

319分は大人でも結構ハードルが高いでしょう。ただし、ラース・フォン・トリアー監督作品がとても好きなら観てみたくなる作品です。ラース・フォン・トリアー監督作品は強烈な作品が多いので好き嫌いは分かれるものの、ハマる方はハマると思います。とはいえ大半の作品は、若い皆さんには刺激が強く、R指定も多いです。大学生くらいなら興味があれば、他のラース・フォン・トリアー監督作品を観てみて、本作に挑むかどうか決めると良いでしょう。

映画『キングダム エクソダス<脱出>』ボディル・ヨルゲンセン

『キングダム エクソダス<脱出>』
2023年7月28日より全国公開
シンカ
公式サイト

『キングダム Ⅰ』をU-NEXTで観る 『キングダム Ⅱ』をU-NEXTで観る 『キングダム エクソダス<脱出>』をU-NEXTで観る

© 2022 VIAPLAY GROUP, DR & ZENTROPA ENTERTAINMENTS2 APS

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ 心理学から観る映画56:映画鑑賞におけるソマティック・マーカー(身体反応)の影響

今回は、トーキョー女子映画部正式部員の方からいただいたお悩み相談に関する話題を提供します。

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』早瀬憩 早瀬憩【ギャラリー/出演作一覧】

2007年6月6日生まれ。千葉県出身。

映画『木の上の軍隊』堤真一/山田裕貴 木の上の軍隊【レビュー】

原作はこまつ座で上演された同名の戯曲で、井上ひさしが遺した原案を基に、井上の娘でこまつ座社長の井上麻矢が遺志を継ぎ…

海外ドラマ『9-1-1 LA救命最前線 シーズン8』ピーター・クラウス ピーター・クラウス【ギャラリー/出演作一覧】

1965年8月12日生まれ。アメリカ出身。

映画『星つなぎのエリオ』 星つなぎのエリオ【レビュー】

主人公は、幼くして両親を失い、叔母のオルガのもとで暮らすことになった少年エリオ…

映画『タンゴの後で』アナマリア・ヴァルトロメイ/マット・ディロン 『タンゴの後で』トークイベント付試写会 15組30名様ご招待

映画『タンゴの後で』トークイベント付試写会 15組30名様ご招待

映画『MELT メルト』ローザ・マーチャント MELT メルト【レビュー】

いろいろな意味で残酷。絶対起きてはならない出来事…

映画『怪物』黒川想矢 黒川想矢【ギャラリー/出演作一覧】

2009年12月5日生まれ。埼玉県生まれ。

映画『スタントマン 武替道』トン・ワイ/テレンス・ラウ/フィリップ・ン スタントマン 武替道【レビュー】

香港映画に対する誇りと、香港映画や映画作りに関わる人達を守りたい気持ちが交錯する…

映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 2名様プレゼント

映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ 2名様プレゼント

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ
  2. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド
  3. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也

REVIEW

  1. 映画『木の上の軍隊』堤真一/山田裕貴
  2. 映画『星つなぎのエリオ』
  3. 映画『MELT メルト』ローザ・マーチャント
  4. 映画『スタントマン 武替道』トン・ワイ/テレンス・ラウ/フィリップ・ン
  5. 映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー

PRESENT

  1. 映画『タンゴの後で』アナマリア・ヴァルトロメイ/マット・ディロン
  2. 映画『スーパーマン』オリジナルトートバッグ
  3. 映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊
PAGE TOP