REVIEW

トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』ジョージ・マッケイ

本作を観ると、何が善で何が悪なのかを考えさせられます。真っ当に生きようとしても生きられない環境下で、家族思いのネッドはだんだんと犯罪者の道へと進んでいきます。でも、彼が1人の人間として母やきょうだい、恋人と向き合う姿を観ていると、少年の頃に彼の中にあったピュアな部分はずっとなくなっていません。彼はカリスマ性がありながらも脆さがあって、だからこそ必死で強くなろうともがく姿を観ると親近感が湧いてきます。周囲にいる弱くてずるい大人達を見てきたネッドは彼なりに立派な大人になろうとしたのでしょう。そして、彼は生きるために闘っていただけであるように見えます。その姿は現代の格差社会にも通じていて、私達の身の回りにもこういった状況があってもおかしくないリアルさを感じます。
本作ではネッドを始め、ドレスを着た男性達が武器を手に警官達に立ち向かう場面もあり、一見ネッド達はクレイジーな集団として映りますが、彼等の一見不可解な行動には、ある意図と主張があるという描写も印象的で、世の中には見た目だけでわからないことがたくさんあると改めて感じます。
そして、本作にはジョージ・マッケイ、ニコラス・ホルト、ラッセル・クロウ、チャーリー・ハナム、トーマシン・マッケンジーといった名優達が揃っているのも見どころ。ジョージ・マッケイは愛と怒りを同時に抱えたネッドの複雑な心情を見事に表現していて、ニコラス・ホルト、チャーリー・ハナム、ラッセル・クロウはそれぞれタイプの違う毒性のあるキャラクターを好演しています。ネッド・ケリーについては、ヒース・レジャー主演の『ケリー・ザ・ギャング』やミック・ジャガー主演の『太陽の果てに青春を』などもあるので、比較してみるのもおもしろそうです。

デート向き映画判定
映画『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』ジョージ・マッケイ

ロマンチックなムードにしてくれるタイプの作品とはいえず、少々過激なシーンもあるので、デートで観るよりはこういうジャンルの映画が好きな友達を誘って観るほうが気楽に楽しめるでしょう。2人とも興味があればデートで観るのもアリですが、露骨に映らないまでも性的な表現がちらほらあるので、初デートには向いていないと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』ジョージ・マッケイ

ネッドの少年時代から描かれていて、子どもからすると大人の世界はどう見えるのかという点で皆さんもネッドに共感できる部分があると思います。ただ、PG-12ということもありますが、残酷な描写も出てくるので、中学生くらいになってから観るほうが良いと思います。19世紀のオーストラリア、イギリスがどんな関係にあったのか調べてみるとちょっと社会科の勉強にもなりそうです。

映画『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』ジョージ・マッケイ

『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』
2021年6月18日より全国順次公開
PG-12
アット エンタテインメント
公式サイト

© PUNK SPIRIT HOLDINGS PTY LTD, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, ASIA FILM INVESTMENT GROUP LTD AND SCREEN AUSTRALIA 2019

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『九龍ジェネリックロマンス』吉岡里帆/水上恒司 九龍ジェネリックロマンス【レビュー】

“ジェネリックロマンス”という要素から何を期待するのか、そして本作で描かれる“ジェネリックロマンス”をどう受け取るのかは…

映画『ユニバーサル・ランゲージ』 ユニバーサル・ランゲージ【レビュー】

本作の舞台は、ペルシャ語とフランス語を公用語とする架空の世界のカナダ・ウィニペグで…

映画『ヒックとドラゴン』ニコ・パーカー ニコ・パーカー【ギャラリー/出演作一覧】

2004年12月9日生まれ。イギリス出身。

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合 『てっぺんの向こうにあなたがいる』完成披露試写会 15組30名様ご招待

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』完成披露試写会 15組30名様ご招待

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ パルテノペ ナポリの宝石【レビュー】

イタリアの巨匠パオロ・ソレンティーノ監督が初めて女性を主人公にして撮った本作の物語は、1950年にパルテノペが生まれるところから…

映画『8番出口』二宮和也 8番出口【レビュー】

観始めてスゴい設定だと驚き、何から何まで巧く作られていて…

映画『ムガリッツ』 『ムガリッツ』トークイベント付き特別先行試写会 5組10名様ご招待

映画『ムガリッツ』トークイベント付き特別先行試写会 5組10名様ご招待

映画『太陽がいっぱい』アラン・ドロン アラン・ドロン【ギャラリー/出演作一覧】

1935年11月8日生まれ。フランス出身。

映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』チョ・ジョンソク/イ・ソンギュン 大統領暗殺裁判 16日間の真実【レビュー】

1979年10月26日、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が暗殺されました。本作は、その暗殺事件に関わったメンバーのうち、軍人だったために唯一軍法裁判にかけられたパク・テジュ(イ・ソンギュン)と…

映画『Pacific Mother パシフィック・マザー』 『Pacific Mother パシフィック・マザー』一般向けオンライン試写会 10名様ご招待

映画『Pacific Mother パシフィック・マザー』一般向けオンライン試写会 10名様ご招待

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  2. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ
  3. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド

REVIEW

  1. 映画『九龍ジェネリックロマンス』吉岡里帆/水上恒司
  2. 映画『ユニバーサル・ランゲージ』
  3. 映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ
  4. 映画『8番出口』二宮和也
  5. 映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』チョ・ジョンソク/イ・ソンギュン

PRESENT

  1. 映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合
  2. 映画『ムガリッツ』
  3. 映画『Pacific Mother パシフィック・マザー』
PAGE TOP